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第10弾『星の導き』

第10弾『星の導き おまけ』

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「……いい加減、諦めろってことなんだろうな」

視界がゆらぎ、こぼれ落ちそうになる涙を、横からさっと差し出されたハンカチが吸い取った。
ディケムは、それを無言で受け取り、まぶたにぎゅっと押しつける。

「……お前も、いい加減、しつこいよな」

「それで、貴方が手に入るのなら安いものです」

「……ほんと、しつこい」

「ほら、目を閉じてください。赤くなった目元を治してしまいましょう」

「……やるなよ」

「やるな、とは? なんのことでしょうか?」

治癒魔法を受けるために、ディケムが目を閉じると同時に唇をやわらかく塞がれた。
きっと何かされるだろうと予想はしていたが、そのまま遠慮の欠片もなく入り込んできた舌に、ディケムは目を白黒させる。
ディケムがびっくりして目を開けば、男は悪戯に成功した子どものような眼差しでディケムを見ていた。

「んっ、んん……っ、ぷぁっ! お、お前なぁ!」

「貴方は、笑っていた方が可愛らしい。涙は似合いませんからね」

濡れた唇を指先で拭われて、やわらかく微笑む治癒術師の男を見つめた。
この男はいつだって、ノウェムではなくディケムに、可愛らしいと囁いてくる。

「俺は、双子のふてぶてしい方、だろ。可愛らしいのは、ノウェムの方だ」

どれだけ国王が平等に扱おうと、双子はやはり凶星の証であると見るものは多い。
過去に生まれた双子たちが、生まれてすぐにどちらかひとりだけになるよう処分されていた時代があるほどだ。
多くの場合は、後から生まれた方が処分されてきた。
だから、城にはディケムをよく思わないものが少なからずいる。
そういうやつらは、ディケムのことを双子のふてぶてしい方と呼ぶのだ。

「そうですか。わたしには、いつだって貴方の方が可愛らしく見えますけどね」

治癒術師の男は、ディケムを優しく引き寄せ、額にちゅっと口づけた。

「貴方の星は、わたしですよ。どれだけ新しい生を生きようとも、例え地獄に落ちようとも、その事実だけは変わらない。覚えておいてください。貴方が魂をふたつに引き裂いたとしても、わたしからは、逃げられないということを。どこに逃げようとも、必ず見つけてみせますからね」

ディケムは、男の目を見つめたまま動けなくなっていた。
きっと、この男の言うことは本当だろう。
なんて強烈な星なのか。
導かれるままに、ディケムはこくりと頷いていた。

星は、運命を導く。
誰でも平等に、しかし、すべては星が導くそのままに。
引かれあう双子星の運命さえも覆す導き星の定めは、誰にも離せぬ引力と共に。

星は、常に運命を導く。
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