恋は熱量

うしお

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33、過去

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男はジュールの尻の穴に濡らした中指と人差し指をまとめて差し込むと、あのこりこりとした気持ちいいところをぐりぐりと撫ではじめた。
もちろんお仕置きは、それだけでは終わらない。
二本の指を咥えこんだ尻の穴に、男はさらに舌を入れてにゅくにゅくと舐めはじめる。
かりかりにゅくにゅくとふたつの快感を捩じ込まれたジュールは、四つん這いの体をがくがくと震わせながら、何度も何度も絶頂を繰り返す。

「ひあ゛あ゛ぁあ゛あ゛ぁ……っ、おひおき、きもぢ、いいよぉっ、おひり、とけぢゃうっ、あ゛っ、あ゛うっ、あ゛ううううぅ……っ、ひゅごぃの、くるぅっ、ひゅごぃのぉおおっ、も、ぐひゃぐひゃに、らっちゃうよぉっ」

「ほら、四つん這いが崩れてきてるぞ。悪い子には、お仕置きの追加だな」

ぐぷっと三本目の指が差し込まれた。
根本までぐっぽりと入り込んだ三本の指は、それぞれがまるで別の生き物であるかのように蠢き、予想もつかない動きでジュールのしこりをかりかりと引っ掻いていく。
軽く撫でられるだけでもたまらなく気持ちいい場所を、三本の指で休みなく引っ掻かき続けられたりしたら、もう気持ちいいどころの騒ぎではない。
その指の一掻き一掻きで絶頂しているのではないかというくらい、ジュールを襲う絶頂と絶頂の間隔は短い。
息もろくにできなくなるくらい絶頂を繰り返したが、ジュールは必死に四つん這いの姿勢を維持し続けた。

「よし、もういいだろ。お仕置きは終わりだ。よくがんばったな」

手も足も限界ぎりぎりで、ぶるぶると震えていた。
あとほんの少し指が止まるのが遅かったなら、ジュールの手足は耐えきれずに崩れていただろう。

「……ぁ、ぅ……っ」

「今度はご褒美だな。ご褒美は、何にするかなぁ」

指を引き抜かれた瞬間、背中を大きく仰け反らせて絶頂したジュールはやはり限界で、そのままべしゃりと男の足の上に崩れ落ちた。
男はジュールを労うように絶頂に震え続けている尻を撫で、同じくくったりとしていた尻尾に触れた。

「ひぁ、あぁ……んんぅっ」

男はひどく優しい手つきで、ジュールの尻尾を撫でている。
あたたかく大きな手の中に囚われた尻尾は、全身がざわめくような快感にぴこぴこと震えながらも、その手のひらへ甘えるかのようにすりっすりっと身を寄せているようだった。

「可愛い尻尾だな」

吐息のようなかすかな囁きが、ジュールの心をあたためてくれる。
それが何より嬉しかった。

ジュールも、昔は他の淫魔のように、それなりに美しいと思える容姿をしていたはずだが、気がつけば顔のまるみはほとんどなくなり、いかつくごつごつとした筋肉の塊になっていた。
ただひとつ、みんなと尻尾の形が違うというだけなのに、同じようには綺麗になれなかった。
娼館の中で、ひどい扱いを受けた。
短い、醜い、みっともない。
ジュールの尻尾が短いというだけで、どれだけ嘲られてきただろう。
最初に与えられたのは一階の隅の部屋だったが、お食い初めの時に地下へと押し込められてから、ジュールの扱いはどんどん悪くなっていった。
最後に与えられた部屋は、いくつかある地下の中でも一番奥にある窓がひとつもない部屋だった。
空気が淀み、じめじめとしたカビ臭い部屋だ。
ジュールのところに案内されてくる客は、すでにべろべろに酔った酔客や、淫魔たちに乱暴を働くようなマナーの悪い客ばかりだった。
彼らは、部屋への不満をジュールにぶつけるかのようにベッドへ投げ捨て、尻だけを上げさせると、慣らすこともなく陰茎を遠慮なく突き立ててきた。
淫魔の尻の穴が自然に濡れるものだとしても、常に濡れているわけではないから、ジュールはすべてを自分で準備して濡らしておかなければならなかった。
事が済んだあとは、機嫌がよければそのまま解放してもらえるが、大抵は不満をぶつけるサンドバッグにされることが多かった。
幸いなことに、中に出された精液から獲られる精気のおかげで、どんなにひどい怪我をしても、補充された魔力が治してくれた。
その代わり、ジュールが獲られる魔力は、一晩中がんばっても、獲られた魔力のほとんどがその日のうちに使われてしまうので、残ることなどないくらいに少なかった。

五人以上の団体客を、ひとりで相手にさせられたこともある。
彼らは穴が足りないからと、喉穴も尻の穴と同じように乱暴に使い、粗相があれば殴り付けた。
喉穴と両手に陰茎を擦り付けられながら、尻の穴には残った二本の陰茎を無理矢理捩じ込まれたこともある。
彼らが来店するとジュールはベッドの上に鎖やロープで戒められ、逃げ出すことも許されず朝まで犯され続けなければならなかった。
ひどい時は、尻の穴に腕や足を無理矢理入れられ、泣き叫ぶ姿を嗤われたり、わざと床に溢した精液をすべて舐めさせられたりもした。
精液の代わりに小便ばかりを飲まされた時には、何度も嘔吐いてその度に、殴られたり蹴られたりと痛めつけられた。
だが、どんなにひどいことをされても、ジュールは店から追い出されたくなくて、それにぐっと耐えてきた。
淫魔であるジュールは、精気を獲られなければ、生きていけないと知っていたからだ。

ある日のこと、娼館で一番美しい淫魔が長く美しい尻尾を揺らしながら、お前のようなでき損ないが自分たちと同じ淫魔であるはずかないと言い出した。
ジュールは、必死に自分も淫魔なのだと訴えた。
けれど、短い尻尾を持つ淫魔の数はもともと少なく、いまこの街にいるのはジュールひとりだけだった。
やっぱり尻尾が違うお前は、仲間じゃないと突き放された。
ジュールにいろいろ教えてくれた老人が死んでしまったいま、ジュールに味方してくれるものはどこにもいなかった。
そして、ジュールは、その娼館からだけでなく娼館街から追い出されてしまった。
精気がなければ、死ぬこともある淫魔にとっては、娼館街からの追放は事実上の死刑宣告と変わらない。
しばらくは、もぐりの男娼として、時々、街にきた旅人から精気をわけてもらっていたが、それもすぐにできなくなった。
食べ物からでも魔力を補給できるという短尾種の特性のおかげで、すぐに死ぬことはなかったのだが、食事をすればするほど日に日に筋肉が膨れ上がり、気がつけば可愛らしさとは程遠い男らしい体になり果てていたからだ。
男らしい姿となったジュールが、金はいらないから尻の穴を犯してくれと頼んでも、性交をしてくれる男はほとんどいなかった。
それもそうだろう、すぐそばに美しい淫魔がいる娼館街があるというのに、下手をすれば自分よりもたくましい男など抱きたいと思うものがいるわけもない。
街にいても、誰からも相手にされない日々が続いた。
何日も何日も精気を獲られなくて、仕方なく腹を満たせば筋肉が増える。
筋肉が増えれば、ますます体はいかつくなった。
ついには近づこうにも避けられるようになり、話も聞いてもらえなくなった。
話も聞いてもらえないのでは、性交するなど夢のまた夢。
そんな悪循環に陥っていた。
何年も何年も、まるで泥水を啜るような生活を繰り返したジュールは、ついに街から逃げ出した。

ジュールは大きな体にぼろぼろのローブをまとい、消えてしまいたいと思いながら背中をまるめて北の森の中を彷徨った。
長く続いた辛い生活が、ジュールからあらゆる自信を奪ってしまったていた。
明るい実りの多い西の森には近づくこともできず、生き物の少ない寂れた北の森に死に場所を探しているようなものだった。
当然のことながら、森で暮らしたことなどないジュールは、食べられるものを手に入れることができず、空腹のあまり倒れた。
そして、通りすがりのたまたま森の中で作業をしていた木こりの老人に拾われた。
木こりの使う休憩所で久しぶりのあたたかい食事をもらい、ジュールは涙を流して喜んだ。
力仕事は得意か、と聞かれたジュールはこくりと頷いた。
すると老人は、ジュールを伐った木を運ぶ運び手として休憩所に住まわせてくれ、まるで孫のように可愛がってくれた。
長く人と話していなかったジュールは、その時、声の出し方すら忘れてしまっていた。
それに、体は大きくなっていたが、勉強などしたこともない頭の中身は、ほとんど子どものままと変わらなかった。
ジュールがたどたどしく話すのを、老人は急かすこともなくいつでも優しく聞いてくれた。
おかげで、いまは少しだけなめらかに話せるようになっている。
その代わり、老人と同じものを食べ続けたジュールの体は、どこからどうみても淫魔には見えない屈強な男となっていた。
だから、いまのジュールは、娼館街にいた頃の面影など欠片も存在しない屈強なおっさんなのだ。
それでも、この男はジュールに可愛いと言ってくれる。
嬉しいと思った瞬間、尻の穴からとろんっと蜜が溢れ落ちた。

「ん? ああ、そうか。尻尾を撫でられるのが好きなんだな。それなら、もう少し可愛がってやろうな」
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