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08、解決の糸口
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「……どうすれば、いいんだよ……」
正直、いまは指一本動かしたくないくらい疲れていた。
顔や髪にべっとりとついた精液が、少しずつ乾いて来ているのがわかる。
眉間から鼻の横を通って落ちた跡や、頬にかかったものが肌の上でぱりぱりと乾燥して、引きつれていく。
それがすごく不快で、さっさとシャワー浴びて全部流してしまいたいのに動けない。
このまま寝落ちでもしたら風邪を引くだろうな、と思うのに体がいうことを聞いてくれないのだ。
仰向けから横向きへ。
なんとか体を動かしたところで力尽きた。
「……も、いっか……どうせ、パンツも穿けやしないんだ。俺なんて、死んだようなものだ」
全部諦めて、そのまま目を閉じようとした。
「……ん?」
その時、視界の端に、見間違えようもない蛍光ピンクが姿を現した。
【私の休眠中に一人遊びか? ……しっかり悦ばせてやったはずなのに、まだ足りていなかったということか】
液体状になったスライムが、風呂場のドアの隙間という隙間から、滲み出るようにして中に入ってきた。
まるで、ホラー映画のようだ。
あの小さな瓶の中に収まっていたとは思えないほどの量で、俺はあっという間にスライムに囲まれてしまった。
【それとも、私の歓迎パーティーでも開いてくれるつもりだったのか? 自らの精気で自身をデコレーションとは、素晴らしいアイデアだぞ。いますぐにでも、食べてしまいたいくらいだ】
ぶちまけた精液も、垂れ流した小水も、一瞬で蛍光ピンクの波に飲み込まれていった。
目に痛い蛍光ピンクの波は、浴室の床に転がったままの俺の目の前で、蛇が頭をもたげるようにのびあがる。
【ユウ、私の……私だけの、マスター】
すべてを飲み込んだスライムが、じわりじわりと迫ってくる。
終わったな、と思った。
今度こそ、干からびるまで吸い取られて死ぬんだろうな、って。
なんて、情けない死に方だろう、って。
そう思ったら、ぽろりと涙が一粒、こぼれ落ちた。
【……どうして、泣く? 何か、悲しいことがあったのか?】
スライムが顔の上をするりと通り過ぎると、こぼした涙も、かぴかぴしていた乾きかけの精液も、綺麗さっぱりなくなった。
【全部、食べるが構わないよな? そのままでは、ユウも気持ちが悪いだろう? 絶対に優しくするから、受け入れてくれ】
「…………ん」
俺が小さく頷くと、スライムがふるりと震えた。
それから、頭を撫でているかのように、怪我がないか確認するかのように、スライムがゆっくりと俺の体の上を通り過ぎていく。
足の先から頭のてっぺんまで、スライムはただゆっくりと通り過ぎて、最後にちんこの前でぴたりと止まった。
俺の体は、それだけで勝手にがたがたと震えている。
スライムに怯えているのだ。
【ユウ、何をそんなに恐れている? 私は、君の使い魔だ。ユウを傷付けたりしないぞ】
「う、うそだ、だって、お、俺のっ、俺のからだっ、お前のせいで、おかしくなっ」
もうパンツも穿けない体になってしまったことが、情けなくて悲しくて後から後から涙があふれ出した。
スライムと契約したせいで、もうまともな生活を送ることも出来ないなんて。
そう思ったら、涙が止まるわけがない。
まるで子どもみたいに、わんわん泣いた。
【体がおかしいだと? どこだ。どこが、おかしい。ユウ、見せてみろ。恥ずかしがらなくていい。私は、回復薬も生成できる。大抵のことなら治してやれる。医者の真似事なら得意だ。私に、ユウを救わせてくれ】
スライムに、顔なんてない。
それどころか、どこが顔なのかすらわからない。
だって、全身が液体のようなもので出来ているのだから。
スライムは、人間ではない。
こいつは、モンスターだ。
けれど、うるさいくらいに聞こえてくる声からは、焦りのようなものを感じる。
このスライムは、まるで人間と同じように俺に話しかけてくる。
それが、ものすごく心配してくれているように感じるのは、何故なんだろう。
俺は、夢でも見てるんだろうか。
【ユウ、お願いだ。私を頼ってくれないか?】
すりっと頬を撫でたつもりだろうか。
ぷにゅりとスライムが、頬に触れた。
それが、思いの外、優しく感じて。
「……ちんこ、が……おかしいんだ」
思わずぽろりと言葉がこぼれた。
「さっ、さわっただけで、……ぃ、イっちゃうし、おっ、おしっこも、も、もらすしっ、俺の、ちんこなのに……こんな、みたことない、いろでっ」
ついでに、涙もぼろぼろこぼれた。
一度言ってしまったら、堰を切ったように止まらなかった。
どうしようもなく不安で、差しのべられた手に、必死ですがり付いた。
藁にも縋る思いだった。
触ってみたスライムの体は、簡単に指が突き抜け、触っている感触も曖昧だった。
だけど、なんとなく握り返されているような気がする。
子どもみたいに、また、泣いた。
情けなくてみっともない。
大の大人がすることではないと、そう思うのに涙は止まってくれなかった。
【……すまない。私のせいだな。急激に感度を上げ過ぎたせいだ。ユウには、辛い思いをさせてしまった。治療をさせてくれ。すぐに終わらせるから】
「な、なおるのか? こんな、」
【大丈夫だ。……ただ、一度、リセットする必要がある】
「りせ、っと?」
言いにくそうに付け加えられた言葉に、きょとんとした。
【そうだ。もう一度、私がユウの中に入って、直接中和剤を塗りつけてくるとしよう。耐えてくれるか?】
「……え」
