大酒飲みは虎になったことを忘れてしまう

うしお

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106、艶満ラバーズ

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サラリーマンのネクタイがゆれている。
透かしの穴より少しだけ高いところにある頭が、急にぐっと沈みこんだ。
まるでおれたちを覗き込むかのように。
それだけで、体がぞくりと震えあがる。

「ああ、くそっ、そっちにばっか集中してんじゃねぇぞッ、お前は、俺のもんだろうがッッ」

苛立たしげなオヤジが、目の前の壁にどんっとこぶしを叩きつけるのと、おれの体が壁に押しつけられるのは同時だった。
目の前にあるざらついた透かしブロックとは、どうやったって結び付きそうもない固くつるりとした感触がおれの頬を歪ませる。
壁にすがりついたおれの右腕を、オヤジが掴んで、そのまま壁に押しつけた。
少しだけ吊りあがったおれの体に、オヤジの腕がぐるりと絡みつく。

その直後、聞こえてきたのは、苦しそうに嘔吐する男の声。
すぐそこにいるはずなのに、どこか遠くから聞こえている気がした。
だが、いまのおれには、そんなことはどうでもいい。

「お゛、お゛や゛ッッ、ん゛っ、ん゛、ふっ、ふぐぅう゛う゛ッッ」

巻きついてきたオヤジの手が、おれに後ろを振り向かせた。
すぐに唇を塞ぎにきたオヤジが、きつく抱き締めたおれをがんがんと容赦なく突き上げてくる。
壁に当たる膝が痛んだが、そんなのはすぐにどうでもよくなった。
オヤジが、おれに夢中になってくれている。
それ以外に重要なことなんて何もなかった。

もうすでに、オヤジがくれる快感は、おれからしたらとっくにキャパオーバーの領域に達している。
だけどオヤジは、そこからさらにおれのちんぽを扱くという暴挙に出た。
カテーテルを咥え込んだ尿道が、外と中から押し潰されておかしくなる。
手袋から解放されたカテーテルの荒ぶりようはものすごく、おれの太ももだけじゃなくて、目の前の壁やオヤジにもびしっびしっとぶつかっているようで、膀胱の中まで振動がやってきて犯されてしまう。
膀胱の中に詰め込まれていたいくらもどきのローションゼリーが、おれたちを忘れるなとばかりに激しく擦れて肉襞を狂わせにくる。
よくもまあここまで詰め込まれたいくらもどきを、いままで忘れていられたものだ。
しかし、思い出してしまえば、このぱんぱんに詰められたいくらもどきを、早く出したくなってしまうというもの。
このいくらもどきには、溶けてローションになる以外に厄介な仕掛けがある。
いまはまだ大丈夫そうだけれど、いくらもどきの外側の膜が溶けたら、おれの膀胱はもっとひどいことになってしまうだろう。
その瞬間を想像するだけで、おかしくなってしまいそうだ。

「ん゛ふぅッッ、ふ、ふぐぅッッ、う゛、ぶッッ、ん゛む゛、ふぅう゛う゛ッッ」

前も後ろもものすごく気持ちよくて、もう止めてくれと叫んでしまいたいのに、激しく絡むオヤジの舌がそれを許してくれない。
でも、許されなくてよかったのかもしれない。
オヤジがくれる快感だけで、おれの中が満たされていく。
それは、とても幸せなことだった。

上も下もオヤジでいっぱいにされる気持ちよさは、もう知っていることのはずだったのに、ちんぽまで扱かれてしまったら、もうまるっきり別物だった。
おれの体は、獣になったオヤジに全部食べられている気がする。
どこもかしこも、おれがおれでいられなくなるくらいぐずぐずに蕩かされて、まるごと全部飲み込まれてしまう。

「お前は、もう俺だけのもんだからな。絶対に、忘れんじゃねぇぞ」

「あ゛ぁあ゛あ゛ぁあ゛あ゛ッッ」

嵐のような快感の中で聞こえたその声は、どこまでもどこまでも深く深く沈み込んで、誰の手も届かないところに突き刺さる。
きっと一生抜けない棘のように、おれのことを縛りつけてくれるオヤジの声。
こんなに嬉しいことを、忘れられるわけがない。
きゅんきゅんと締め付けられる胸とアナルが、おれの心も体も、とっくにオヤジだけのものだと叫んでいる。
答えさせてくれるなら、おれは何度だって言葉にしてみせるだろう。
だけど、いまのおれには答える余裕なんてない。
そんな余裕は、全部オヤジに奪われてしまっているからだ。
でも、こんな風に答える余裕すらくれる気のない鬼畜なオヤジが、おれは好きで好きでたまらなかった。

「ぅおッッ、きつッッ、くっ、そ、またマンコでねだりやがってッッ、わかってるよ、っんなに、ねだらなくてもなぁっ、たっぷり中に出してやるよッッ、おら、出るっ、出るぞっ、淫乱マンコで、全部飲み込めッッ」

それに、言葉になんてできなくても、おれの体は正直だから、黙っていたっておれの気持ちはオヤジにちゃんと伝わるのだろう。
オヤジが激しくラストスパートを決めにくる。

「ん゛ぉッッ、お゛ッッ、お゛っ、あ゛ッッ、あ゛あ゛ッッ」

ぎゅうっと強く抱き締められた。
おれの一番深いところに、オヤジの精液が注がれてくる。
それまで激しく荒ぶっていたオヤジのちんぽが、おれの中で甘えるみたいにびくりびくりと脈打っていた。
それだけでもう、おれのアナルは嬉しさを堪えきれずに、オヤジのちんぽに絡みついて甘イキを繰り返している。
もっと、もっとおれを満たしてとおねだりするみたいに。

新しく注がれる熱い奔流は、おれのすべてを焼き尽くしていく。
どろどろに蕩けて、もう元になんて戻れそうにない。

「あ゛ぁ……っ、いっぱい、れてぅ……っ、はぁ……あぁっ、ぅえひぃ……っ」

壁とオヤジに挟まれたまま、逃げ場のない絶頂に体を震わせる。

「はぁ……っ、やっぱ、お前の中は最高だな」

とろんと蕩けたおれを抱き締め直し、オヤジが優しくキスしてくれる。
満足そうな溜め息と、囁くようなその声におれの中は満たされていく。
だけど、オヤジの腰はまだゆるやかにゆれていて、最後の一滴までおれの中に注ごうとしているようだった。
ぐちゅりぐちゅりといやらしくかき混ぜられる音が、静かな夜に響いている。

「残念だったな、お客さんはお帰りみたいだ」

「ん、ぅ……っ、おきゃ……?」

「ああ、いい。わかんねぇなら、忘れとけ。……ったく、人ん家の前で吐きやがって」

「おやひぃ……っ、もっと、ちゅぅ……ひぇ」

壁を睨み付けながら、ぶつぶつと呟くオヤジにおねだりする。
おれの全部がオヤジのものなら、オヤジの全部はおれにくれなきゃ駄目だ。

「おう、いくらでもしてやるよ」

だって、オヤジはおれの恋人なんだから。
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