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何も無い
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目を覚ますと誰かの手が僕の手を包み込んでいることに気がついて横へと視線を向けた。
ベッドの縁に頭を乗せて目を閉じているフェリクス様が居て、驚いて目を見開く。
確かにフェリクス様に会いたいって思っていた。温かい何かに包まれている感覚も覚えている。けれど、実際に彼が目の前に居ると分かると、これは僕の創り出した幻影じゃないかって思ってしまうんだ。
けれど、固く繋がれた手が彼が本物のフェリクス様だって教えてくれている気がする。
「……フェリクス、さま?」
「……ん、ルダ?!目を覚ましたんだねっ、よかった……」
フェリクス様は頬を緩めて安堵の息を吐き出すと僕のことを壊れ物に触れるみたいに抱きしめてきた。
フェリクス様の香りと温もりを直に感じて、かーっと顔を赤くする。
「……フェリクス様……どうして」
「ルダのことが心配で公爵家へ会いに行ったんだよ」
「僕っ……僕……フェリクス様にすごく会いたくてっ……フェリクス様、助けてくれてありがとうございます……」
本来ならアルステッド公爵家の問題に王太子であるフェリクス様が介入することはない。
だけど、フェリクス様は僕を公爵家から救い出してくれた。立場とか公爵家との関係とか、政治的な面で不都合も起きるかもしれないのに、そんなこと全部無視して僕を助けてくれたんだ。
フェリクス様は何時だって僕を助けてくれる。
僕の心の支えになってくれる。
その優しさに依存してしまいそうになるから、本当なら彼と距離を置くべきだと分かっているのに、つい甘えてしまうんだ。
「フェリクス様はいつも僕を助けてくれますね……。貴方は僕の救世主です……」
「……それは違うよ」
涙を流しながらお礼を伝えると、僕の言葉を聞いたフェリクス様が苦しそうに眉を寄せて僕の言葉を否定した。
そのことに物凄く動揺してしまう。
「……な、何が違うんですか……?」
フェリクス様はなにか理由があって僕を助けてくれたってこと?なにか裏があるの?僕を助けてくれた訳じゃないってこと?
ぐるぐると色々と考えてしまう。
そうしたらフェリクス様は僕の頬に手を当てて、私には君を助けられる力が無いんだって悲しげに笑ったんだ。
「そんなことっ……」
現にこうしてフェリクス様は僕のことを助けてくれたじゃないか。
それなのにどうしてそんなに辛そうな顔で僕のことを見るの?
「パーティーの時、ルダがテラスから落ちてしまったと聞いて心臓が止まるかと思った。もし、あの時近くにダリウスがいなければ今頃君はここに居ないかもしれない。私は人を癒すことは出来ても守る力は無いんだ……私から回復魔法を取ったら何も残らないから」
「そんなことないです……だって……」
僕の目をフェリクス様が治してくれたから、僕は魔法を使えるようになって、あの暗い部屋の中で挫けずにいられたんだよ。
そのことを伝えたいのに、上手く言葉に出来なくて口を何度も開いては閉じてを繰り返す。
「今回のことだってもっと早く手を差し伸べてあげることが出来ていたらって考えてしまうんだ。私はルダのことを守ってあげたいと思っている。けれど、弟の様に魔法を自在に扱うことも出来ないし、容姿が優れているわけでも無い。特別要領がいいという訳でもない。だから、私は君をいつだって守ってあげられるほど優れているわけでも無ければ、ましてや救世主なんて言われる様な大層な人間じゃないんだよ」
震える口先から、フェリクス様が思いを吐露してくれる。その言葉1つすら聞き逃さないように真っ直ぐに彼を見つめながら、僕はまた間違ったんだって後悔したんだ。
分かってたはずだ。
フェリクス様は神様じゃない。
僕と同じ心のある人間で、決して万能な訳では無いことを。そして、誰よりも心が綺麗で優しいんだってことも……。
