恋は熱量

５０、準備

「……ぁ、ちがっ……」

反射的に否定しかけて、ジュールはびくりと震えた。
遠慮しないでどんどん言え、と言われたばかりだ。
この男に、隠さず何でも教えたら、ジュールはまたご褒美がもらえるのだ。
いままで知らなかった気持ちいいことを、この男はジュールに何でもしてくれる。

「ぁ、ちが、わ、ない、です……っ、はぃ……っ、ほ、ほしい、です……っ」

いまにも消え入りそうな声で答え、こくりと頷いたジュールは、耳まですっかり赤く染まっていた。
男に対して素直に答えるということは、ご褒美をねだることであり、ジュールが気持ちよくなりたいと訴えていることになる。
何だか、恥ずかしくてたまらなかった。

「んっ、んんっ、そ、それじゃあ、お互い最後の準備をしねぇといけねぇな」

喉の調子が悪いのか、男は咳払いに失敗したような咳をして、ジュールの体を優しく起こした。
最後の準備とは？と首を傾げるジュールを抱いたまま、また男が下になる。
男は膝の上に乗せたジュールの頬を撫で、そのあごを掬いあげる。

「なぁ、俺のチンポ、いますぐ欲しいか？」

「……ぇ、あ、…………はい」

頬を赤らめながらも、やはり素直に頷いたジュールの唇を啄みながら、男が優しく微笑んだ。

「それじゃあ、早く入れてやれるように頑張るから、俺と一緒に準備しようか？」

「……いっしょに、じゅんび……です、か？」

「そうだ。いっぺんに済ませば、その分早くチンポを食わせてやれるからな。どうだ、やってくれるか？」

「いっしょにしたら、はやく……わかりました。やってみます」

嬉しそうに微笑んだジュールが、お返しとばかりに男の唇に自分の唇をそっと重ねた。

「あんた、本当にいい子だなぁ。ちょっと、心配になるくらい本当にいい子だよ」

「……ぇ、なにか、おかしい、ですか……？」

「いや、俺としては、ずっとそのままのあんたでいて欲しいね。……変わらなくていいように、俺が守ってやるから」

ジュールの一回の口づけは、何倍にもなって返ってきた。
触れるだけの口づけがたくさんと、舌まで入ってくる深い口づけが一回。
重なった唇と絡まる舌から、男の精気がじわじわと染み込んでくる。

「……ふ、ぁ……っ？」

「なんでもない。ほら、それじゃあ、早速、準備をしようぜ」

一緒に準備を、と言われた時に気がつくべきだったのだ。
すでに一度、それをしたことがあったのだから。
だが、ジュールがそう思った時には、すべてが手遅れだった。

「さ、おいで。どうすればいいか、わかるだろう？」

男の上で後ろ向きに座らされ、優しく尻を撫でられていた。
目の前には、男の陰茎が硬く反り返っているのが見える。

「ほら、可愛いお口で、俺のチンポを咥えてくれ」

「んんっ、ぁ……っ、は、ぁ……ぃ」

ぬちゅぬちゅと濡れた尻の穴を撫でられ、ジュールは観念したように体を丸めて、陰茎の先をぱくりと咥えた。
溢れる先走りが、甘く蕩けてジュールの口の中にひろがっていく。

「……ふ、ぁ……っ、せぃき、おいひぃ……っ」

「もっと飲ませてやるから、しっかり咥えてみな。奥までちゃんと飲み込めるだろ？」

「……ふぁ、ぃ……ん、ふぅ……っ」

甘い声に誘われるまま、ジュールは男の陰茎を喉の奥へと飲み込んでいく。
ただ、根本まで咥えるには体を丸めただけでは足りず、腰を浮かせて頭を下げ、陰嚢の中に鼻先をゆっくりと押し当てた。
腰を浮かせたジュールの太ももが、一本ずつ持ち上げられ、男の肩に引っかけられる。
尻の穴には男の唇が押し当てられ、熱く濡れた舌がぬるりと入り込んできた。

「ん゛ふ、ぅンンッ」

「ほら、あんたも続けてくれよ。たっぷり濡らして、チンポをここに食わせてやるんだろう？」

ぬるんっと抜けた舌の代わりに、つぷんっと指が入り込んでくる。

「一緒に準備、しようぜ？」

「ン、ふッッ」

ジュールに出来たことは、喉の奥まで入れた陰茎を、ただただ締め付けることだけだった。
それも、尻の穴に男の指を三本も入れられ、震える尻尾をいやらしく咥えられてしゃぶられながら、ひたすら快楽に喘がされて喉を震わせているだけで、締めようとして締めているわけではない。
男は陰茎でジュールの喉を突き上げることもなく、優しく優しくジュールの尻の穴を拡げるだけで、ジュールの体に奉仕をさせていた。
男に快楽で操られてしゃぶる陰茎は、とてもうまかった。
尻の穴からは蜜がとろとろと溢れ、男の指は簡単に根本まで入り込んで、ジュールのぷくりと膨らんだしこりを揉むように責め立てる。
喉がびりびりと震え、よだれがじゅわりとあふれ出した。

「ん、そろそろ、いけそうだな。なぁ、このまま口から飲むのと、ここから腹の奥に飲まされるの、どっちがいい？」

尻の穴を拡げながら男が聞くのに、ジュールは尻をゆらめかせて答えた。
もちろん、いますぐご馳走がもらえるのなら、受けとる場所はジュールの尻の中に決まっている。

「そっか、腹の中に欲しいのか。それなら、いまからいっぱい飲ませてやるからな。こっち向いて、俺の上においで」

喉の奥からずるりと抜け出た男の陰茎は、ジュールのよだれでいやらしく濡れていた。
喉と尻の穴、どちらもが空っぽになってしまった寂しさを抱えながら、男の太ももを跨いで座り直す。
男はジュールを抱き締めると、唇、首筋、乳首と順番に口づけてから、熱く滾った陰茎の先をジュールの尻の穴にそっと押し当てた。

「入れるぜ、いいか？」

「……ぁ、……はい……っ」

尻尾が制御できないほどに揺れ、蜜を溢れさせる尻の穴がひくひくといやらしくひくついているのがわかった。
これから、この雄のものになれるのだと、ジュールの体が悦んでいた。

「さぁ、好きなだけ食ってくれよ。俺の可愛い淫魔ちゃん」