隣人

うしお

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1、煩い隣人

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就職して五年。
気が付けば、俺も立派なサラリーマン。
すっかり、くたびれたおっさんの仲間入りを果たしていた。
毎日のように仕事でへとへとになって帰る。
疲れてすぐにでも寝てしまいたいのに、寝られない日が続いていた。

隣の部屋には、大学生くらいの女の子が住んでいるらしい。
出張帰りに、静かで真面目そうな女の子と階段のところですれ違ったことがある。
駅からも少し遠くて、壁の薄いアパートは安いことしか取り柄がない。
セキュリティのセの字もないようなところに、彼女のような女の子が一人で暮らしていて大丈夫なのだろうか?
そう、思っていたのだが。

かんかんと鉄製の階段を上がり、角部屋である自宅に帰ろうとする俺の耳に、いつもの音が聞こえてくる。

『あ゛っ、あ゛あ゛っ、い゛ぐっ、い゛ぐぅっ』

ばちゅんばちゅんと濡れた肉のぶつかる音と、隠す様子もない盛大な喘ぎ声。
やっぱり、今日もか。
すっかり聞きなれてしまったそれに、ため息をひとつ。
ある意味セキュリティといってもいいくらい、古びた廊下がぎしぎしと大きな音を立てて俺の帰宅を知らせている。
隣の部屋の住人には、まるで届かないようだけれど。

「ただいまー」

『ひ……っ、ぃ、い゛っでる゛からっ、い゛っ、でっ、う゛っ、あ゛あ゛っ』

なまじ顔を知っているだけに、やけに生々しく感じられる。
この薄い壁の向こうで、あの真面目そうな子が犯され、イきまくっている姿を想像してしまう。
啼き叫ぶ声も、あの真面目そうな女の子のあげているのだと思えば、ちんこに血が集まるのを止められるわけもない。
スラックスの前はすでにぱんぱんに膨らんでいた。
玄関の鍵をかけ、とりあえずちんこを扱く。
最近、こんなことばっかりしているので、玄関にはティッシュが箱で置いてあるし、後始末用のウェットティッシュも揃っている。
会社から帰ってすぐスーツのままちんこだけを取り出して、彼女の声を聞きながら一発ヌくのが最近の日課だ。
もう何度目になるかわからない絶頂の声を聞きながら、俺は被せたティッシュの中に精液を放った。

『おらっ、休むんじゃねぇよ! せっかくイったばっかのきつきつまんこ、休ませてどうすんだよ! さっさとしろよっ』

ドスの効いた声と、がんっと何かを蹴りつけた音がして、すぐに、再び喘ぎ声が聞こえ出す。
さっきよりも必死で、どこか苦しそうにも聞こえる。
もしかして、DVというやつなのではないか?
彼女は、この男に乱暴されているのではないか?
それを判断するためだと自分に言い訳しながら、彼女の喘ぎ声に耳を澄ませる。

『い゛い゛っ、ぎも゛ぢぃ、い゛い゛ですぅっ、も゛っ、ぉっ、ひどい゛っ、ひどい゛の゛ぉっ』

俺はもう一度ちんこを握り締めた。
やはり、彼女の声は、可愛らしさは全くないが、生々しくて酷く興奮する。
俺は彼女を煩いなと思いつつも、ズリネタとしてはかなり優秀だと思っている。
ただそれが朝まで続くのが、少し難点だった。

▷▷▷

ある日の夜。
次の日が休みということもあり、同僚と少し飲んでから帰ってきた。
ふらふらと歩いていると、あの大学生が階段の下に立っている。
その足元には、大きめのスーツケースが置かれていた。

「こんばんは」

何も考えていなかったが、無視するのもどうかと思って声をかけてしまった。
もし、素面の俺がここにいたら、全力で止めていただろう。
しかし、残念なことに、ここには酔った俺しかいなかったのだ。

「あ、こんばんは……」

少し掠れたようなその声に、急にちんこがぐんっと上を向いた。
ジャケットのおかげで見えていないと思うが、本気のフル勃起だ。
これは、まずい。
この子の声でオナニーしすぎて、俺のちんこは完全にパブロフの犬状態だった。
早くいつもみたいに、気持ちよくなろうぜとでも言わんばかりに、勃起ちんこがびきびきといきり立って腹に擦れる。
さっさと帰りたいが、階段の前にいるスーツケースと彼女が邪魔をしている。
このまま見捨てるべきだと本能が叫んでいるが、大人の建前として困っていそうな年下の女の子を声もかけずに見捨てることは出来ない。

「もしかして、それ、上まで運ぶの? 手伝おうか?」

出来るだけにこやかに話しかけ、心の中では「断れー断れー」と祈っていた。
いくら隣に住んでるからといって、よく知らない男にものを頼むわけないよな、と思っていた俺の期待を綺麗に裏切り、彼女はにこりと微笑んだ。

「いいんですか? ありがとうございます~」

スーツケースは何が入っているのか、めちゃくちゃ重かった。
顔を真っ赤にしながら、彼女の部屋までなんとか運び込む。

「すみません。こちらまでお願い出来ますか?」

申し訳なさそうな彼女の声に、俺は最後のひとふんばりとスーツケースを持ち上げた。

アパートの部屋なんてものは、だいたい作りが同じで、全く同じか鏡合わせ程度の違いしかない。
だから、そこが俺の寝室と隣り合った場所だと、すぐにわかった。
可愛らしい薄いピンクのベッドは、少し大きくて頑丈そうだ。
そうか、このベッドの上で、あの声をーー。

ぞくぞくした。
彼女がそこで男に犯されているところを想像して。
イってもイっても許されず、男の性欲のはけとして使われる可哀想な女の子。
こんな風に、迂闊に男を寝室まであげてしまうから、そんな扱いを受けるんじゃないだろうか?
酔いがまわったのか、少しめまいがしてきた。
おかしなことになる前に、早く部屋に帰るとしよう。

「あの、ありがとうございました。良かったら、お水をどうぞ」

暇を告げる前に、ねぎらいの言葉とコップ一杯の水が差し出される。
ちょうど良かったと、その水を一気に飲み干した。
ぐらりと世界が揺れた。
彼女の姿が何重にもぶれて、ぐわんぐわんと声が反響する。

「どぅわぁいじよぉうぶぅでぇすくわぁ?」

耳から入る言葉が理解できない。
そのまま意識が遠退いて、ベッドの上に倒れ込んだ。
ぷつりと途切れた意識の向こうで、彼女が静かに笑った気がした。
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