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29、遊湯リラックス

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「オヤジ、大丈夫か? おれに、つかまれるか?」

湯船の縁まで椅子を寄せ、手すりを頼りに立ち上がっている俺に向かって、息子が大きく腕をひろげる。
小さい頃に、ジャングルジムから降りれなくなった息子に向かって、似たようなことを言った記憶がよみがえった。
あの頃、軽々と抱き上げていた息子に、俺の方が支えられる日が来るなんて、時の流れとは早いものだ。

「重かったら言えよ。別に湯船につからなくったって、死にやしねぇんだから」

「わかってるよ。無理はしないから、そんなに気にしなくていいよ。それに、ほら、これがあるから大丈夫だよ」

いま、息子の腕には、長くて黒い革手袋のようなものがついている。
せっかく借りてきたのに忘れていたと、濡れた服を脱いで戻ってきた息子が、身に付けてきた。
サポートスキンと呼ばれるそれは、すごく長い手袋のようで、手首用のサポーターに似た親指を出す穴がついた手のひら部分からはじまり、ずっと肩の上まで包み込むようになっている。
左右の袖はそのまま後ろまでのびていて、背中の部分でひとつに繋がっているようだった。
着用者の筋肉を補助してくれる補助用具というやつで、再成医療技術を応用しているらしく、これをつければどんな細腕の男でも、大人一人を軽々と抱えられるくらいのパワーが出せるようになるらしい。
それなりに鍛えているのか、まあまあな体をしている息子でも、俺くらいでかいオヤジを簡単に抱っこできるようになるってことだ。
医学の進歩っていうものはすげぇなぁと感心するが、いかんせん別のことばかりが気になっちまう。
なんというか革の質感といい、デザインといい、ショルダーハーネスといった感じで、自分の息子ながら、何とも言えないエロさを感じてしまう。
ハーネスやらボンテージやらを身に付けた体ってのは、普通の全裸が持つオープンなエロさとは違って、イケナイもんを見ているみたいな、ぞくぞくするような色気がある。
絶対に違うってわかっているのに、ちらりと見える黒いレザーに、アームバインダーを連想してぞくりと震えた。
うっかり、真っ黒なレザースーツを着せられて、全身をがっちがちに拘束されたあの男優が、チンポとケツ穴だけを剥き出しにされ、電池切れの心配がない有線バイブを突っ込まれたままひたすらイきまくる、四十八時間耐久連続前立腺アクメなんてキャッチコピーのめちゃくちゃエロい動画を思い出しちまった。
ああ、クソ、余計なことを考えちまった。
またチンポが元気になってやがる。
勃起が息子にぶつからないよう、必死で腰を引いた。

息子に支えられながら、無事な方の足から湯船に入る。
踏ん張れる方が中に入ってしまえば、あと残ったは片足を浮かせて湯船に入れるだけなので、そう難しいことではない。
まあ、足どころかほぼ体が浮いていたので、完全に息子に抱っこされていたようなものだが、深くは考えない。

「もっと体重かけても大丈夫だから、気をつけてしゃがめよ」

背後から腕を通し、まるで羽交い締めにしているみたいな息子に助けてもらいながら、湯船の中で膝を曲げる。
これも、体が浮いているから楽にできる。
補助用具様々だ。

「にしても、すげぇ手袋だよなぁ」

「本当にすごいよ。こうしてても、オヤジの体重すら感じないんだから。だから、こんなこともしようと思えばできちゃうんだ」

こんなこと、の声と共に、体がふわりと浮き上がる。
気が付けば、俺は息子の腕の中で、横抱きにされていた。
いわゆる、お姫様抱っこだ。

「お、おまっ、なんっ、これ」

「あ、落としたら困るから、暴れないでくれよ」

思わず、目の前にあった息子の首にしがみついて、身動きが取れなくなった。
信じられないことだが、本当に俺の体は宙に浮いていた。

「ちょっと、抱え直すよ」

「あっ、おいっ」

体が軽く浮いたと思ったら、片方の腕の上に座らされている。
まるで、親子が逆転しちまったみたいだ。

「これなら、行けるかな」

息子は俺を抱えたまま、浴槽の縁に手をかけてしゃがみこむと、足をのばして座り込んだ。
びっくりして丸まっていた体をくるりとまわされ、気が付けば、俺も息子の体を背もたれにするようにしてお湯につかっていた。

「……お前なぁ、やるんならやるで、ちゃんと説明しろ。危ねぇじゃねぇか」

「うん、ごめん。でも、これ本当にすごいんだ。つい試したくなっちゃってさ」

「へぇ、そうなのかよ」

俺好みのちょいと熱めの風呂につかって、でっけぇため息を吐いちまえば、恥ずかしさやら怒りやらはみんな湯の中に溶けていく。
サポートスキンのすごさを楽しそうに語る息子に、試しに体の力を抜いて全身を預けてみても、俺を抱える息子の腕はびくともしない。

「こりゃ、本当にすげぇな」
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