大酒飲みは虎になったことを忘れてしまう

うしお

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17、代替セックス

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予想通り、事前にヌいておけばしっかり眠れて、夢も見ないで済むようだった。
夢精することもなくすっきりと目覚めた俺は、支度をして家を出た。
多少、腰が痛むものの、これまでに比べればどうということもない。
仕事をもらえる間は、しばらくこの作戦でいくと決めた。

昨日は、同じ動画で三回射精をした。
少し息子に似た男優の青年は、どうやらそっちの世界では売れっ子のようで、動画を探してみたらシリーズものや単発の企画ものなどいくつもの動画が見つかった。
エプロンを着けた主夫姿の男優が、荷物を届けに来た配達員に襲われてしまう『昼下がりの穣二じょうじくん』シリーズや、俺が昨日見たような数人の中年男から快楽責めにされる『乱交の森』シリーズはそれぞれ十作品以上発表されており、単発の企画ものとなると数えきれないほどだった。
俺が気に入って購入したのは、単発の企画ものをいくつかと、乱交の森シリーズのような複数を相手にしているものばかりで、その中でも特にSM色の強いものが多いようだった。
誘拐されてきた青年が、三つの穴で同時にイったら帰してやると言われ、赤いロープで縛られたまま男たちにひたすら輪姦され続ける連続絶頂ものや、産婦人科の椅子に縛りつけられ、身動きの出来ない青年が、バイブや電動マッサージ機、尿道バイブなど複数の性具で責められ続けるものなど、青年の顔が快楽に歪み、人の言葉すら忘れてしまったかのように喘ぎ続けているものを好む傾向にあった。
青年のように虐められて悦ぶのがマゾだというのならば、そのマゾをもっと虐めたいと思う俺はサドなのだろう。
では、青年が犯されて泣き叫ぶ動画を見て、その青年に息子の姿を重ねて腰を振りたくる俺は、なんなのだろうか。
その結論にたどり着くのが怖く、深く考えることが恐ろしい。

オナホ相手に六回ほどヌくことで、俺はようやく安眠を手に入れた。
いまは、そのことだけを理解していようと思う。

そうして、俺は毎日六回の射精と引き換えに平穏を取り戻したのたが、この方法にもいくつかの問題点があった。
第一に、六回は多い。
毎晩、早めに寝る支度をしているのだが、どうも射精に至るまでの時間が少しずつ増えている。
かといって、回数を減らしてしまうとあまり効果がないことは実証済みだった。
最低でもきっちり六回ヌかねばならず、その時間は日に日に早くなっている。
第二に、遅漏になっている。
早いよりはいいと思いがちだが、一回が長すぎるというのはなかなか辛い。
射精するまでひたすら腰を振り続けなければならず、それを六回分ともなればかなりの時間だ。
だんだん、腰に痛みが残るようになってきた。
なんというか、本末転倒な気がして仕方がない。
そして、最後に、息子にあわせる顔がなくなった。
すっかりズリネタとして定番した青年男優なのだが、どうにも息子にしか見えなくなってきたのだ。
つい先日、思わず購入してしまった動画は、婿入り先の田舎の家で義理の父やその親類など、妻の親戚にあたる男連中から青年が強姦されているものだった。
義父おとうさん、こんなことはやめてください、と襲われた直後は必死になって抵抗していた青年が、度重なる強姦による快楽責めに負け、妻を友人との旅行に行かせたあと、自ら服を脱ぎ捨てて男たちが待つ部屋の中に入っていくというものだった。
もちろん、そのあとはお決まりの乱交シーンである。
青年が『義父さん』と呼ぶ度に、俺は息子を犯しているという禁忌にぞくぞくと震え、いつもよりも長く、思いきり強く腰を振り続けてしまった。
その結果、オナホに穴が開いて、お湯が漏れるというハプニングに至ってしまった。

俺は、いまさら右手が恋人というつもりなどないため、新しいオナホをネットショッピングで手に入れることにしたのだが、最近の技術というのは目覚ましいもので、お湯など入れなくてもコンセントを繋げば人肌にあたたまる機能がついたものや、人工臓器技術を応用した本物そっくりのアナルオナホなど、ついつい目移りしてしまうものばかりが並んでいた。
そして、悩みに悩んだ俺が注文したものが、今日の夜、届くことになっていた。

「すまねぇ! もう終わりの時間だってわかってるんだが、ちょいと残業してってくれねぇか」

だから、もうじき終わりだと片付けはじめていたところに、済まなそうな工場主が駆け込んできたのを見た時には、何が起きているのか理解できなかった。
だが、その事情を聞いてしまえば、もう断ることなんてできるわけがなかった。
依頼主からの希望を叶えられないとなれば、小さな町工場などいつ切り捨てられてしまってもおかしくはない。
それは、俺の貴重なバイト先がなくなりかねない大事件であり、信用問題に関わることだ。
俺は仕方なく、荷物の配送時間を遅らせる手続きをする時間だけもらい、そのまま残業することにした。
それもそうだろう。
まさか、これから家にオナホが届くので予定通りに帰らせてくれ、なんてことは口が裂けても言えるわけがない。

幸いなことに、作業はとんとん拍子に進んで、どうにか約束の時間に間に合った。

「それじゃ、悪ぃけど片付けは任せるぜ」

「もちろんだよ、そんくらいは任せてくれ。それより、気をつけて帰りなよ。急ぐからって、事故なんか起こすんじゃないよ」

「おうよ、そんじゃあ、また」

今夜使うために、最速便で依頼していた。
昨日は、適当に手でヌくしかないか、と久しぶりに自分でチンポを握ったんだが、途中で疲れてしまい寝落ちした。
今朝は、息子を犯す夢を見た記憶もしっかりと残っていたし、やっぱり夢精していたパンツの中はべちょべちょだった。
明日も仕事がある以上、オナホの入手は優先事項だ。
だが、余裕をもって帰宅できる時間を指定していたはすが、残業が入ってずれてしまった。
そして、今度はずらした時間すら、ぎりぎりな時間になっている。
もともとそれほど遠くはない工場だし、いまのご時世、マスクをしてもバスに乗るのは憚られるのもあって、久しぶりに出してきたママチャリだが、タイヤがあまり大きくないせいか進みが遅い。
こりゃあ、今後のために電動自転車でも買うべきか、などと思いながらペダルをまわす俺の前に、暗闇からさっと飛び出す何か。

「うおッッ!」

慌ててハンドルを切ってそいつを避ければ、車のライトがパッとよろけた俺と固まる猫を照らし出した。
さらに慌ててハンドルを切り直すも、ガシャンッという金属のぶつかる音と共に、ふわりと感じる浮遊感。

あ、これ、もしかして、死んだか。

そう思う俺は、このあと家に届くだろうオナホがどうなるのか、とどうでもいいことを考えていた。
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