恋は熱量

うしお

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1、日常(1)

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「……ぅ、ふ……ッッ」

思いきり突き上げられ、しがみついていた大木に頭をがつんとぶつけた。
その拍子に、噛み締めていたはずの歯が跳ね、小さな吐息が漏れてしまう。
慌てて口を塞いだのだが、尻の穴にがむしゃらになって陰茎を突き込んでいた男は苛立たしげに唸り、目の前にあるジュールの尻を叩きはじめた。
大きな手のひらが、何の手加減もなく振り下ろされてくる。

「ふざけんなよ、てめぇ! てめぇの気持ちわりぃ声を、オレらに聞かすなっつってんだろうがっ、ちゃんと口をふさいどけっ、ただの精液便所の分際でなぁ、人様みてぇにしゃべるんじゃねぇよっ」

ばちんばちんと寒空に肉を叩く音が響く。
ジュールは必死に歯を食い縛り、口と鼻を両手で塞ぐと、今度は吐息すら漏れないよう、声だけでなく息までも殺し続けた。

淫魔であるジュールにとって、これは久しぶりの性交食事だった。
いまやめられてしまったら、次がいつになるかわからない。
彼らの気まぐれではあるものの、ジュールと性交してくれる貴重な人間だった。
明日の糧すら不安定な生活の中で、唯一与えてもらえるそれは、どんなに粗食であっても、食べずには生きていけない大事な食事だ。
どんなにひどい言葉をかけられても、どんなにひどい扱いを受けたとしても、反抗するどころか喜んで、すべてを受け入れなければならない自分はとても惨めだ。

「ああ、たまんねぇな。ホント、この穴の締め付けだけは一級品なんだよなぁ。ついつい溜まるとここにきちまう」

「ちげぇねぇ。それに、街の淫魔と違ってこいつはえらい安いしな」

「こんなちぃせぇネズミ一匹で、おれら全員の相手してくれんだもんなぁ」

げらげらと笑う三人の男たちは、ジュールのところにただ殺しただけのネズミを手土産に持ってきては、朝まで代わる代わる尻の穴を使っていくチンピラだった。
その素行の悪さを見れば、実際に見なくてもジュールにだってわかる。
街で暮らす淫魔が経営しているような高級娼館からは、間違いなく門前払いにされているはずだ。
あそこは、財布の中身だけでなく、客のすべてをしっかり見ている。
身なりも中身も壊滅的なこの男たちが、店前を歩くことはもちろん、自分たちの視界を汚すことさえ嫌うはずだ。
恐らく、徹底的に排除されて、店の近所にすら近づけないだろう。
もちろん、普通の人間が経営する娼館でも、相当嫌われていると思う。
三人の男たちからは、いつも汗やら何やらの入り混じった悪臭がしている。
つんと鼻を刺激するその臭いに加えて、ただ強いだけの安酒でしたたかに酔っては暴力をふるうこともある。
ついでに、容姿もふるわない上に金もないとくれば、好かれる要素はどこにもない。
もしかしたら、娼館街をぐるりと囲む門すら通してもらえないのかもしれない。
そうでなければ、性交するためにわざわざ街から外に出て、一番寂れた北の森に住むジュールのところになどくるわけがないのだから。

「やっぱ、淫魔は淫魔でも、こいつは出来損ないなんだろうよ。尻尾は鹿みてぇ短けぇし、体なんかまるっきり男だもんよ」

尻の穴の上で、ぴんと立っている尻尾を握られ、好き勝手に倒される。
淫魔の尻尾は、剥き出しの陰茎と同じくらい敏感で繊細なものなのに、その扱いはひどいものだ。
ものすごく痛くて泣きたくなったが、ジュールはやっぱり必死に堪えた。

「バカみてぇに酔っぱらってもなきゃ、試そうとも思えねぇ厳ついおっさんだしな」

「そのおかげで、使えるケツ穴だってわかったんだ。もうけもんだろ」
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