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ティロドミアの街
ティロドミアの街 8
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身支度を整え、外に出てみると馬車は建物の中にあった。
そこかしこできちんとした身形のスタッフたちが、馬車から外した馬の世話や預けられた馬車を磨いているのが見える。
なるほど、高級な宿ともなると、馬車の手入れもしっかりとしてくれるようだとひとりごちる。
以前護衛として同行した大商人と呼ばれるスワロン商会御用達の宿ですら、ここまで手厚いメンテナンスはしていなかったことを思えば、どうやら、自分では泊まろうと考えることさえしないレベルの高級宿にいるようだ。
領主の馬車はいつの間にか、今日の宿泊予定地に到着していたらしい。
働くスタッフがさまざまな肌色をしているのを見て、ここがすでにティロドミアの街の中だと知った。
大きな港を抱えるティロドミアの街では、さまざまな地方から人が働きにきているため肌色だけでなく、多様な人種を見ることができる。
領主はここから海路を使って王都に向かうと言っていたから、予定通りなのだろう。
「なんだ。もしかして、とっくにティロドミアに入ってたのか」
「ええ。泊まる宿は決めてありましたので、私が出てくるまでは馬車を開けないように命じておきました。最後までゆっくり楽しめてよかったでしょう?」
「……全部、お前の手のひらってやつか。まあ、そうだな。楽しかったぜ、ジョシュ。また、遊んでくれ」
「ええ。また、どこかで遊びましょう」
『どこか』の部分に『壁穴屋』で、という意味をのせて笑う領主に笑い返す。
「おう、またな」
領主と別れた俺は、どこか探るような視線を向けてくるスタッフから逃げるように、そそくさとその宿をあとにした。
宿の外に出ると、すでに日が暮れていて、薄闇の帳がおりていた。
いつもなら、どこかに宿を取るところなのだが、ちんぽに嵌められた魔道具のことがあるので、このまま朝まで過ごせそうな壁穴屋を探しにいく。
駄目なら、何軒かハシゴしてもいいだろう。
何せ、これが外れるまで、俺はケツイキし続けなければならないのだから。
船着き場に程近い酒場へ、ふらりと足を踏み入れる。
賑やかに酒を酌み交わす客たちは、過酷な船旅を越えてきた猛者ばかりで、俺と同じかそれ以上に屈強そうな男が多く見られた。
優男に好き勝手犯されるのも興奮するが、屈強な男たちに穴だけを使われるのもたまらなく好きだ。
ここの壁穴屋はどうだろうかと、札の代わりに置かれたコインを確かめる。
片面には、空っぽの花瓶が書かれていた。
そして、それをひっくり返せば、十二枚の花びらを持つ美しい花。
飯を食いながら、悪くないなと思う。
この『花瓶』が『壁』で、『花』が『穴』を示しているのだろう。
よく見れば、花びらは丸く並んだちんぽにしか見えないし、花瓶も口の部分がぽってりと膨れたケツ穴にしか見えない。
下品な意匠だが、とてもわかりやすい。
とりあえず、はち切れそうな筋肉とちんぽのでかそうな男たちが、机に置かれたそのコインを見ながらげらげらと笑っているのを見て下に降りることを決めた。
この下品なコインに興味を持ったのなら、きっと下に降りるだろうと予想して。
そのまま、食事を終え、コインを手にして外に出る。
暗闇に紛れてフードをかぶり直し、酒場の裏口から階段を降りて壁穴屋へ向かった。
狭い階段を下りていくと、突き当たりに受付がある。
受付といっても、壁に小さな窓がついたような簡単なもので、互いにコインを差し出す手くらいしか確認できない。
俺は花瓶が書かれた面を上にして、受付に差し出す。
