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46、逆しまアクター

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「…………へぇ、そんな、夢を……」

おれはいま、ものすごく嫌な汗をかいている。
オヤジが買っていた同じ男優が主演のAVに嫉妬して、無理矢理やったイラマチオを失敗したからじゃない。
たったいま聞かされたオヤジの見たという夢のほとんどが、オヤジが酔っ払ってるのをいいことにおれがしてきた悪行の数々だったという事実に、だ。
酔っ払ったオヤジの記憶は、全部キレイに消えたわけじゃなかった、らしい。
これは、困ったことになってしまった。

オヤジに告白したおれは、まさかノーマルなはずのオヤジに受け入れてもらえるとは思ってなかった。
それこそ、相手は実のオヤジだ。
完全に当たって砕かれるつもりで好きだと言ったのに引かれるどころか、俺も好きだと返してもらえる奇跡が起きるだなんて、誰が想像できるだろうか。
そこからのおれは幸せすぎて怖いくらいだった。
風呂の中でオヤジが好きなんだって告白して、オヤジからも好きだって言ってもらって有頂天になり、逆上せるくらいたくさんキスをした。
ついさっきなんか、セックスするみたいに腰を振るオヤジに、ちんぽ同士を擦りあわされて一緒にイかされたりもした。
オヤジもかなりノリノリで、おれと親子だってことも、男同士だってことも、おれたちにとってマイナスにはならないのだと安心していた。

そのあと、おれがセックスしたいとおねだりしたところまではよかったのだ。
イキまくったおれの精液で濡れたアナルに、オヤジのちんぽがちょっと入ったり、何故かオヤジの目の前でアナニーさせられることが決まったりしたが、オヤジといちゃいちゃできたおれは幸せだった。
ただ、いざオヤジの上でアナニーをするとなった時に、おれが立ち上がると、イかされすぎたおれがぶちまけまくった精液が、下で寝ているオヤジの体にべっとりとついていて、ものすごいことになっていたのだ。
さすがに、そのまま続けようとはならず、一回綺麗にしておこうということになった。
おかげで、おれはさりげなくシャワーを浴びに行くことができたし、しっかり腹の中まで洗うことができた。
オヤジがこんなに乗り気になってくれているのに、万が一にも不快な思いをさせて、きっとあるだろう二度目以降のチャンスを不意にしたくなかった。
一時的にとはいえオヤジから離れることで、せっかくの雰囲気が少し間延びしてしまう気もしたが、結果オーライだったと思う。
だってオヤジは、バスタオルを交換しているおれをガン見して、ちんぽを萎えさせるどころか、思いきり勃起させていたから。
この分なら、間違いなく続けてもらえそうなので、大丈夫だろうと思っていた。
それに、オヤジは一発で終わるような人じゃないから、心配するとしたらおれのアナルの無事かもしれない。
ふにゃる要素ゼロの起きてるオヤジの勃起ちんぽで、思いきりピストンされたりなんかしたら、どうなってしまうのか想像もつかなかった。
それでも、いまさらセックスしないなんて言うつもりはなくて、どうしても期待にひくついてしまうアナルをタオルで隠しながら、おれは準備を進めていたのだ。

さすがに、セックスするならローションぐらいは欲しいな、とオヤジに家にあるのか聞いてみれば、つい最近買ったなんて聞かされて。
それってどういうことだろうと思っていたら、例の段ボールの中身に驚かされた。
オナホが入っているんだろうなと想像していた箱の中には、ちょっとおれに顔が似てるような気がする男優主演のAVが軽く数えても十枚以上とアナル用の大きなローションボトルが六本、さらにはリアルな尻型のアナルオナホまでが入っていた。
どんなAVなのかと確認してみれば、義理の親子設定の鬼畜調教ものやイラマチオ特化の輪姦ものだけでなく、ビッチな息子がオヤジを襲う逆レイプものなんてのもあった。
呼び方は、いろいろでオーソドックスにとうさんだったり、義父おとうさんってものや、おれと同じくオヤジなんて呼ぶのもあって、極めつけにはパパときた。
あまりにもそういうシチュエーションのものが多すぎて、もしかして、これと同じことをやらせたくて、おれと付き合うことにしたんじゃないかと疑ってしまった。
そんなにやらせたかったなら、やってやるよとおれはイラマチオにチャレンジしたんだけれど、オヤジの反応は、思っていたものとは違いすぎた。
がんばっても、がんばっても、悦んでもらえない。
気持ちよさそうに見えることはあっても、オヤジはおれを褒めてはくれなかった。
何度、誤解だと言われても、何が誤解なのかわからなくて、半分以上自棄になって、下手くそなイラマチオを繰り返した。
おれがどんなにがんばったとしても、きっとあの男優のようにはうまくできないんだろうってことが何よりも悔しかった。
遂には、お前とはセックスしないなんて言われてしまい、あの男優に嫉妬していたことまで指摘されてしまったおれは、とうとう涙が溢れて止まらなくなった。
そして、その嫉妬が全く無意味なものだってことを、オヤジは丁寧に説明してくれたのだ。
隠していたおれの罪とともに。
本気で夢だったと思っているらしいオヤジに、おれは現実ほんとうのことを話せなかった。
もし、それが夢じゃなかったと知っていたら、おれのことを好きにはなってくれなかったんじゃないかと思うと怖くて言えなかった。

「まあ、そんなわけでよ。俺は、夢に見るぐらい野郎のケツに興味があったのかと思って、いろいろ試したりしたってぇわけだ。おかげで、誰でもいいってわけじゃねぇって気が付いてよ。俺は、野郎のケツっていうか、お前に興味があんじゃねぇかってな。ほら、あいつは顔がよ、ちょっと近いっつうか、なんつうか……まあ、その、似てんなぁってなってだなぁ」

ちらちらとおれの顔を見ながら、オヤジが言いにくそうに言う姿を見て、なんというか驚いているという感想しかもてない。
他の男優のものも見た上で、おれに似てるっていうあの男優を選んだってことに。
もしかすると、ただの刷り込みなのかもしれないけれど、ちゃんと選んでもらえたってことが嬉しくて信じられなかった。

「……それじゃあ、本当に、おれに似てるから、あの男優のAVをあんなにいっぱい買ったのかよ……?」

「……いっぱいって程じゃねぇだろ」

おれが思わず聞き返せば、耳まで真っ赤にしたオヤジがぼそっと呟くように言う。
いやいや、オヤジのいっぱいが何枚からかなんてわからないけれど、あれは少なくともいっぱいと呼んで差し支えのない枚数だ。

「いや、十枚以上あるんだから、これはいっぱい、だろ」

「……んなに、買ってたか」

「そうだな、買ってるみたいだぞ」

「…………おぅ、そか」

ぼそぼそっと恥ずかしそうに付け加えるオヤジが可愛い、と思ってしまった。
なんというか、おれってやつは現金なもので、気付いてしまったある事実に、思わずによによとしてしまう。

「なぁ、オヤジ。それじゃあ、さ。そんなに前から、オヤジはおれとセックスしたいって思ってくれてたってことだよな?」

「…………まぁ、そういうことになるな」

「じゃあ、さ。オヤジから見て、いまのおれってどんな顔? まだ、つまんない顔してる?」

「……もう、してねぇよ」

おれの顔をちらっと見たオヤジが、ほわっとやわらかく笑う。
それがなんだか嬉しくて、抱きついてキスをした。

「それじゃあ、続きをしてもいいってことだよな? ……オヤジ。今度こそ、おれとセックスしよ……?」
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