16 / 20
人外の回想と邪魔者たち
しおりを挟む
クラウスは、ぐったりとしたオリバーをゆさぶって、ひとりだけ快楽を求めるようなことはしなかった。
ただただ優しく抱き締め、人生の半身となった愛し子を愛でることにした。
まだどこか虚ろを見つめていた瞳は、乾かぬようにまぶたで隠し、汚れていた口元は丁寧に拭って、口を閉じてやる。
穏やかな顔になったオリバーは、まるで眠っているだけのように見えた。
ほんの少し色付いた頬と、安らかな寝息代わりに漏れる熱く潤んだ吐息以外は。
「ん……ぁ、……ぅ……っ」
閉じたばかりの唇が開き、隙間から赤く濡れた舌がちらりとのぞく。
濡れた赤に誘われるまま唇を重ねたクラウスは、挿し込みかけた舌を止めた。
「ああ、いかんな。これ以上触れたら、喰い尽くしてしまいそうだ」
小さく震え続けるオリバーを、クラウスは優しく撫でてなだめた。
クラウスの陰茎をしっかりと咥えこんだオリバーの尻穴は、寝ているオリバーと関係なくひくひくと蠢いてクラウスに甘えてくる。
クラウスはオリバーの額や頬に口付けを落として、きゅんきゅんと陰茎を締め付けてくる肉襞をじっくり味わった。
オリバーの中は、ほどよく狭く、熱く潤んで蠢いていた。
特に先端と根元の膨らみに当たっている部分は、可哀想なくらい激しくひくついているため、陰茎が肉襞に揉まれているようで気持ちがいい。
そうでなくても、震える最奥の壁はクラウスがなにもしなくても、オリバーの自重でいまにも突き抜けてしまいそうだった。
クラウスは、陰茎が勝手に奥を突き抜けてしまわないように、オリバーの体を抱え直すと、思わず目に入った色の変わりきったズボンに苦笑した。
これほどまでに濡れて、すっかり色が変わっているということは、オリバーがそれだけ絶頂を繰り返していたという証だ。
こんなになるまで耐え続けていたオリバーの我慢強さに感心し、それに気付かずがっついて責め続けてしまった自分に呆れてしまう。
「まったく、いい歳をして……すまないな、オリバー。苦労をかける」
クラウスの死、という本来なら不可避の運命をねじ曲げたからだろうか。
年を経て、ほとんど薄れていた性欲が、いまではあふれるほどにわき起こっている。
付き合わせてしまうオリバーには悪いと思うが、こんなに可愛らしい反応を見せてくれるオリバーを抱かずにいることなどできはしない。
だからいますぐにでも、たっぷりと甘やかしてオリバーを中から蕩かしてしまいたいところなのだが、クラウスは意識のないオリバーに無体を働くつもりはなかった。
それは、オリバーが目覚めてからにするべきことだと考えている。
「オリバーには、私の想いをしっかり受け止めて欲しいからな」
どこかあどけないオリバーの寝顔に、クラウスは昔を懐かしんで口付けると微笑んだ。
オリバーは小さな狼から幼い少年に変化できるようになったあとも、クラウスと一緒に眠っていた。
幼い子どもでありながら、恐怖を身近に感じてきたからだろう。
どれだけ家の中は安全だと言い聞かせても、オリバーはクラウスから離れると眠れなくなるようだった。
クラウスが、夜中に喉の渇きを覚えて目覚めた際は、水を飲むために少し離れただけでもだめだった。
クラウスのいないベッドの中でひとり目を覚ましたオリバーは、顔を青ざめさせながら小さくなり、必死に体を隠そうとしていた。
ベッドの影でがたがたと震えるオリバーを見た時、あらゆる不幸からこの子を守ってやりたいと思ったのを覚えている。
差し出した手に、飛び付くような勢いですがりついたオリバーを抱き締め、もう大丈夫だと何度も繰り返し囁いた。
その後、オリバーはクラウスの腕の中で声を圧し殺して泣き続け、やがて疲れ果てて眠りについた。
成長するにつれて、オリバーはひとりでも眠れるようになったが、あの頃は、小さな少年オリバーが、腕の中ですぅすぅと安らかな寝息をたてているだけで幸せだった。
その幸せが、いまや肉欲まみれだと思うと、いささか気まずいものはあるが、これも新しい幸せの形ではある。
「おかえり、オリバー」
この腕の中に、と続く言葉は心の中で留め、オリバーの額に口付ける。
熱く潤んだ吐息を漏らすオリバーは、胎内をひくりと震わせてそれに答えた。
