大酒飲みは虎になったことを忘れてしまう

うしお

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27、混乱フィックス

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ちょっと待ってて、と足から引っこ抜いたパジャマを持って出ていった息子が、何やら椅子のようなものを運んできた。
椅子と呼ぶにはスカスカで、ほとんど枠だけのそれは不良品にしか見えない。

「なんだ、これ?」

「お風呂介助用の椅子だって。座ったままでも、体を洗えるんだってさ」

そう言われて、見た目で不良品と決めつけた椅子をよくよく見てみれば、なるほどと思う工夫がされている。
ケツをのせる座面こそ最小限しかないが、そのまわりを丈夫そうなパイプでできた骨組みがぐるりと取り囲み、座った人間の足やら腕やらを支える仕組みのようだった。
座ってちょうどいい高さに肘掛けがあり、その真上には立った時に掴む用の手摺のようなものがついている。
不格好ではあるものの、求められるだろう要求を満たすであろう工夫に満ちていた。

「へえ、おもしれぇもんがあるもんだな」

「いろいろ大変だろうからって、先生に勧められたんだよ。それじゃ、こっちに移動させるよ」

「おう、頼むわ」

息子に抱えられて、座り込んでいた床から椅子の上へと体を移す。
若干、ケツがはみ出ている感じはするが、体格のいい俺でも安心して座れる頑丈さに、思わずなるほどと唸ってしまう。
手が使えたなら、もっといろいろと見てみたいところだったが、あいにくいまの俺にできることはない。

「オヤジ、いまからお湯をためるから。先に、体を洗っておこうよ」

とりあえず、見える範囲を確かめていると、息子がボディタオルを手に近付いてきた。

「オヤジ、まだこんな硬いやつを使ってるの? あまり硬いやつだと、肌が傷付いてよくないって話だよ」

俺が愛用しているナイロン製のボディタオルで、ボディソープをくしゅくしゅと泡立てながら、息子が呆れたように言う。

「別に、いいじゃねぇか。俺みてぇなどこにでもいるむさいオヤジの肌なんざ、誰も気にしてねぇよ。ましてや、本当に傷がついたところで、困るやつもいねぇだろ。それによぉ、今どきの柔っこいタオルで体を洗ってもな、なんかこうすっきりしねぇんだよ。体をあらうとなりゃ、やっぱり昔っからやってるみてぇに、こうガシガシっとやんねぇとダメな気がすんだよなぁ」

「まあ、なんとなく言いたいことはわかるけどね。今日からしばらくは、我慢してもらうよ。小さな傷から雑菌が入ることもあるんだから、ちゃんと治るまではこれはお預けだからね」

「しょうがねぇな。……ん? そんじゃ、お前はどうやって俺を洗うつもりなんだ?」

「どうやって、って、それは普通に手洗いさせてもらうつもりだけど?」

「……は? 手洗い?」

「それじゃ、首から洗うね」

よく泡立てられ、むっちりとした泡が肌の上を優しくすべっていく。
その中で、体を軽く揉むように撫でる十本の指に、思わず背筋がぞくりとした。
悪寒ではあり得ない、チンポにぎゅんっと血が集まるような感覚に思わず焦る。

「おわッ」

「ちょっ、なんだよ、オヤジ。いきなり動かないでくれよ。おれまで泡まみれになっちゃうだろ」

「わ、悪ぃ、ちょっとくすぐったくてよぉ。もうちょい、力、入れてくれよ。あんまりそっと撫でられたんじゃ、くすぐったくてたまんねぇや」

「わかったよ。けど、いきなり動くのはやめてくれよ?」

どう聞いても下手くそな俺の誤魔化しにも、息子は特に追及するようなこともなく、指先に力をこめてくれた。
普通のマッサージのような気持ちよさのそれに、内心でほっとため息をつく。
さっき、勃起しそうになった気がしたが、あれは気の迷いだろう。
息子に体を撫でられて勃起するなんざ、どうかしてる。
ついさっき、夢精しちまったくらいだ。
どうしようもねぇ俺の体は、溜まりすぎておかしくなっちまってるんだろう。
とにかく、さっさと洗ってもらって、風呂に入ったら、とりあえず寝ちまうしかねぇだろう。
またやらかすんじゃないかという不安はあるが、そんなことを考えていたら、おちおち眠ってもいられない。
いまはなるようにしかならない、と息子の手に体を委ねた。

「お、おいっ、ちょっと待て、お前、どこを洗う気だっ」

「どこって……見ればわかるだろ?」

息子の手は、俺の首から耳の後ろを通って背中に抜けたあと、左右の腕をそれぞれ包帯ぎりぎりまでを丁寧に包み込んで、そのまま前へと流れていった。
今度は、あごの下からはじまり、鎖骨や胸を通り抜けると、脇の下や脇腹みたいなくすぐったいところはささっと通り過ぎていった。
そして、おもむろに俺の前で膝をついた息子が、泡だらけの手をのばしてきたのは、いま一番危険なスポットである股間エリアだった。

「そ、そんなとこ、シャワーでもぶっかけときゃ綺麗になるんだから、別に手で洗わなくていいっ」

「……何、言ってるんだよ。こういうところが一番汚れるんだから、しっかり洗わないとダメに決まってるだろ」

「べ、別に、ちょっとくらい洗わなくたってよ」

「あのさぁ、何を心配してるのか知らないけどさ。さっきも言った通り、男同士なんだから気にすることなんてないだろ。できるだけ早く終わらせるから、おとなしく座っててよ」

そこから俺は、間違っても勃起をしないよう必死に耐え続けた。
心の中でうろ覚えの念仏を唱え、歌詞のあやふやな童謡を歌い、萎えそうなババアの顔さえ思い浮かべて、となかなか厳しい戦いに身を投じた。
だが、俺のそんな努力も虚しく、きめ細やかな泡と息子の手による猛攻によって、俺のチンポは少しずつ硬さを増していく。
だって、土台無理な話なのだ。
夢精するほど溜まっているチンポを、ふわふわの泡ですべりのよくなった大きな手が隅から隅まで丁寧に撫でてくる。
亀頭やカリ首はもちろん、竿から金たまの裏までしっかりとだ。
ましてや、二つの玉を転がすように、左右の手で揉み洗いなんぞされて、勃たせるな、というのが無理な話なのだ。
チンポを直接扱かれるよりおぞましく、生命の危機と隣り合わせにある快感が、俺の体を貫いていた。
それでも、俺は、直接触られていてるせいで、全く隠しようのない硬くなっていくチンポという現実から、少しだけ逃避をしつつもこれ以上の醜態はさらさぬようにと平静だけは保とうとしていたのだ。

「…………あ、あのさ。もし、よかったらなんだけどさ。その、オヤジのこれ、辛そうだしさ。おれでよければ、その、抜こう、か……?」

だが、それすらも、そんな息子の言葉によって打ち砕かれる。
俺とチンポは、仲良く揃って頭を上げた。
そして、そこにあった恥じらうように頬を染める息子の顔で、俺のチンポは完全に勃起してしまったのだった。
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