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98、並んで歩く
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「お、落ち着かない……」
ジャケットの裾を、できるだけ下にひっぱって前を隠す。
結局、俺はスライムの教授をパンツのように穿いたまま、御前崎教授のあとに続いて大学の中を歩くことになってしまった。
誰かとすれ違うだけで、スライムを穿いていることがバレてしまうんじゃないかとびくびくする。
つい先程見てしまったばかりのスラックスの中に入り込んだスライムが、俺のパンツに擬態して体にはりついている、と知ったときの御前崎教授の反応が、俺の中にしっかりとトラウマのように刻み込まれていた。
透視でもしてるのかと思うくらいものすごく真剣な顔で、俺の股間を凝視する御前崎教授。
見えるわけがないと思いつつも、本当に見えてしまうのではないかと思うくらいすごい目力だったのだ。
おかげで、他人からの視線が怖い。
見られているかもしれないと思うだけで、どきどきする。
駐車場からここにくるまでの少しの距離でも、かなりの学生たちとすれ違ったため、すでに精神をがりがりと削られてしまった気分だ。
研究室が近づくにつれ、すれ違う人が少なくなってきたのでようやく肩の力が抜けてきた。
なんとなく、ほっとする。
「そんなに心配しなくてもいい。例え、本当のことを言われたとしても、わからないくらいうまく隠れられているよ」
「あ、そ、それは、よかった、です……」
誰かとすれ違う度に、さりげなく視線を遮ってくれていた御前崎教授が、固有名詞を出さずに俺を慰めてくれる。
ひとつだけいいことがあるとすれば、ぴったりとはりついたスライムパンツは、勃起してしまったちんこをしっかりと隠してくれていることだろうか。
ぶらぶらと揺れることもないため、なんとも快適な穿き心地だ。
それの正体がスライムだと知らなければ、素直にそう思えただろう。
「研究室につくまでの辛抱だろう。あと少しなのだから、頑張りたまえ」
御前崎教授の研究室に向かう間、スライムの教授は大人しくしていると約束して黙り込んだ。
パンツ状態のスライムと会話しながら歩いていくわけにもいかないので、自分から黙ってくれるという提案は大変助かるものだったのだが、それはそれ、これはこれである。
スライムをパンツのように履いている時点で、落ち着けるわけがないのだ。
なにしろ、俺はちんこを勃起させたまま、職場の廊下を歩いているのだから。
「それは、そう、なんですけど……」
鞄を胸元より少し下で抱えながら、御前崎教授の少し後ろをついて歩く。
すべてを知っている御前崎教授に隠す必要があるのかわからないけれど、なんとなく見られたくない。
紳士な教授は、最初こそガン見をしていたが、いまは視線をそらして見ないようにしてくれている。
そこにスライムがいるということを知っているからこその反応だけれど、視線をそらされればそらされるほど、見てはいけないものになってしまったような気がするのだ。
ありがたいようなありがたくないような。
もう、なんと言っていいかわからない。
頭の中はぐちゃぐちゃだ。
「それより、もっと近くにきてくれないかね? そう離れて歩かれると、どうにも話がしずらくて困る」
「あ、はいっ、申し訳ないです」
御前崎教授は、少しだけ眉を下げた困り顔で立ち止まり、もにょもにょとしていた俺を振り返っていた。
いつの間にか、遅れていたらしい。
もっと、と差し出された手に従って進めば、御前崎教授の真横と言ってもいい位置になる。
「えっと……これは」
「私と並んで歩くのは嫌かね?」
「い、いえ、そういうことは、ないんですけど……」
「ならいいだろう? ついでに、今日の予定も話してしまおう。その方が、効率的だからね」
「は、はいっ」
効率と言われると断るわけにもいかない。
俺は、御前崎教授と並んで歩く。
御前崎教授は、こちらを見ない。
あのときは、目が真剣すぎてスラックスの中が見えているのではないか、と恐ろしくなるほど見つめられた。
その目力は、すごかった。
股間に向けられるにしては、あまりにも視線が強すぎて、俺は恥ずかしくて堪らなくなった。
思わず股間を手で隠してしまいたくなるほどに。
中が見えるなんてことはあり得ないことだが、そのときは御前崎教授ならできてしまいそうだ、と本気で思ってしまったのだから仕方がない。
視線を手で遮られたからなのか、御前崎教授はハッと何かに気付いたような顔になり、慌てて目をそらしてくれた。
外から見てもわからないとはいえ、スライムの中でしっかり勃起していた俺としては、できれば見ないで欲しかったので目をそらしてもらえて大変助かった。
