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旅の終わりとはじまる関係
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後始末ほど虚しいものはない。
だが、片付けないわけにもいかない。
使ってしまった骨を洗って別の袋に入れ、その袋を他の骨と同じ袋の中にしまいこむ。
すでに太めの骨のほとんどが、別袋の中にあるというのがいたたまれない。
一度、尻穴に入れてしまうと、クラウスの匂いは薄くなってしまうからだ。
もうこんなにクラウスの骨を使ったのか、と思うが、それだけ旅も進んでいる。
【北の祭壇】まではあと僅かのところまで来ていた。
最後に立ち寄った街で、迷いの森を抜けるための装備を揃え、オリバーは旅の終着点に向けて歩き出した。
「あっさり、着いたな」
迷いの森が迷いの森と呼ばれる由縁は、そのダンジョン内で彷徨うものが多く出たからだが、オリバーは迷うことなく祭壇の前にたどりついていた。
あまりにもあっさりすぎて、モンスターにすら出会っていない。
「やっぱり、ここには何もねェよな? なんだってクラウスはこんなところに来たがったんだ?」
オリバーはしばらく周囲を見てまわったが、何もないと判断すると石の塊に腰をおろして、クラウスの手紙を取り出した。
約二週間の旅路は、クラウスを失った悲しみを少なからず癒してくれた。
もしかしたら、あの淫らな夢やクラウスの骨、自分を慰めてきたのも一役かっているのかもしれない。
あまり認めたくないことだが。
そして、オリバーがクラウスの手紙を開いた瞬間、あたりは闇に包まれた。
「なっ、なんだ、これはっ」
とろりとした闇が、石の塊のまわりを埋め尽くしている。
まるで闇でできた湖のようだった。
オリバーが闇から逃れるように石の塊に乗り上げると、目の前にクラウスの姿が浮かび上がった。
「くら、うす……?」
『ようやく、ここまで来たか』
祭壇から僅かに離れた場所でゆれるクラウスの姿に、オリバーはぽかんとすることしかできない。
「クラウス、なのか」
『待ちかねたよ』
しばらくぼんやりと眺めていたオリバーが話しかけると、いつものように返事が返ってくる。
そうだ、クラウスはこういう男だった。
いつも身勝手で、オリバーがついてくるのを当たり前だと思うような傲慢な男。
「かっ、勝手に死んだのは、そっちだろうがっ! お、オレを、置いてったくせにっ、こ、こんなとこで、待ってた、なんて」
『ああ、泣くな、泣くな。いまは、その涙も拭ってやれない。あとでたっぷりと泣かせてやるから、手伝ってくれ』
けれど、それはいつだって事実で。
オリバーは喜んでクラウスの後を追っていたし、離れて暮らすようになっても、何も変わらなかった。
「て、手伝うって、何をだよ」
『私の復活だよ』
「……復活って、生き返るのか……?」
『いや、生き返るのとは、少し違うな。だが、キミと共に生きられる存在になることができる』
どうやって、だとか、どうして、だとか、すべてがどうでもよくなった。
クラウスが一緒に生きてくれる、そのことだけでオリバーには十分だった。
「どうすればいい? オレは、何をしたらいいんだ」
『いつものように』
「いつものようにって、なんのことだ?」
『いつものように、私で気持ちよくなってくれればいい』
「…………………………………………は?」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
それが、あの行為を指すのだと気が付いた時には、顔から火が出そうなくらい熱くなっていた。
『尻穴に、私の骨を』
「ちょっ、ちょっ、ちょっと待て! あ、あれを見てたのか!?」
『いつも見ていただろう? すぐ、そばで』
「え、あ、だって、あれは、夢で……夢、だっただろ……?」
『すべて、私が見せた夢だ。半分くらいは、本当だが』
「半分……?」
『キミの魂を抱いていたからね。いつも肉体に痕跡が残っていただろう? 夢から覚めたあとは、とても可愛らしく、私の骨で慰めていたじゃないか』
「…………あれもぜんぶ、クラウスのせいだったのかよ……?」
オレの尻穴がおかしくなっていたのは、とまではさすがに口にしない。
だが、間違いなくそういうことだったのだろう。
『キミは、拒まなかったからね』
あっけらかんと言ってのけるクラウスに、オリバーは全身の力が抜けるのを感じた。
石の塊の上で、思わずへたりこんでしまう。
「そう、か……夢じゃ、なかったのか」
『これは、最初で最後のチャンスだ。『北の祭壇』で儀式を行えるのは、一生に一度だけ。選ぶのはキミだよ』
「オレは、何を選べばいい?」
『私の復活か、消滅か。どちらでも好きな方を選んでくれればいい。ただし、復活を選ぶなら、私はどんな卑怯な手を使ってでも必ずキミを手に入れるだろう。老いた人族には眩しすぎる人狼の子オリバー。私と共に生きる気はあるか?』
「はァ? そんなもの、選ぶまでもねェだろ」
『オリバー?』
「オレがあんたのモノになるなら、あんたもオレのモノになるんだろ?」
『ああ、そうなるね』
「それなら、復活してくれよ。オレもあんたが欲しいんだ」
オリバーは服を脱ぎ捨て、一番太いクラウスの骨をぺろりと舐めた。
見つめるクラウスの前で、今朝も散々慰めた尻穴に骨を押し当てる。
「クラウス、はやく、かえってこいよ」