しわくちゃな手が、俺の差し出したコインを受け取ると、そのまま壁の向こうへと消えていった。
「うちじゃあ、花瓶は据え置きなんだ。飾る花は選べないが、かまわんかね?」
しわがれた声に、この店では花瓶になるなら身動きも許されず、相手も選べずにただ犯されるだけの店だと告げられ、思わず期待したケツ穴がきゅんきゅんと疼いた。
どうやら、いまの俺にぴったりの店らしい。
「ああ。花瓶は、花を飾ってこそだろう。飾ってもらえるなら、どんな花でもかまわない」
「そうかい。それは、花束でもいいのかね?」
もちろん、それでかまわないと返せば、今度は複数のちんぽを入れられてもかまわないのかと確認される。
ますます高まる期待に、ちんぽがよだれを垂らし、それを吸ったヴァルミルガがぞりっと動いた。
相手が俺のちんぽに興味を持たなくても、興奮するだけでも小便穴が責め立てられるように計算された仕掛けだ。
「ッ……ああ。好きなように、花瓶に、飾れるだけ飾ってくれ」
「そうかい、そうかい。それなら、その花瓶は、特等席に置いてやろうかね。今日は、花瓶が少なくて、花がたっぷり余っていたところだったんだ。それじゃあ、右の入口から入りな。一番奥に特等席が用意してあるから、好きなだけ花瓶を飾っておくといい。壊されるのが嫌なら、もう少し手前でもかまわないよ。うちの花は、少し乱暴ものが多いからね」
「いや、特等席がいい。いろいろな花を試してみないと、花瓶もよさがわからないだろう?」
「そうかい。そんなにいい花瓶なら、きっとみんなが試してみたくなるだろうね。うちの花はおしゃべりが好きなものも多いから、いい花瓶ならすぐにいろんな花が試しにくると思うよ。壊されないように気をつけて」
「そう簡単には壊れないと思うけどな」
「丈夫ならそれでいいさ。ああ、もし花瓶が壊れても、うちでは弁償しないからね」
「わかってるさ」
差し出された鍵を受け取り、奥を目指す。
思わず唾を飲み込んだごくりという音が、相手に聞こえていないことを願った。
そこかしこできちんとした身形のスタッフたちが、馬車から外した馬の世話や預けられた馬車を磨いているのが見える。
なるほど、高級な宿ともなると、馬車の手入れもしっかりとしてくれるようだとひとりごちる。
以前護衛として同行した大商人と呼ばれるスワロン商会御用達の宿ですら、ここまで手厚いメンテナンスはしていなかったことを思えば、どうやら、自分では泊まろうと考えることさえしないレベルの高級宿にいるようだ。
領主の馬車はいつの間にか、今日の宿泊予定地に到着していたらしい。
働くスタッフがさまざまな肌色をしているのを見て、ここがすでにティロドミアの街の中だと知った。
大きな港を抱えるティロドミアの街では、さまざまな地方から人が働きにきているため肌色だけでなく、多様な人種を見ることができる。
領主はここから海路を使って王都に向かうと言っていたから、予定通りなのだろう。
「なんだ。もしかして、とっくにティロドミアに入ってたのか」
「ええ。泊まる宿は決めてありましたので、私が出てくるまでは馬車を開けないように命じておきました。最後までゆっくり楽しめてよかったでしょう?」
「……全部、お前の手のひらってやつか。まあ、そうだな。楽しかったぜ、ジョシュ。また、遊んでくれ」
「ええ。また、どこかで遊びましょう」
『どこか』の部分に『壁穴屋』で、という意味をのせて笑う領主に笑い返す。
「おう、またな」
領主と別れた俺は、どこか探るような視線を向けてくるスタッフから逃げるように、そそくさとその宿をあとにした。
宿の外に出ると、すでに日が暮れていて、薄闇の帳がおりていた。
いつもなら、どこかに宿を取るところなのだが、ちんぽに嵌められた魔道具のことがあるので、このまま朝まで過ごせそうな壁穴屋を探しにいく。