クラウスの機嫌が最高潮だったのは、そこまでだった。
クラウスは、着ていたローブを脱ぐと、腕の中にいるオリバーを宝物のように優しく包み込んだ。
すっぽりと隠れたオリバーの頭に口付けを落としたクラウスは、ゆったりと周囲に視線を走らせる。
「……何の用だ。馬に蹴られたいのなら、他を当たれ」
鋭く響いた声は、迷いの森に吸い込まれていった。
すぐに、人がいるとは思えないほど静まり返っていた森から、武器を手にした男たちが次々と姿を現す。
ぱっと見た限りでは冒険者のようにしか見えないが、見たままのそれが事実ではないことは、クラウスでなくても気付いただろう。
彼らの身に付けている防具は、どす黒い汚れが染み付いているものや、複数の防具を組み合わせた歪なものなど、どれひとつとしてまともなものがなかった。
冒険者崩れの盗賊か、冒険者をカモにする盗賊かくらいの違いだろう。
「こーんな場所で、ちちくりあうやつがいるたぁ驚きだ。ちょいと、オレたちも仲間に入れちゃくれねぇか?」
最後に出てきた男が、にやにやと笑う。
一番まともな防具を身につけているところを見ると、恐らくこの男が盗賊の頭目なのだろう。
その手にぶら下げているのも、他の男たちに比べればずいぶんよいものを持っている。
「……ああ、でも。アンタは、もう退場してくれていいぜぇ。オンナは、オレたちが代わりに可愛がってやるからよぉ」
ゆっくりとクラウスに近付いてきた頭目が、歯を剥き出しにして剣を振り上げた。
オリバーを抱えるクラウスだけを切り捨てようとしているのか、斜めに振り下ろされた剣は、
そのままクラウスに届くことなく弾け飛んだ。
ただただ優しく抱き締め、人生の半身となった愛し子を愛でることにした。
まだどこか虚ろを見つめていた瞳は、乾かぬようにまぶたで隠し、汚れていた口元は丁寧に拭って、口を閉じてやる。
穏やかな顔になったオリバーは、まるで眠っているだけのように見えた。
ほんの少し色付いた頬と、安らかな寝息代わりに漏れる熱く潤んだ吐息以外は。
「ん……ぁ、……ぅ……っ」
閉じたばかりの唇が開き、隙間から赤く濡れた舌がちらりとのぞく。
濡れた赤に誘われるまま唇を重ねたクラウスは、挿し込みかけた舌を止めた。
「ああ、いかんな。これ以上触れたら、喰い尽くしてしまいそうだ」
小さく震え続けるオリバーを、クラウスは優しく撫でてなだめた。
クラウスの陰茎をしっかりと咥えこんだオリバーの尻穴は、寝ているオリバーと関係なくひくひくと蠢いてクラウスに甘えてくる。
クラウスはオリバーの額や頬に口付けを落として、きゅんきゅんと陰茎を締め付けてくる肉襞をじっくり味わった。
オリバーの中は、ほどよく狭く、熱く潤んで蠢いていた。
特に先端と根元の膨らみに当たっている部分は、可哀想なくらい激しくひくついているため、陰茎が肉襞に揉まれているようで気持ちがいい。
そうでなくても、震える最奥の壁はクラウスがなにもしなくても、オリバーの自重でいまにも突き抜けてしまいそうだった。
クラウスは、陰茎が勝手に奥を突き抜けてしまわないように、オリバーの体を抱え直すと、思わず目に入った色の変わりきったズボンに苦笑した。
これほどまでに濡れて、すっかり色が変わっているということは、オリバーがそれだけ絶頂を繰り返していたという証だ。
こんなになるまで耐え続けていたオリバーの我慢強さに感心し、それに気付かずがっついて責め続けてしまった自分に呆れてしまう。
「まったく、いい歳をして……すまないな、オリバー。苦労をかける」
クラウスの死、という本来なら不可避の運命をねじ曲げたからだろうか。
年を経て、ほとんど薄れていた性欲が、いまではあふれるほどにわき起こっている。
付き合わせてしまうオリバーには悪いと思うが、こんなに可愛らしい反応を見せてくれるオリバーを抱かずにいることなどできはしない。
だからいますぐにでも、たっぷりと甘やかしてオリバーを中から蕩かしてしまいたいところなのだが、クラウスは意識のないオリバーに無体を働くつもりはなかった。
それは、オリバーが目覚めてからにするべきことだと考えている。
「オリバーには、私の想いをしっかり受け止めて欲しいからな」
どこかあどけないオリバーの寝顔に、クラウスは昔を懐かしんで口付けると微笑んだ。
