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22、妄想ミックス

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昨日のうちに、町工場には連絡を入れた。
息子に端末を持たせ、耳に当ててもらいながら電話した。
テレビ電話でいいだろうと言ったんだが、その怪我の具合では余計に心配をかけるからと止められてしまったのだ。
事故に遭ったと言えばかなり驚かれたが、昨日の残業のおかげで修羅場のピークは抜けているとのこと。
気にせずしっかり休めとの言葉をもらった。

「なんか、俺がフラグ立てちまったみたいで悪ぃなぁ」

「バカ言うなって。あんなもんただの挨拶だろうが。誰でも言うだろ、あんくらいは」

「そうかなぁ」

「そうだろよ。ああいう状況なら、俺だって事故に気をつけろって言うぞ。ありゃ、飛び出てきた猫に驚いた俺のせいだ。おめぇのせいじゃねぇから、気にすんじゃねぇよ」

電話の終わりがけにそんなやりとりはあったものの、治ったらまたよろしくと繋ぎをつけられてよかった。
腕は元通りになるというし、それならこれまで通りに働かせてもらう場所の確保は大事だろう。
俺の電話が終わると、息子は慌ただしく家に帰ることになった。
明日、俺が帰るために必要なものを揃えておいてくれるという話だった。

「悪ぃな。よろしく頼むわ」

「うん。任せておいてよ」

有休まで使わせて申し訳ない気持ちもあったが、泣かせるほど心配をかけてしまったこともあるし、助けてもらえるのは正直ありがたかった。
何せ、両腕と右足が自由に使えないというのはなかなかに不便なのだ。

「いい息子をもって、幸せだなぁ」

その日の夜は鎮痛剤の処方がなく、ぶり返した痛みに気絶させられて寝た。
主治医からの指示という話だったが、やはり夢を見ることもなく眠れてよかった。


そうして、翌日、俺は予定通り昼前には自宅に帰されていた。

「はい、オヤジ。くち、開けて」

「……うっ」

目の前にずいっと差し出されたスプーンに、思わずたじろぐ。
のっているのは、一応、病人なのだからと用意されたたまご粥だった。
居間に敷かれた布団の上、借りてきたリクライニングマットレスによって体を起こされた俺は、すぐ真横で正座する息子に昼めしを食べさせられていた。

「オヤジが早く食べてくれないと、おれもごはんが食べられないんだけど?」

「……すまねぇ」

「謝らなくていいから。ほら、くち、早く開けて。あーん」

「うっ…………あぁ……っ」

うっすら開いた口の前までスプーンが差し出されたのを、今度は素直に口を大きく開いてぱくりと咥えた。
満足そうに頷く息子が、ちょうどいいタイミングでスプーンを引き抜くのを横目に、もぐもぐと咀嚼を開始する。
それを見て、またいそいそと次の一口を用意する息子を見ながら、どうしてこんなことになったんだ、と思わずにはいられない。

「はい、次。ほら、あーん、して」

妻の面影とまではいかないが、整った顔立ちの息子に、真剣な顔でスプーンを差し出されると恥ずかしくてたまらない。
なにより、まるで恋人のように「あーん」を要求されるとなると、体がむずむずとして仕方がなかった。

「う……っ」

「なんでそんなに嫌がるんだよ。おれに食べさせられるのがそんなに嫌?」

ため息混じりに言った息子の顔を、正面からまともに見れない。
あの男優のシチュエーションビデオなど見なければよかった、と今更ながらに後悔している。

あれは確か、裸の上に透けるように薄い白のエプロンだけをつけ、熱を出した恋人を看病する、という数あるシチュエーションの中のひとつだった。
おかゆをスプーンで掬った青年が「あーん」を要求し、画面の向こうにいる恋人、つまり視聴者を恋人に見立て優しく食べさせてくれる、というものだった。
すけすけのエプロンの襟元は広く開き、ぷっくりと腫れた乳首がちらちらと視界に入る中、スプーンを咥えさせられた恋人は思わず噎せてしまう。
乳首に夢中になりすぎたせいで、気管に入ってしまうのだ。
まあ、あんなエロいものを見せられりゃ、そりゃそうだと頷くしかない。
そして、慌てた青年が優しく寄り添って背中をさすられ、「お水、飲む?」と差し出されたコップを見事に取りそこない、うっかり溢してしまうのだ。
もちろん、お約束ってやつだ。
当然、溢れた水は青年のエプロンにかかり、びっしょりと濡らしてしまう。
ただでさえすけすけのエプロンは、青年の体にぴったりと貼り付いて、そのいやらしい体を見せつけてくる。
「俺が風邪を引いてるのに、なんだこれは?」と透け出た勃起乳首を摘まんでやれば、「ごめんなさい」と謝りながらも、青年のチンポはしっかり勃起していて、エプロンの裾をぐぐっと押し上げてくる。
そして、濡れたエプロンごしに勃起したチンポを扱いてやれば、青年はやめてと言いながら腰をいやらしく揺らしてーー。

「そ、そうじゃねぇよ。別に、嫌ってわけじゃぁねぇんだけどよぉ。その、俺ぁガキじゃねぇんだし、自分で食えねぇわけでものねぇのに、おまえに食わしてもらうってのはなんかよぉ、それに、こう……あ、あーんとか、こっ、恋人みてぇなことを、だなっ、はっ、恥ずかしいだろうが……っ」

うっかり思い出してしまった妄想を振り払い、チンポに集まりかけてる欲望を散らす。
両手が自由に使えないいま、勃起したりしたら大変なことになってしまう。

「は、はぁッ? お、オヤジっ、こっ、恋人ってっ、なっ、なに言ってっ、おっ、親子だってするだろ、そのくらいぃ……っ」

顔を真っ赤に染め、うろたえる息子にチンポがずくりと反応しかける。
あの男優の動画でばかりヌきすぎたせいで、俺はすっかり息子の顔で勃起する体になってしまったようだ。
かなりまずい事態だった。

「そ、そうだな、親子だしっ、あ、当たり前だよなっ」

「そ、そうだよ、オヤジ、変なこと言うなよなっ」

親子を強調するも、息子の「オヤジ」に「義父おとうさん」と呼んでいた男優の声が重なる。
これは、かなりの重症だ。
この怪我が治るまで、息子の世話にならなきゃいけないというのに、こんな調子で俺は大丈夫なんだろうか。

「もう、目をつぶってていいから、くちだけ開けてよ」

「お、おう」

「はい、あーん、して」

目を閉じれば、余計にあの映像がちらついて落ち着かない。
それでも無心になろうと心がけ、必死に咀嚼をし続ける。
初日からこんな調子で大丈夫なのかと不安しかない。
何せ、まだ帰ってきてから、数時間しか経っていないのだから。
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