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告白
②(大学生編)
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ここから本編(大学生編)スタートです
___________
昔、小野田さんに初めて告白をした時のことを思い出しながら、うさぎさんと楽しそうに話をしている小野田さんをオムライスを食べながら盗み見る。
楽しそうにケラケラと笑いながら話している二人の間に、この喫茶店のバイト君も参加して凄く盛り上がっていた。
「……いい顔」
あの輪の中に入りたいって思う時もあるけれど、小野田さんの笑った顔が素敵で、きっとあの顔はあの人達だから引き出せるものだって分かっているから無理に割り込むことはしない。割り込んだ瞬間容量いっぱいの風船みたいに彼の笑顔が弾け飛んで粉々になってしまうのなんて見たくは無いしね。
オムライスを完食して、コーヒーを飲みながら相変わらず彼の入れるコーヒーは美味しいなってしみじみ思う。俺用に少しだけ甘めにブレンドされたこのコーヒーを飲むのが毎日の楽しみだ。
大学生になってからは特にここに来るのが楽しみで仕方ない。だって俺はもう高校生じゃないから。
初めて彼に告白をした日、彼は俺に、ごめんね、と申し訳なさそうに返事をしてくれた。理由は今ならよくわかる。当時の彼は25歳、俺は16歳。手を出したら完全に犯罪だし、彼はノンケだ。
「空いているお皿、お下げしますね」
バイト君がそう言ってテーブルに置かれた皿を持って行こうと手に取った。
「大丈夫だよ。俺自分で持っていくから」
それを制止すると彼は笑顔のまま、そうですか、とだけ言って他のお客さんの所に行って同じように声をかける。
それを横目に見ながら、彼が本当に楽しそうにしているのはうさぎさんと話す時だけだなって思う。
まあ、ただの勘だけど。
コーヒーを飲み終えると皿とコーヒーカップを手に取ってカウンターまで向かう。そうしたら、俺に気がついた小野田さんが俺の前に手を差し出してきた。その手に皿を乗せて続いてコーヒーカップを手渡す。このやり取りは俺がまだ高校生だった時からのルーティーン。
「持ってこなくていいっていつも言ってんのに~。呉君が取りに来ただろ?」
「癖だから」
困り顔を作りながらも流れるように俺から食器を受け取る小野田さんにそう言ってやる。そんな顔したって俺はこのやり取りを止めるつもりは無い。それに、小野田さんがバイト君に取りに行くように頼んでいるのだって知ってるんだから。
カウンターに備え付けてあるナフキンに持っているボールペンでサラサラと文字を書いていく。それを小野田さんがやっぱり困り顔で見つめている。これも俺達の毎日の決まったやりとりだから。
『大好き♡』
少しだけカウンターに乗り出して、彼の胸ポケットにそう書かれたナフキンを突っ込んだ。
「今日も美味しかった」
ニカって笑って、お会計のためにレジへと向かうとバイト君がすぐに来てくれる。彼もすっかりこのやり取りには慣れたみたいだ。
うさぎさんはいつまで経っても慣れないのか俺の事を警戒した目で見てくるけどね。
「1020円です」
「ありがと~」
「……あなたも毎回よくやりますよね。人も見てるのに」
今日は珍しくバイト君に話しかけられたから外に出ようとしていた足を止めた。
「俺、メンタル鋼でできてるから」
「へえー」
興味無さそうに相槌を打ってくれたバイト君にじゃあねって言って外に出た。小野田さんとのあのやり取りは俺のこの喫茶店での決め事でありミッション。もう何回あんな風に想いを伝えたか分からない。でも、あの言葉の返事を貰ったことは1度もなかった。迷惑だっていうのはわかってる。それでも続けてる。
彼は優しいから、俺が傷つかないようにいつもやんわり諦めるように言ってくるけれど、俺はそれに気付かないふりをしていた。
だって、諦めきれないから。