ぷるりと震えたスライムが、どんな顔でその言葉を言っているのか、俺にはわからなかった。
正直、いまは指一本動かしたくないくらい疲れていた。
顔や髪にべっとりとついた精液が、少しずつ乾いて来ているのがわかる。
眉間から鼻の横を通って落ちた跡や、頬にかかったものが肌の上でぱりぱりと乾燥して、引きつれていく。
それがすごく不快で、さっさとシャワー浴びて全部流してしまいたいのに動けない。
このまま寝落ちでもしたら風邪を引くだろうな、と思うのに体がいうことを聞いてくれないのだ。
仰向けから横向きへ。
なんとか体を動かしたところで力尽きた。
「……も、いっか……どうせ、パンツも穿けやしないんだ。俺なんて、死んだようなものだ」
全部諦めて、そのまま目を閉じようとした。
「……ん?」
その時、視界の端に、見間違えようもない蛍光ピンクが姿を現した。
【私の休眠中に一人遊びか? ……しっかり悦ばせてやったはずなのに、まだ足りていなかったということか】
液体状になったスライムが、風呂場のドアの隙間という隙間から、滲み出るようにして中に入ってきた。
まるで、ホラー映画のようだ。
あの小さな瓶の中に収まっていたとは思えないほどの量で、俺はあっという間にスライムに囲まれてしまった。
【それとも、私の歓迎パーティーでも開いてくれるつもりだったのか? 自らの精気で自身をデコレーションとは、素晴らしいアイデアだぞ。いますぐにでも、食べてしまいたいくらいだ】
ぶちまけた精液も、垂れ流した小水も、一瞬で蛍光ピンクの波に飲み込まれていった。
目に痛い蛍光ピンクの波は、浴室の床に転がったままの俺の目の前で、蛇が頭をもたげるようにのびあがる。
【ユウ、私の……私だけの、マスター】
すべてを飲み込んだスライムが、じわりじわりと迫ってくる。
終わったな、と思った。
今度こそ、干からびるまで吸い取られて死ぬんだろうな、って。
なんて、情けない死に方だろう、って。
そう思ったら、ぽろりと涙が一粒、こぼれ落ちた。
【……どうして、泣く? 何か、悲しいことがあったのか?】
スライムが顔の上をするりと通り過ぎると、こぼした涙も、かぴかぴしていた乾きかけの精液も、綺麗さっぱりなくなった。
【全部、食べるが構わないよな? そのままでは、ユウも気持ちが悪いだろう? 絶対に優しくするから、受け入れてくれ】
「…………ん」
俺が小さく頷くと、スライムがふるりと震えた。
それから、頭を撫でているかのように、怪我がないか確認するかのように、スライムがゆっくりと俺の体の上を通り過ぎていく。
足の先から頭のてっぺんまで、スライムはただゆっくりと通り過ぎて、最後にちんこの前でぴたりと止まった。
俺の体は、それだけで勝手にがたがたと震えている。
スライムに怯えているのだ。
【ユウ、何をそんなに恐れている? 私は、君の使い魔だ。ユウを傷付けたりしないぞ】
「う、うそだ、だって、お、俺のっ、俺のからだっ、お前のせいで、おかしくなっ」
もうパンツも穿けない体になってしまったことが、情けなくて悲しくて後から後から涙があふれ出した。
スライムと契約したせいで、もうまともな生活を送ることも出来ないなんて。
そう思ったら、涙が止まるわけがない。
まるで子どもみたいに、わんわん泣いた。
【体がおかしいだと? どこだ。どこが、おかしい。ユウ、見せてみろ。恥ずかしがらなくていい。私は、回復薬も生成できる。大抵のことなら治してやれる。医者の真似事なら得意だ。私に、ユウを救わせてくれ】
スライムに、顔なんてない。
それどころか、どこが顔なのかすらわからない。
だって、全身が液体のようなもので出来ているのだから。
スライムは、人間ではない。
こいつは、モンスターだ。
けれど、うるさいくらいに聞こえてくる声からは、焦りのようなものを感じる。
このスライムは、まるで人間と同じように俺に話しかけてくる。
それが、ものすごく心配してくれているように感じるのは、何故なんだろう。
俺は、夢でも見てるんだろうか。
【ユウ、お願いだ。私を頼ってくれないか?】
すりっと頬を撫でたつもりだろうか。
ぷにゅりとスライムが、頬に触れた。
それが、思いの外、優しく感じて。
「……ちんこ、が……おかしいんだ」
思わずぽろりと言葉がこぼれた。
「さっ、さわっただけで、……ぃ、イっちゃうし、おっ、おしっこも、も、もらすしっ、俺の、ちんこなのに……こんな、みたことない、いろでっ」
ついでに、涙もぼろぼろこぼれた。
一度言ってしまったら、堰を切ったように止まらなかった。
どうしようもなく不安で、差しのべられた手に、必死ですがり付いた。
藁にも縋る思いだった。
触ってみたスライムの体は、簡単に指が突き抜け、触っている感触も曖昧だった。
だけど、なんとなく握り返されているような気がする。
子どもみたいに、また、泣いた。
情けなくてみっともない。
大の大人がすることではないと、そう思うのに涙は止まってくれなかった。
【……すまない。私のせいだな。急激に感度を上げ過ぎたせいだ。ユウには、辛い思いをさせてしまった。治療をさせてくれ。すぐに終わらせるから】
「な、なおるのか? こんな、」
【大丈夫だ。……ただ、一度、リセットする必要がある】
「りせ、っと?」
言いにくそうに付け加えられた言葉に、きょとんとした。
【そうだ。もう一度、私がユウの中に入って、直接中和剤を塗りつけてくるとしよう。耐えてくれるか?】
「……え」
ぷるりと震えたスライムが、どんな顔でその言葉を言っているのか、俺にはわからなかった。
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