だから、僕から離れようと身体を動かしたフェリクス様のことを力一杯抱き締め返していた。
僕の気持ちが伝わればいいって思いながら。
ベッドの縁に頭を乗せて目を閉じているフェリクス様が居て、驚いて目を見開く。
確かにフェリクス様に会いたいって思っていた。温かい何かに包まれている感覚も覚えている。けれど、実際に彼が目の前に居ると分かると、これは僕の創り出した幻影じゃないかって思ってしまうんだ。
けれど、固く繋がれた手が彼が本物のフェリクス様だって教えてくれている気がする。
「……フェリクス、さま?」
「……ん、ルダ?!目を覚ましたんだねっ、よかった……」
フェリクス様は頬を緩めて安堵の息を吐き出すと僕のことを壊れ物に触れるみたいに抱きしめてきた。
フェリクス様の香りと温もりを直に感じて、かーっと顔を赤くする。
「……フェリクス様……どうして」
「ルダのことが心配で公爵家へ会いに行ったんだよ」
「僕っ……僕……フェリクス様にすごく会いたくてっ……フェリクス様、助けてくれてありがとうございます……」
本来ならアルステッド公爵家の問題に王太子であるフェリクス様が介入することはない。
だけど、フェリクス様は僕を公爵家から救い出してくれた。立場とか公爵家との関係とか、政治的な面で不都合も起きるかもしれないのに、そんなこと全部無視して僕を助けてくれたんだ。
フェリクス様は何時だって僕を助けてくれる。
僕の心の支えになってくれる。
その優しさに依存してしまいそうになるから、本当なら彼と距離を置くべきだと分かっているのに、つい甘えてしまうんだ。
「フェリクス様はいつも僕を助けてくれますね……。貴方は僕の救世主です……」
「……それは違うよ」
涙を流しながらお礼を伝えると、僕の言葉を聞いたフェリクス様が苦しそうに眉を寄せて僕の言葉を否定した。
そのことに物凄く動揺してしまう。
「……な、何が違うんですか……?」
フェリクス様はなにか理由があって僕を助けてくれたってこと?なにか裏があるの?僕を助けてくれた訳じゃないってこと?
ぐるぐると色々と考えてしまう。
そうしたらフェリクス様は僕の頬に手を当てて、私には君を助けられる力が無いんだって悲しげに笑ったんだ。
「そんなことっ……」
現にこうしてフェリクス様は僕のことを助けてくれたじゃないか。
それなのにどうしてそんなに辛そうな顔で僕のことを見るの?
「パーティーの時、ルダがテラスから落ちてしまったと聞いて心臓が止まるかと思った。もし、あの時近くにダリウスがいなければ今頃君はここに居ないかもしれない。私は人を癒すことは出来ても守る力は無いんだ……私から回復魔法を取ったら何も残らないから」
「そんなことないです……だって……」
僕の目をフェリクス様が治してくれたから、僕は魔法を使えるようになって、あの暗い部屋の中で挫けずにいられたんだよ。
そのことを伝えたいのに、上手く言葉に出来なくて口を何度も開いては閉じてを繰り返す。
「今回のことだってもっと早く手を差し伸べてあげることが出来ていたらって考えてしまうんだ。私はルダのことを守ってあげたいと思っている。けれど、弟の様に魔法を自在に扱うことも出来ないし、容姿が優れているわけでも無い。特別要領がいいという訳でもない。だから、私は君をいつだって守ってあげられるほど優れているわけでも無ければ、ましてや救世主なんて言われる様な大層な人間じゃないんだよ」
震える口先から、フェリクス様が思いを吐露してくれる。その言葉1つすら聞き逃さないように真っ直ぐに彼を見つめながら、僕はまた間違ったんだって後悔したんだ。
分かってたはずだ。
フェリクス様は神様じゃない。
僕と同じ心のある人間で、決して万能な訳では無いことを。そして、誰よりも心が綺麗で優しいんだってことも……。
だから、僕から離れようと身体を動かしたフェリクス様のことを力一杯抱き締め返していた。
僕の気持ちが伝わればいいって思いながら。
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