俺は中学の頃から変わらず小野田さんのことが好きだ。きっと初恋。
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昔、小野田さんに初めて告白をした時のことを思い出しながら、うさぎさんと楽しそうに話をしている小野田さんをオムライスを食べながら盗み見る。
楽しそうにケラケラと笑いながら話している二人の間に、この喫茶店のバイト君も参加して凄く盛り上がっていた。
「……いい顔」
あの輪の中に入りたいって思う時もあるけれど、小野田さんの笑った顔が素敵で、きっとあの顔はあの人達だから引き出せるものだって分かっているから無理に割り込むことはしない。割り込んだ瞬間容量いっぱいの風船みたいに彼の笑顔が弾け飛んで粉々になってしまうのなんて見たくは無いしね。
オムライスを完食して、コーヒーを飲みながら相変わらず彼の入れるコーヒーは美味しいなってしみじみ思う。俺用に少しだけ甘めにブレンドされたこのコーヒーを飲むのが毎日の楽しみだ。
大学生になってからは特にここに来るのが楽しみで仕方ない。だって俺はもう高校生じゃないから。
初めて彼に告白をした日、彼は俺に、ごめんね、と申し訳なさそうに返事をしてくれた。理由は今ならよくわかる。当時の彼は25歳、俺は16歳。手を出したら完全に犯罪だし、彼はノンケだ。
「空いているお皿、お下げしますね」
バイト君がそう言ってテーブルに置かれた皿を持って行こうと手に取った。
「大丈夫だよ。俺自分で持っていくから」
それを制止すると彼は笑顔のまま、そうですか、とだけ言って他のお客さんの所に行って同じように声をかける。
それを横目に見ながら、彼が本当に楽しそうにしているのはうさぎさんと話す時だけだなって思う。
まあ、ただの勘だけど。
コーヒーを飲み終えると皿とコーヒーカップを手に取ってカウンターまで向かう。そうしたら、俺に気がついた小野田さんが俺の前に手を差し出してきた。その手に皿を乗せて続いてコーヒーカップを手渡す。このやり取りは俺がまだ高校生だった時からのルーティーン。
「持ってこなくていいっていつも言ってんのに~。呉君が取りに来ただろ?」
「癖だから」
困り顔を作りながらも流れるように俺から食器を受け取る小野田さんにそう言ってやる。そんな顔したって俺はこのやり取りを止めるつもりは無い。それに、小野田さんがバイト君に取りに行くように頼んでいるのだって知ってるんだから。
カウンターに備え付けてあるナフキンに持っているボールペンでサラサラと文字を書いていく。それを小野田さんがやっぱり困り顔で見つめている。これも俺達の毎日の決まったやりとりだから。
『大好き♡』
少しだけカウンターに乗り出して、彼の胸ポケットにそう書かれたナフキンを突っ込んだ。
「今日も美味しかった」
ニカって笑って、お会計のためにレジへと向かうとバイト君がすぐに来てくれる。彼もすっかりこのやり取りには慣れたみたいだ。
うさぎさんはいつまで経っても慣れないのか俺の事を警戒した目で見てくるけどね。
「1020円です」
「ありがと~」
「……あなたも毎回よくやりますよね。人も見てるのに」
今日は珍しくバイト君に話しかけられたから外に出ようとしていた足を止めた。
「俺、メンタル鋼でできてるから」
「へえー」
興味無さそうに相槌を打ってくれたバイト君にじゃあねって言って外に出た。小野田さんとのあのやり取りは俺のこの喫茶店での決め事でありミッション。もう何回あんな風に想いを伝えたか分からない。でも、あの言葉の返事を貰ったことは1度もなかった。迷惑だっていうのはわかってる。それでも続けてる。
彼は優しいから、俺が傷つかないようにいつもやんわり諦めるように言ってくるけれど、俺はそれに気付かないふりをしていた。
だって、諦めきれないから。
俺は中学の頃から変わらず小野田さんのことが好きだ。きっと初恋。
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