駄目なら、何軒かハシゴしてもいいだろう。
何せ、これが外れるまで、俺はケツイキし続けなければならないのだから。
船着き場に程近い酒場へ、ふらりと足を踏み入れる。
賑やかに酒を酌み交わす客たちは、過酷な船旅を越えてきた猛者ばかりで、俺と同じかそれ以上に屈強そうな男が多く見られた。
優男に好き勝手犯されるのも興奮するが、屈強な男たちに穴だけを使われるのもたまらなく好きだ。
ここの壁穴屋はどうだろうかと、札の代わりに置かれたコインを確かめる。
片面には、空っぽの花瓶が書かれていた。
そして、それをひっくり返せば、十二枚の花びらを持つ美しい花。
飯を食いながら、悪くないなと思う。
この『花瓶』が『壁』で、『花』が『穴』を示しているのだろう。
よく見れば、花びらは丸く並んだちんぽにしか見えないし、花瓶も口の部分がぽってりと膨れたケツ穴にしか見えない。
下品な意匠だが、とてもわかりやすい。
とりあえず、はち切れそうな筋肉とちんぽのでかそうな男たちが、机に置かれたそのコインを見ながらげらげらと笑っているのを見て下に降りることを決めた。
この下品なコインに興味を持ったのなら、きっと下に降りるだろうと予想して。
そのまま、食事を終え、コインを手にして外に出る。
暗闇に紛れてフードをかぶり直し、酒場の裏口から階段を降りて壁穴屋へ向かった。
狭い階段を下りていくと、突き当たりに受付がある。
受付といっても、壁に小さな窓がついたような簡単なもので、互いにコインを差し出す手くらいしか確認できない。
俺は花瓶が書かれた面を上にして、受付に差し出す。
しわくちゃな手が、俺の差し出したコインを受け取ると、そのまま壁の向こうへと消えていった。
「うちじゃあ、花瓶は据え置きなんだ。飾る花は選べないが、かまわんかね?」
しわがれた声に、この店では花瓶になるなら身動きも許されず、相手も選べずにただ犯されるだけの店だと告げられ、思わず期待したケツ穴がきゅんきゅんと疼いた。
どうやら、いまの俺にぴったりの店らしい。
「ああ。花瓶は、花を飾ってこそだろう。飾ってもらえるなら、どんな花でもかまわない」
「そうかい。それは、花束でもいいのかね?」
もちろん、それでかまわないと返せば、今度は複数のちんぽを入れられてもかまわないのかと確認される。
ますます高まる期待に、ちんぽがよだれを垂らし、それを吸ったヴァルミルガがぞりっと動いた。
相手が俺のちんぽに興味を持たなくても、興奮するだけでも小便穴が責め立てられるように計算された仕掛けだ。
「ッ……ああ。好きなように、花瓶に、飾れるだけ飾ってくれ」
「そうかい、そうかい。それなら、その花瓶は、特等席に置いてやろうかね。今日は、花瓶が少なくて、花がたっぷり余っていたところだったんだ。それじゃあ、右の入口から入りな。一番奥に特等席が用意してあるから、好きなだけ花瓶を飾っておくといい。壊されるのが嫌なら、もう少し手前でもかまわないよ。うちの花は、少し乱暴ものが多いからね」
「いや、特等席がいい。いろいろな花を試してみないと、花瓶もよさがわからないだろう?」
「そうかい。そんなにいい花瓶なら、きっとみんなが試してみたくなるだろうね。うちの花はおしゃべりが好きなものも多いから、いい花瓶ならすぐにいろんな花が試しにくると思うよ。壊されないように気をつけて」
「そう簡単には壊れないと思うけどな」
「丈夫ならそれでいいさ。ああ、もし花瓶が壊れても、うちでは弁償しないからね」
「わかってるさ」
差し出された鍵を受け取り、奥を目指す。
思わず唾を飲み込んだごくりという音が、相手に聞こえていないことを願った。
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