オリバーは小さな狼から幼い少年に変化できるようになったあとも、クラウスと一緒に眠っていた。
幼い子どもでありながら、恐怖を身近に感じてきたからだろう。
どれだけ家の中は安全だと言い聞かせても、オリバーはクラウスから離れると眠れなくなるようだった。
クラウスが、夜中に喉の渇きを覚えて目覚めた際は、水を飲むために少し離れただけでもだめだった。
クラウスのいないベッドの中でひとり目を覚ましたオリバーは、顔を青ざめさせながら小さくなり、必死に体を隠そうとしていた。
ベッドの影でがたがたと震えるオリバーを見た時、あらゆる不幸からこの子を守ってやりたいと思ったのを覚えている。
差し出した手に、飛び付くような勢いですがりついたオリバーを抱き締め、もう大丈夫だと何度も繰り返し囁いた。
その後、オリバーはクラウスの腕の中で声を圧し殺して泣き続け、やがて疲れ果てて眠りについた。
成長するにつれて、オリバーはひとりでも眠れるようになったが、あの頃は、小さな少年オリバーが、腕の中ですぅすぅと安らかな寝息をたてているだけで幸せだった。
その幸せが、いまや肉欲まみれだと思うと、いささか気まずいものはあるが、これも新しい幸せの形ではある。
「おかえり、オリバー」
この腕の中に、と続く言葉は心の中で留め、オリバーの額に口付ける。
熱く潤んだ吐息を漏らすオリバーは、胎内をひくりと震わせてそれに答えた。
クラウスの機嫌が最高潮だったのは、そこまでだった。
クラウスは、着ていたローブを脱ぐと、腕の中にいるオリバーを宝物のように優しく包み込んだ。
すっぽりと隠れたオリバーの頭に口付けを落としたクラウスは、ゆったりと周囲に視線を走らせる。
「……何の用だ。馬に蹴られたいのなら、他を当たれ」
鋭く響いた声は、迷いの森に吸い込まれていった。
すぐに、人がいるとは思えないほど静まり返っていた森から、武器を手にした男たちが次々と姿を現す。
ぱっと見た限りでは冒険者のようにしか見えないが、見たままのそれが事実ではないことは、クラウスでなくても気付いただろう。
彼らの身に付けている防具は、どす黒い汚れが染み付いているものや、複数の防具を組み合わせた歪なものなど、どれひとつとしてまともなものがなかった。
冒険者崩れの盗賊か、冒険者をカモにする盗賊かくらいの違いだろう。
「こーんな場所で、ちちくりあうやつがいるたぁ驚きだ。ちょいと、オレたちも仲間に入れちゃくれねぇか?」
最後に出てきた男が、にやにやと笑う。
一番まともな防具を身につけているところを見ると、恐らくこの男が盗賊の頭目なのだろう。
その手にぶら下げているのも、他の男たちに比べればずいぶんよいものを持っている。
「……ああ、でも。アンタは、もう退場してくれていいぜぇ。オンナは、オレたちが代わりに可愛がってやるからよぉ」
ゆっくりとクラウスに近付いてきた頭目が、歯を剥き出しにして剣を振り上げた。
オリバーを抱えるクラウスだけを切り捨てようとしているのか、斜めに振り下ろされた剣は、
そのままクラウスに届くことなく弾け飛んだ。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。


【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
ホットココア・ラブ
御手洗
BL
月曜から金曜までの朝8:00。
毎日同じ時間に辻岡啓輔(つじおかけいすけ)の働くコーヒーショップにココアを頼みにやってくる男の子がいる。
彼は、名前も知らないその少年に恋をしている。
***
月曜から金曜までの朝8:00。
毎日同じ時間にココアを買いに染谷葵(そめやあおい)はそのコーヒーショップを訪れる。
彼は、まともに話したこともないその店の店員に恋をしている。
そんな二人が徐々に距離を縮めていく一週間のお話。
***
多分片方の視点だけを読んでも話は繋がると思いますのでどっちの視点も読むの面倒くさいなと思ったら片方好きな視点を選んで読んでみてください。



囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる