恋は熱量

うしお

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2、日常(2)

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北の森に住むジュールが、淫魔であることはあまり知られていなかった。
ただ、昔、旅人相手にタダ同然で尻の穴を差し出していた、という噂は密かに流れていたらしい。
混ざりものの安酒を出すような場末の酒場で、口の軽い旅人が武勇伝代わりに語ったそれが、この三人の耳に入った。
したたかに酔っていたこの三人は、タダで気持ちよくなれるなら試してみるか、と森の小屋で寝ていたジュールに襲いかかった。
その頃のジュールは満足に精気を得られず、常に魔力不足でぐったりとしていたので、簡単に押さえつけられてしまった。
真っ暗な闇の中、三人は押さえつけたジュールの尻の穴を適当に拡げ、使えそうだとわかるとすぐに陰茎を突き立てた。
三本の陰茎に代わる代わる犯され、朝までろくに休ませてもらえなかったが、ジュールは久しぶりの快楽に蕩けた。
順番を待つ勃起した陰茎を自分から喜んで咥え、上からも下からもたっぷりと精液を飲ませてもらった。
朝になり明るくなった小屋の中で、酔いの覚めた三人から「淫魔のクセに厳つすぎる」だの、「気持ち悪い声で喘ぐんじゃねぇよ」だのと罵倒されるまでは、少しだけジュールも幸せになれるかもしれないと錯覚していた。
ちなみに、ジュールが一番傷ついた言葉は、「お前、その面で淫魔なのかよ」だ。
ジュールだって、好きでこんな顔になったわけではない。
人に事情があるように、淫魔のジュールにだって事情があるのだ。
そんなことを言うのなら、放っておいてくれればいいのに。
しかし、この三人はジュールのことを気持ち悪いおっさんと罵るものの、淫魔の体特有の気持ちよさはやめられないものらしく、時々こうしてやってきては、仲良くジュールの尻の穴を使っていく。

「それより、聞けよ。この尻尾、握るとめちゃくちゃナカが締まるぜ」

「まじか、どんな感じだ」

「ぎゅうっとちんぽが、根本から搾り取られる感じだな。これ、すげぇぞ。腰なんか振んなくても気持ちいい」

「おい、早く終わらせろよ。次はオレの番だからな」

「わかってるって、まだ二周目だろ。朝まで使うんだから、ほどほどにしとけよ」

尻尾が短いのは種類が違うからだ、尻尾は繊細なんだから強く握るな、なんて言いたくても言えるわけがなく、ジュールは出来損ないで厳ついおっさんと蔑むくせに、尻の穴がひりひりするくらい夢中で使う男たちに一晩中犯され続けた。
一ヶ月ぶりの性交は、ジュールの体に少しだけ艶を与えてくれたが、尻尾も尻の穴もひどく痛み、空腹はやはり少しも満たされなかった。
街の淫魔のように、一度でいいからお腹いっぱいになるまで、食べてみたかった。

「おいしい精気ごはんって、どんなんだろう」

ジュールは三人がかりでたっぷりと中出しされた尻の穴に、自分の尻尾を詰めこんで栓をすると、精液や小便でべとべとになった体を冷たい川で洗い清めた。
この精液のおかげで、少しは精気を取り込める。
すぐに変換されてくれたおかげで、魔力の方はしばらく大丈夫だろうが、それもすぐになくなってしまうだろう。
彼らが来るのは不定期だが、昨日あれだけ楽しんだのならしばらくは来ないはずだ。
水浴びのついでに、持ってきたネズミをじゃぶじゃぶと洗いながら、久しぶりに肉が食べられると喜んだ。
血抜きをされていないネズミは、すごく血生臭いものなのだが、肉というだけでジュールにはとても魅力的にうつる。

男たちからもらった血生臭いネズミは、大事に食べたがすぐになくなってしまった。
ネズミは綺麗に毛皮を剥いで切り分けたあと、裏についた脂肪も残さずかき集めてスープに入れたし、骨も一緒に煮込んでやわらかくなったあと砕いて食べた。
ネズミの毛皮は小さすぎて使い道はあまりないが、ジュールはそれも大事にとってある。
もしもの時は、表面の毛を焼き落として皮をしゃぶるつもりでいるからだ。
腐らないようしっかりと干して、保存してある。
あんな男たちにすら蔑まれたように、美しくない淫魔のジュールは、そうでもしなければ生きていけないのだ。
どんなものでも食べていかなければ、淫魔のジュールは魔力が枯渇して、やがて死に至るだろう。
狩りのできないジュールには、選り好みなどしている余裕はどこにもなかった。
魔力を生きる力とする魔族の中でも、肉体の維持にすら魔力を消費する淫魔は少し特殊な存在だった。
もっと、普通の淫魔として生まれたかった。
せめて尻尾がもう少し長かったなら、ジュールの人生は何かが変わっていただろうか。
ジュールは、いつものように床の上に敷いた布の上で、小さくまるまって目を閉じた。
目覚めたら、普通の淫魔になっていたらいいのに、と思いながら。
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