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癒しの王太子
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顔を見られたことに動揺して何か言わないとって口を開け閉めするけれど、上手く言葉は出てこなくていっそう焦る。
そうしたら彼も立ち上がって、それから僕に無理に話さなくていいと言ってくれた。
彼の表情には僕のことを嫌悪する感じは見受けられなくて、それが逆に何を考えているのか分からなくさせてくる。
今まで出会った人は顔を顰めて明らかに嫌そうな顔を向けて来ていたから彼の微笑みを浮かべた顔を見ると逆に怖くなった。
「……気持ち悪くないんですか……」
だから思わずそう尋ねていた。
ずっとこの傷は僕にとって足枷で呪いだ。
見た目で判断される世の中で、この大きく醜い傷は僕の人生を暗くはしても照らしてくれることは無いって分かってる。
「痛かっただろうな、とは思います」
「……」
彼の返事に僕は眉をしかめた。
そんなこと初めて言われたから。
だって、気持ち悪いとは言われても、誰も僕の痛みに寄り添ってくれる人は居なかったから。
この傷を受けた時、死んだ方がマシだと思うくらいの苦痛を味わった。何ヶ月もじくじくとした痛みが引かず、医者には生きるか死ぬかの境目だと言われた。お父様とお母様は毎日僕を見ては泣いていて、ラナは僕に近づかなくなった。怪我よりも家族からのその反応に1番傷つけられたんだ。
それでも、僕は生き残った。
傷を顔に残し、死んだ方がマシだと思いながらもこうして図太く生きている。
「治してあげましょうか?」
「え……?」
突然何を言い出すんだ。
フェリクス王太子様の言葉を聞いて彼へと疑問の表情を向けると、彼はゆっくりと僕の方に近づいてきた。
まるで野良猫を怖がらせないように静かに近づく時みたいに、彼は音もなくゆっくりゆっくりと微笑みを浮かべながら僕に近づいてくる。
その柔らかく優しげな顔に見つめられると、途端に警戒心が解けそうになって、彼の顔を見つめていたらいつの間にか僕たちの距離はほとんど無くなってしまっていた。
そうして、彼に手を取られて驚く。
「先程怪我をしてしまったようですね」
彼がそう言って僕の手をそっと撫でた。
それと同時に淡い光が手元で弾けて、その瞬間に擦りむいていた手の甲の傷が消えてしまっていた。
「……回復魔法……」
初めて見るその魔法に驚いて目を見開く。
回復魔法は使える人がとても少ない希少な魔法だ。平民でさえ回復魔法を使うことが出来れば簡単に貴族位を貰うことが出来ると言われるくらいこの国では重宝されている。
その力はまさに癒しの力。
万病を治し、傷を瞬く間に治す。人によって能力は違う様だけど、とにかく凄い魔法なことに変わりはない。
「見ての通り私は回復魔法の使い手です。ですから貴方のその顔の傷も治してさしあげることが出来ます」
そう言って彼が僕の顔に触れようとしてきたから1歩後ろへと下がった。
人に顔を触られることに抵抗があるし、再びこの痣を見られることが嫌だった。
それに……
「治さなくていいです」
「……どうして?」
「この傷は僕にとっての戒めだから」
馬鹿だった自分にあの時の過ちを忘れさせないための大事なものだから、無くなれって思うことはあるけれど実際に消したいとは思わない。
そんな僕の返答が意外だったのか彼は驚いた顔をした後に、少し悩んでからそれなら目が見える様にするくらいはさせてくれと言ってきた。
そうしたら彼も立ち上がって、それから僕に無理に話さなくていいと言ってくれた。
彼の表情には僕のことを嫌悪する感じは見受けられなくて、それが逆に何を考えているのか分からなくさせてくる。
今まで出会った人は顔を顰めて明らかに嫌そうな顔を向けて来ていたから彼の微笑みを浮かべた顔を見ると逆に怖くなった。
「……気持ち悪くないんですか……」
だから思わずそう尋ねていた。
ずっとこの傷は僕にとって足枷で呪いだ。
見た目で判断される世の中で、この大きく醜い傷は僕の人生を暗くはしても照らしてくれることは無いって分かってる。
「痛かっただろうな、とは思います」
「……」
彼の返事に僕は眉をしかめた。
そんなこと初めて言われたから。
だって、気持ち悪いとは言われても、誰も僕の痛みに寄り添ってくれる人は居なかったから。
この傷を受けた時、死んだ方がマシだと思うくらいの苦痛を味わった。何ヶ月もじくじくとした痛みが引かず、医者には生きるか死ぬかの境目だと言われた。お父様とお母様は毎日僕を見ては泣いていて、ラナは僕に近づかなくなった。怪我よりも家族からのその反応に1番傷つけられたんだ。
それでも、僕は生き残った。
傷を顔に残し、死んだ方がマシだと思いながらもこうして図太く生きている。
「治してあげましょうか?」
「え……?」
突然何を言い出すんだ。
フェリクス王太子様の言葉を聞いて彼へと疑問の表情を向けると、彼はゆっくりと僕の方に近づいてきた。
まるで野良猫を怖がらせないように静かに近づく時みたいに、彼は音もなくゆっくりゆっくりと微笑みを浮かべながら僕に近づいてくる。
その柔らかく優しげな顔に見つめられると、途端に警戒心が解けそうになって、彼の顔を見つめていたらいつの間にか僕たちの距離はほとんど無くなってしまっていた。
そうして、彼に手を取られて驚く。
「先程怪我をしてしまったようですね」
彼がそう言って僕の手をそっと撫でた。
それと同時に淡い光が手元で弾けて、その瞬間に擦りむいていた手の甲の傷が消えてしまっていた。
「……回復魔法……」
初めて見るその魔法に驚いて目を見開く。
回復魔法は使える人がとても少ない希少な魔法だ。平民でさえ回復魔法を使うことが出来れば簡単に貴族位を貰うことが出来ると言われるくらいこの国では重宝されている。
その力はまさに癒しの力。
万病を治し、傷を瞬く間に治す。人によって能力は違う様だけど、とにかく凄い魔法なことに変わりはない。
「見ての通り私は回復魔法の使い手です。ですから貴方のその顔の傷も治してさしあげることが出来ます」
そう言って彼が僕の顔に触れようとしてきたから1歩後ろへと下がった。
人に顔を触られることに抵抗があるし、再びこの痣を見られることが嫌だった。
それに……
「治さなくていいです」
「……どうして?」
「この傷は僕にとっての戒めだから」
馬鹿だった自分にあの時の過ちを忘れさせないための大事なものだから、無くなれって思うことはあるけれど実際に消したいとは思わない。
そんな僕の返答が意外だったのか彼は驚いた顔をした後に、少し悩んでからそれなら目が見える様にするくらいはさせてくれと言ってきた。
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