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夜の宝石
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お茶会から帰ってきて廊下を進んでいると、たまたまお父様と鉢合わせて足を止めた。
仮面で火傷は隠しているけれど、お父様は僕に気がつくと見たくないものを見たみたいに眉を寄せて僕から顔を逸らした。
その事に胸が痛むけれど、お父様に嫌われていることは分かっているから仕方ない。
本当に久しぶりに顔を合わせた彼は早く僕の前から立ち去りたい様に見える。
「……お久しぶりです」
僕の挨拶にお父様は返事を返してくれない。変わりにというかのように更に顔を顰めて、意を決したように僕の方に顔を向けた。
「コーラルに言われてフェリクス王太子様のお茶会に参加したとか」
「……はい」
「そうか。だが、勘違いしてはならない。今はコーラルの気持ちを組んで代わりにお前にフェリクス王太子様の相手をさせているが、コーラルがその気になればすぐにお前は用済みだ」
「……っ……分かっています」
久しぶりに顔を合わせた息子にそんなことを言うんだって悲しくなった。
昔は目に入れても痛くない程に可愛いと愛してくれていたはずなのに、顔に傷が出来ただけでこんなにも人は変わってしまうものなの?
でも、お父様の言うことは分かる。
僕はただラルの代わりをしているだけだ。
いつかラルがフェリクス様に会いに行くと言ってしまったら、僕はそれを止められないし、またあの部屋で1人誰にも会わずに過ごすことになるんだと思う。
それに、フェリクス様が誰を婚約者に選んだとしても、僕だけはきっと選ばれない。僕は醜い顔をした男だから。
「それから、お前にそのような格好は似合わない。早くいつも通りの服に着替えて、それは捨ててしまえ」
「……はい……」
確かに醜い僕にはこんなに豪華で素敵な衣装は似合わないのかもしれない。
歩く度に揺れるフリルも、光り輝くブローチも、頭を飾る髪飾りも全部僕は触れてはいけないものなのかもしれない。
僕が触れればその光は穢れてしまう。
「お父様、何をしてらっしゃるの?」
泣きそうになって俯いているとお父様の後ろからコーラルがやってきて話しかけてきた。
艶やかな黒髪をなびかせて、当然のようにお父様の隣に立った彼女は泣きそうになっている僕を見て目を細めた。眉間には皺が寄っている。
「お父様、エスメラルダと何の話をしていたの?」
「なんでもないんだよ。自分の立場を弁えるように伝えただけだから」
「……ふーん。ねえ、お父様、エスメラルダにかまっていないでお母様の所に行ってあげたら?モートン伯爵夫人からお茶会に誘われたけれど何を贈るか迷っているみたいなの」
「ああ、それは大変だ。私は行くけれどあまり使用人を困らせないようにね」
「もう!子供ではないのよ」
ラルの頭を優しい顔をして撫でたお父様はお母様に会いにサンルームへと向かってしまった。
その後ろ姿を見つめながら、2人の仲睦まじい姿が脳裏にこびりついて行く。
羨ましいと思うなんて今更じゃないか。
分かっていたはずだ。
僕は醜い。僕には顔以外に価値なんて無かった。
その価値が失われてしまった今、家族にとって僕は道端の石ころと大差は無い。
仮面で火傷は隠しているけれど、お父様は僕に気がつくと見たくないものを見たみたいに眉を寄せて僕から顔を逸らした。
その事に胸が痛むけれど、お父様に嫌われていることは分かっているから仕方ない。
本当に久しぶりに顔を合わせた彼は早く僕の前から立ち去りたい様に見える。
「……お久しぶりです」
僕の挨拶にお父様は返事を返してくれない。変わりにというかのように更に顔を顰めて、意を決したように僕の方に顔を向けた。
「コーラルに言われてフェリクス王太子様のお茶会に参加したとか」
「……はい」
「そうか。だが、勘違いしてはならない。今はコーラルの気持ちを組んで代わりにお前にフェリクス王太子様の相手をさせているが、コーラルがその気になればすぐにお前は用済みだ」
「……っ……分かっています」
久しぶりに顔を合わせた息子にそんなことを言うんだって悲しくなった。
昔は目に入れても痛くない程に可愛いと愛してくれていたはずなのに、顔に傷が出来ただけでこんなにも人は変わってしまうものなの?
でも、お父様の言うことは分かる。
僕はただラルの代わりをしているだけだ。
いつかラルがフェリクス様に会いに行くと言ってしまったら、僕はそれを止められないし、またあの部屋で1人誰にも会わずに過ごすことになるんだと思う。
それに、フェリクス様が誰を婚約者に選んだとしても、僕だけはきっと選ばれない。僕は醜い顔をした男だから。
「それから、お前にそのような格好は似合わない。早くいつも通りの服に着替えて、それは捨ててしまえ」
「……はい……」
確かに醜い僕にはこんなに豪華で素敵な衣装は似合わないのかもしれない。
歩く度に揺れるフリルも、光り輝くブローチも、頭を飾る髪飾りも全部僕は触れてはいけないものなのかもしれない。
僕が触れればその光は穢れてしまう。
「お父様、何をしてらっしゃるの?」
泣きそうになって俯いているとお父様の後ろからコーラルがやってきて話しかけてきた。
艶やかな黒髪をなびかせて、当然のようにお父様の隣に立った彼女は泣きそうになっている僕を見て目を細めた。眉間には皺が寄っている。
「お父様、エスメラルダと何の話をしていたの?」
「なんでもないんだよ。自分の立場を弁えるように伝えただけだから」
「……ふーん。ねえ、お父様、エスメラルダにかまっていないでお母様の所に行ってあげたら?モートン伯爵夫人からお茶会に誘われたけれど何を贈るか迷っているみたいなの」
「ああ、それは大変だ。私は行くけれどあまり使用人を困らせないようにね」
「もう!子供ではないのよ」
ラルの頭を優しい顔をして撫でたお父様はお母様に会いにサンルームへと向かってしまった。
その後ろ姿を見つめながら、2人の仲睦まじい姿が脳裏にこびりついて行く。
羨ましいと思うなんて今更じゃないか。
分かっていたはずだ。
僕は醜い。僕には顔以外に価値なんて無かった。
その価値が失われてしまった今、家族にとって僕は道端の石ころと大差は無い。
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