やわらかくほぐれていた尻穴が、太い骨を飲み込んで、ひくりと大きく震えあがった。
だが、片付けないわけにもいかない。
使ってしまった骨を洗って別の袋に入れ、その袋を他の骨と同じ袋の中にしまいこむ。
すでに太めの骨のほとんどが、別袋の中にあるというのがいたたまれない。
一度、尻穴に入れてしまうと、クラウスの匂いは薄くなってしまうからだ。
もうこんなにクラウスの骨を使ったのか、と思うが、それだけ旅も進んでいる。
【北の祭壇】まではあと僅かのところまで来ていた。
最後に立ち寄った街で、迷いの森を抜けるための装備を揃え、オリバーは旅の終着点に向けて歩き出した。
「あっさり、着いたな」
迷いの森が迷いの森と呼ばれる由縁は、そのダンジョン内で彷徨うものが多く出たからだが、オリバーは迷うことなく祭壇の前にたどりついていた。
あまりにもあっさりすぎて、モンスターにすら出会っていない。
「やっぱり、ここには何もねェよな? なんだってクラウスはこんなところに来たがったんだ?」
オリバーはしばらく周囲を見てまわったが、何もないと判断すると石の塊に腰をおろして、クラウスの手紙を取り出した。
約二週間の旅路は、クラウスを失った悲しみを少なからず癒してくれた。
もしかしたら、あの淫らな夢やクラウスの骨、自分を慰めてきたのも一役かっているのかもしれない。
あまり認めたくないことだが。
そして、オリバーがクラウスの手紙を開いた瞬間、あたりは闇に包まれた。
「なっ、なんだ、これはっ」
とろりとした闇が、石の塊のまわりを埋め尽くしている。
まるで闇でできた湖のようだった。
オリバーが闇から逃れるように石の塊に乗り上げると、目の前にクラウスの姿が浮かび上がった。
「くら、うす……?」
『ようやく、ここまで来たか』
祭壇から僅かに離れた場所でゆれるクラウスの姿に、オリバーはぽかんとすることしかできない。
「クラウス、なのか」
『待ちかねたよ』
しばらくぼんやりと眺めていたオリバーが話しかけると、いつものように返事が返ってくる。
そうだ、クラウスはこういう男だった。
いつも身勝手で、オリバーがついてくるのを当たり前だと思うような傲慢な男。
「かっ、勝手に死んだのは、そっちだろうがっ! お、オレを、置いてったくせにっ、こ、こんなとこで、待ってた、なんて」
『ああ、泣くな、泣くな。いまは、その涙も拭ってやれない。あとでたっぷりと泣かせてやるから、手伝ってくれ』
けれど、それはいつだって事実で。
オリバーは喜んでクラウスの後を追っていたし、離れて暮らすようになっても、何も変わらなかった。
「て、手伝うって、何をだよ」
『私の復活だよ』
「……復活って、生き返るのか……?」
『いや、生き返るのとは、少し違うな。だが、キミと共に生きられる存在になることができる』
どうやって、だとか、どうして、だとか、すべてがどうでもよくなった。
クラウスが一緒に生きてくれる、そのことだけでオリバーには十分だった。
「どうすればいい? オレは、何をしたらいいんだ」
『いつものように』
「いつものようにって、なんのことだ?」
『いつものように、私で気持ちよくなってくれればいい』
「…………………………………………は?」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
それが、あの行為を指すのだと気が付いた時には、顔から火が出そうなくらい熱くなっていた。
『尻穴に、私の骨を』
「ちょっ、ちょっ、ちょっと待て! あ、あれを見てたのか!?」
『いつも見ていただろう? すぐ、そばで』
「え、あ、だって、あれは、夢で……夢、だっただろ……?」
『すべて、私が見せた夢だ。半分くらいは、本当だが』
「半分……?」
『キミの魂を抱いていたからね。いつも肉体に痕跡が残っていただろう? 夢から覚めたあとは、とても可愛らしく、私の骨で慰めていたじゃないか』
「…………あれもぜんぶ、クラウスのせいだったのかよ……?」
オレの尻穴がおかしくなっていたのは、とまではさすがに口にしない。
だが、間違いなくそういうことだったのだろう。
『キミは、拒まなかったからね』
あっけらかんと言ってのけるクラウスに、オリバーは全身の力が抜けるのを感じた。
石の塊の上で、思わずへたりこんでしまう。
「そう、か……夢じゃ、なかったのか」
『これは、最初で最後のチャンスだ。『北の祭壇』で儀式を行えるのは、一生に一度だけ。選ぶのはキミだよ』
「オレは、何を選べばいい?」
『私の復活か、消滅か。どちらでも好きな方を選んでくれればいい。ただし、復活を選ぶなら、私はどんな卑怯な手を使ってでも必ずキミを手に入れるだろう。老いた人族には眩しすぎる人狼の子オリバー。私と共に生きる気はあるか?』
「はァ? そんなもの、選ぶまでもねェだろ」
『オリバー?』
「オレがあんたのモノになるなら、あんたもオレのモノになるんだろ?」
『ああ、そうなるね』
「それなら、復活してくれよ。オレもあんたが欲しいんだ」
オリバーは服を脱ぎ捨て、一番太いクラウスの骨をぺろりと舐めた。
見つめるクラウスの前で、今朝も散々慰めた尻穴に骨を押し当てる。
「クラウス、はやく、かえってこいよ」
やわらかくほぐれていた尻穴が、太い骨を飲み込んで、ひくりと大きく震えあがった。
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