そこから教授は、俺のことをまともに見ようとしない。
それが、少しだけ不満だった。
ジャケットの裾を、できるだけ下にひっぱって前を隠す。
結局、俺はスライムの教授をパンツのように穿いたまま、御前崎教授のあとに続いて大学の中を歩くことになってしまった。
誰かとすれ違うだけで、スライムを穿いていることがバレてしまうんじゃないかとびくびくする。
つい先程見てしまったばかりのスラックスの中に入り込んだスライムが、俺のパンツに擬態して体にはりついている、と知ったときの御前崎教授の反応が、俺の中にしっかりとトラウマのように刻み込まれていた。
透視でもしてるのかと思うくらいものすごく真剣な顔で、俺の股間を凝視する御前崎教授。
見えるわけがないと思いつつも、本当に見えてしまうのではないかと思うくらいすごい目力だったのだ。
おかげで、他人からの視線が怖い。
見られているかもしれないと思うだけで、どきどきする。
駐車場からここにくるまでの少しの距離でも、かなりの学生たちとすれ違ったため、すでに精神をがりがりと削られてしまった気分だ。
研究室が近づくにつれ、すれ違う人が少なくなってきたのでようやく肩の力が抜けてきた。
なんとなく、ほっとする。
「そんなに心配しなくてもいい。例え、本当のことを言われたとしても、わからないくらいうまく隠れられているよ」
「あ、そ、それは、よかった、です……」
誰かとすれ違う度に、さりげなく視線を遮ってくれていた御前崎教授が、固有名詞を出さずに俺を慰めてくれる。
ひとつだけいいことがあるとすれば、ぴったりとはりついたスライムパンツは、勃起してしまったちんこをしっかりと隠してくれていることだろうか。
ぶらぶらと揺れることもないため、なんとも快適な穿き心地だ。
それの正体がスライムだと知らなければ、素直にそう思えただろう。
「研究室につくまでの辛抱だろう。あと少しなのだから、頑張りたまえ」
御前崎教授の研究室に向かう間、スライムの教授は大人しくしていると約束して黙り込んだ。
パンツ状態のスライムと会話しながら歩いていくわけにもいかないので、自分から黙ってくれるという提案は大変助かるものだったのだが、それはそれ、これはこれである。
スライムをパンツのように履いている時点で、落ち着けるわけがないのだ。
なにしろ、俺はちんこを勃起させたまま、職場の廊下を歩いているのだから。
「それは、そう、なんですけど……」
鞄を胸元より少し下で抱えながら、御前崎教授の少し後ろをついて歩く。
すべてを知っている御前崎教授に隠す必要があるのかわからないけれど、なんとなく見られたくない。
紳士な教授は、最初こそガン見をしていたが、いまは視線をそらして見ないようにしてくれている。
そこにスライムがいるということを知っているからこその反応だけれど、視線をそらされればそらされるほど、見てはいけないものになってしまったような気がするのだ。
ありがたいようなありがたくないような。
もう、なんと言っていいかわからない。
頭の中はぐちゃぐちゃだ。
「それより、もっと近くにきてくれないかね? そう離れて歩かれると、どうにも話がしずらくて困る」
「あ、はいっ、申し訳ないです」
御前崎教授は、少しだけ眉を下げた困り顔で立ち止まり、もにょもにょとしていた俺を振り返っていた。
いつの間にか、遅れていたらしい。
もっと、と差し出された手に従って進めば、御前崎教授の真横と言ってもいい位置になる。
「えっと……これは」
「私と並んで歩くのは嫌かね?」
「い、いえ、そういうことは、ないんですけど……」
「ならいいだろう? ついでに、今日の予定も話してしまおう。その方が、効率的だからね」
「は、はいっ」
効率と言われると断るわけにもいかない。
俺は、御前崎教授と並んで歩く。
御前崎教授は、こちらを見ない。
あのときは、目が真剣すぎてスラックスの中が見えているのではないか、と恐ろしくなるほど見つめられた。
その目力は、すごかった。
股間に向けられるにしては、あまりにも視線が強すぎて、俺は恥ずかしくて堪らなくなった。
思わず股間を手で隠してしまいたくなるほどに。
中が見えるなんてことはあり得ないことだが、そのときは御前崎教授ならできてしまいそうだ、と本気で思ってしまったのだから仕方がない。
視線を手で遮られたからなのか、御前崎教授はハッと何かに気付いたような顔になり、慌てて目をそらしてくれた。
外から見てもわからないとはいえ、スライムの中でしっかり勃起していた俺としては、できれば見ないで欲しかったので目をそらしてもらえて大変助かった。
そこから教授は、俺のことをまともに見ようとしない。
それが、少しだけ不満だった。
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