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理由

理由②

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 朝昼晩、レオニードは片時も俺から離れることは無い。それを息苦しいと思い始めている自分がいることには気がついていたし、レオニードが何かに酷く怯えていることにも気がついていた。
 でも、どうするのが正解なのかが分からない。俺がレオニードにしてやれることも、この息苦しさを取り除く方法も何も分からない。
 書類仕事をしているレオニードを盗み見ながら、レオニードが何を考えているのか知りたいと思った。

「なあ、ずっと俺と一緒に居るけど大丈夫なのか?」
「問題ない」
「……でもさ、流石に外とか出た方が……」
「マテオ」

 俺の言葉を遮るようにレオニードが微かに声を荒らげて俺の名前を呼んできたことで、喋るのを止める。手に持っていた書類をテーブルに置いたレオニードが真っ直ぐに俺の方を見つめてきた。

「どうしてそんなに私から離れたがるんだ」
「離れたいんじゃなくて、外にもたまには出たいってだけだよ」
「それでまた誰かに連れ去られたらどうする?」
「大丈夫だよ!だって、ここは公爵家の敷地内で警備だっているし、メイドのターニャさんだって付いてきてくれる」
「それでも外に出ることは許さない」

 頑ななレオニードを思わず睨みつけて、訳わかんないって思わず零した。それを聞いたレオニードの眉間にシワが寄る。

「レオニードのしてることは俺の自由を奪って自分の好きなように操ろうとしてるのと同じだ」
「そんな風に思っていたのか?」

 レオニードがゆっくりと俺の方へと近づいてきた。その動きを見つめながら、こんなこと言いたいわけじゃないのにって思う。だけど、出てくる言葉は止まらない。

「俺は縛られるのはごめんだっ!自由にのんびり暮らしたいし、そんな風に愛されても全然嬉しくなんてない!!」
「……つまり私から離れたいということか?」
「だからっ!!離れるとか離れないとかじゃないんだよ!!!レオニードは何も分かってない!!」

 お前は俺のことなんてなんにも見てないじゃないか。どれだけレオニードの気持ちに寄り添おうとしても、闇の中を進んでるみたいに何も見えてこない。掴もうとしてもすり抜けていくお前の気持ちをどうやって分かれって言うんだよ。

「俺はっ……俺はこんなの嫌だ……」

 涙が溢れてきて、ゴシゴシと袖で拭った。正孝の前世の記憶を持つレオニードと再開して、確かに嬉しいと思ったし幸運だと思った。だけど、当の本人が俺のことなんて眼中に無いんだ。

「お前は俺のことなんてこれっぽっちも見てくれないじゃないか」

 無理矢理口元に笑みを浮かべて、涙を流しながらそう言ってやる。前世、寂しさから上手く笑えなくなっていた俺は、それでも正孝と付き合えているだけで幸せだって無理に笑おうとしていた。
 そんな癖は今も変わらなくて、辛いのに無理に笑顔を作って平気なフリをする。

「私はちゃんと満人のことを見ている。どうして分かってくれないんだ」
「違うっ!!なにも分かってないっ!」

 満人じゃないんだ。彼はもうこの世にもこの世界にも居ないんだよ。俺はマテオ=ルーカスだ。そのことをレオニードは分かってない。

「満人はもうレオニードの隣には寄り添えないんだよっ!!!」

 だから、現実を突きつける言葉をつい言ってしまったんだ。
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