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幸せのお裾分け
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僕がぶつかってしまったその人は僕から視線を逸らすと、フェリクス様へと声をかけた。
「フェリクス様、客が来ています」
「……そうか。報告ありがとう。ルダ、もう少し話していたかったのだけれど予定が入ってしまったんだ」
僕がフェリクス様の前から逃げ出そうとしたことには一切触れずに、彼は本当に申し訳なさそうに眉を寄せて僕に謝ってきた。
それになんと返していいか分からなくなる。
彼はどうして怒らないんだろう。
どうしていつもいつも僕に何も聞いてこないんだ。
「……分かりました。本日はありがとうございました」
来た時には出来なかったカーテシーをして僕は彼に再び背を向けた。
そんな僕の背中に向かって、フェリクス様が入口まで送るよって言ってくれたけれど、彼の顔を見ないまま大丈夫ですって素っ気なく答えてしまった。
そんな自分が心底嫌になる。
どうして僕はこんなにひねくれてるんだろう。
フェリクス様の優しい言葉一つ一つを受け取ることをとても嬉しく感じるのに、僕はこうやって自分で彼を突っぱねて壁を作る。
「それならダリウスに送らせるよ。それくらい許してくれないかな。彼は私の近衛騎士だからルダの怖がることはしないと思う」
悲しそうな声で提案されて、チラリと隣にいる黒髪の男の人のことを見た。多分この人がダリウスさんだと思う。
波打つ黒髪を後ろで束ねた、浅黒い肌の大男といった風貌の彼を僕は何処かで見たことがある気がした。
けれど思い出せない。
「……よろしくお願いします」
返事の代わりに、どちらに言うでもなく呟くと、ダリウスさんが頷いてくれた。
「直ぐにお迎えにあがりますのでこちらでお待ちください」
「うん。ルダのこと任せたよ」
「承知しました」
ニコニコと微笑んでいるフェリクス様とは対照的に一切表情を崩さず硬い顔をしている彼を横目で盗み見た。
やっぱり知っている気がする。
「行きましょう」
彼を観察していたら、彼の青い瞳と目が合って慌てて視線を下へと向けた。そうして、歩き出した彼の1歩後ろを大人しくついて行く。
「フェリクス様が此処に人を呼ぶなど珍しいですね」
彼から話しかけられて、何とか返せばいいのか悩んでしまう。
「……そうなんですね」
結局無難な相槌しか打てずに、会話は終了してしまい僕たちの間には沈黙が流れていた。
しばらくそのまま歩いて、入口に着くと彼が何故か立ち止まって僕の方に体を向けてきたから、僕も立ち止まって背の高い彼の顔を見上げる。
「どうかしましたか?」
「……失礼ですが、その仮面の下はなにかお怪我でも?」
彼の青い瞳が僕の顔の右側に注がれていて慌てて俯いて、見ないでくださいって小さく悲鳴のような声を返してしまう。
そうしたら、ダリウスさんは数秒沈黙した後に、失礼なことを言ってしまいすみませんと謝ってくれた。
「フェリクス様、客が来ています」
「……そうか。報告ありがとう。ルダ、もう少し話していたかったのだけれど予定が入ってしまったんだ」
僕がフェリクス様の前から逃げ出そうとしたことには一切触れずに、彼は本当に申し訳なさそうに眉を寄せて僕に謝ってきた。
それになんと返していいか分からなくなる。
彼はどうして怒らないんだろう。
どうしていつもいつも僕に何も聞いてこないんだ。
「……分かりました。本日はありがとうございました」
来た時には出来なかったカーテシーをして僕は彼に再び背を向けた。
そんな僕の背中に向かって、フェリクス様が入口まで送るよって言ってくれたけれど、彼の顔を見ないまま大丈夫ですって素っ気なく答えてしまった。
そんな自分が心底嫌になる。
どうして僕はこんなにひねくれてるんだろう。
フェリクス様の優しい言葉一つ一つを受け取ることをとても嬉しく感じるのに、僕はこうやって自分で彼を突っぱねて壁を作る。
「それならダリウスに送らせるよ。それくらい許してくれないかな。彼は私の近衛騎士だからルダの怖がることはしないと思う」
悲しそうな声で提案されて、チラリと隣にいる黒髪の男の人のことを見た。多分この人がダリウスさんだと思う。
波打つ黒髪を後ろで束ねた、浅黒い肌の大男といった風貌の彼を僕は何処かで見たことがある気がした。
けれど思い出せない。
「……よろしくお願いします」
返事の代わりに、どちらに言うでもなく呟くと、ダリウスさんが頷いてくれた。
「直ぐにお迎えにあがりますのでこちらでお待ちください」
「うん。ルダのこと任せたよ」
「承知しました」
ニコニコと微笑んでいるフェリクス様とは対照的に一切表情を崩さず硬い顔をしている彼を横目で盗み見た。
やっぱり知っている気がする。
「行きましょう」
彼を観察していたら、彼の青い瞳と目が合って慌てて視線を下へと向けた。そうして、歩き出した彼の1歩後ろを大人しくついて行く。
「フェリクス様が此処に人を呼ぶなど珍しいですね」
彼から話しかけられて、何とか返せばいいのか悩んでしまう。
「……そうなんですね」
結局無難な相槌しか打てずに、会話は終了してしまい僕たちの間には沈黙が流れていた。
しばらくそのまま歩いて、入口に着くと彼が何故か立ち止まって僕の方に体を向けてきたから、僕も立ち止まって背の高い彼の顔を見上げる。
「どうかしましたか?」
「……失礼ですが、その仮面の下はなにかお怪我でも?」
彼の青い瞳が僕の顔の右側に注がれていて慌てて俯いて、見ないでくださいって小さく悲鳴のような声を返してしまう。
そうしたら、ダリウスさんは数秒沈黙した後に、失礼なことを言ってしまいすみませんと謝ってくれた。
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