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本編
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三度の行き倒れと引き換えではあったが、ついにユエラがこの建物を制覇する日がやってきた。
あともう少し広かったら、四度目の行き倒れになっていたかもしれない。
とことこと歩くユエラの後ろを、アーとウィーが心配そうについてきている。
アーの足音はとても小さいけれど、ウィーの足音はがしゃがしゃとうるさいから、どうしてもすぐについてきていることがわかってしまうのだ。
ユエラはなんだかあたたかい気持ちになって、にこにこと歩き続けた。
ひとりでする散歩よりも楽しく感じる。
今日は、もう少しだけ長く歩いていたい気分だった。
だが、ゴールはもう、ユエラのすぐ目の前にある。
アーとウィーは、ユエラが最後の廊下の端に手を当てたあと、ばっと後ろを振り返るとびっくりしていたが、すぐに嬉しそうな笑顔になった。
小さな白い花のようなアーの笑顔と、大きな黄色い花のようなウィーの笑顔。
どちらも、鮮やかな大地に相応しい花のような笑顔だった。
歩きすぎてふらふらになったユエラが両手をひろげると、真面目な顔になったウィーがすぐにやってきて、いつものように抱き上げてくれた。
あの男のように肩に担ぐのではなく、大きな魚にするように両腕の中にしっかりと閉じ込め、ユエラがとても大切なものであるかのように運んでくれる。
ウィーは絶対に運んでいる最中のユエラを見ようとはしないけれど、その分、ユエラからは見放題だ。
大きな腕の中で大人しくしながら、前だけを見て歩くウィーを見つめる。
太陽をよく吸いそうな黒い髪と、同じくらい黒い瞳が、何度もゆらゆらとゆれていた。
ウィーも見たいのかな。
それなら、ユエラのように好きなだけ見ればいいのに。
すいすいとまっすぐ歩くアーのあとを、ウィーがのしのしとついていく。
とことこと歩くことしかできないユエラには、真似のできない歩き方だ。
一応、やってみようとはしたのだが、どうやっても無理だった。
残念なことに、ユエラの足はアーやウィーのように器用じゃないのだ。
アーの用意してくれるご飯はおいしい。
ユエラはいつも夢中になってかぶりつく。
口に入れるとふかふかで、歯を立てるとぷりぷりと弾けるそれはとてもおいしい。
初めて食べた時にはばらばらだったけれど、ユエラがうまく食べられないでいたのを見て、アーがひとつにまとめてくれるようになったのだ。
ふかふかとぷりぷりは、それだけでもおいしいけど、一緒になるともっとおいしい。
お皿の上で山のようになってるご飯を、ユエラはいつももりもり食べる。
だって、これは全部ユエラのものだから、ユエラが全部食べていいのだ。
いつもアーがそう言っている。
ご飯がユエラのお腹に全部入ると、アーが口のまわりを拭きに来る。
最初の頃、ユエラはそれが苦手だった。
でももうユエラは、しばらく口を閉じていればすぐに終わることを知っている。
それに、これが終わるとウィーが甘くてとろけるようなものを持ってきてくれるのだ。
今日は何を食べられるのだろう。
ウィーが茶色くて丸いものに小さな槍を刺すと、じーっとそれを見ていたユエラの口に運んでくれる。
ぱかっと口を開けてかぶりつくと、じんわりと甘くておいしい味がした。
新しいおいしいだ。
あまりのおいしさにユエラが足をばたつかせて喜べば、ウィーはまた次の丸いものに小さな槍を突き立てた。
ぱかっと口を開けて、またおいしいにかぶりつく。
これも全部ユエラのもの。
今度はすぐになくならないよう、ゆっくりもぐもぐして味わう。
ウィーもアーも、ユエラをとても優しい目で見つめている。
ユエラは、この瞬間が大好きだった。
あともう少し広かったら、四度目の行き倒れになっていたかもしれない。
とことこと歩くユエラの後ろを、アーとウィーが心配そうについてきている。
アーの足音はとても小さいけれど、ウィーの足音はがしゃがしゃとうるさいから、どうしてもすぐについてきていることがわかってしまうのだ。
ユエラはなんだかあたたかい気持ちになって、にこにこと歩き続けた。
ひとりでする散歩よりも楽しく感じる。
今日は、もう少しだけ長く歩いていたい気分だった。
だが、ゴールはもう、ユエラのすぐ目の前にある。
アーとウィーは、ユエラが最後の廊下の端に手を当てたあと、ばっと後ろを振り返るとびっくりしていたが、すぐに嬉しそうな笑顔になった。
小さな白い花のようなアーの笑顔と、大きな黄色い花のようなウィーの笑顔。
どちらも、鮮やかな大地に相応しい花のような笑顔だった。
歩きすぎてふらふらになったユエラが両手をひろげると、真面目な顔になったウィーがすぐにやってきて、いつものように抱き上げてくれた。
あの男のように肩に担ぐのではなく、大きな魚にするように両腕の中にしっかりと閉じ込め、ユエラがとても大切なものであるかのように運んでくれる。
ウィーは絶対に運んでいる最中のユエラを見ようとはしないけれど、その分、ユエラからは見放題だ。
大きな腕の中で大人しくしながら、前だけを見て歩くウィーを見つめる。
太陽をよく吸いそうな黒い髪と、同じくらい黒い瞳が、何度もゆらゆらとゆれていた。
ウィーも見たいのかな。
それなら、ユエラのように好きなだけ見ればいいのに。
すいすいとまっすぐ歩くアーのあとを、ウィーがのしのしとついていく。
とことこと歩くことしかできないユエラには、真似のできない歩き方だ。
一応、やってみようとはしたのだが、どうやっても無理だった。
残念なことに、ユエラの足はアーやウィーのように器用じゃないのだ。
アーの用意してくれるご飯はおいしい。
ユエラはいつも夢中になってかぶりつく。
口に入れるとふかふかで、歯を立てるとぷりぷりと弾けるそれはとてもおいしい。
初めて食べた時にはばらばらだったけれど、ユエラがうまく食べられないでいたのを見て、アーがひとつにまとめてくれるようになったのだ。
ふかふかとぷりぷりは、それだけでもおいしいけど、一緒になるともっとおいしい。
お皿の上で山のようになってるご飯を、ユエラはいつももりもり食べる。
だって、これは全部ユエラのものだから、ユエラが全部食べていいのだ。
いつもアーがそう言っている。
ご飯がユエラのお腹に全部入ると、アーが口のまわりを拭きに来る。
最初の頃、ユエラはそれが苦手だった。
でももうユエラは、しばらく口を閉じていればすぐに終わることを知っている。
それに、これが終わるとウィーが甘くてとろけるようなものを持ってきてくれるのだ。
今日は何を食べられるのだろう。
ウィーが茶色くて丸いものに小さな槍を刺すと、じーっとそれを見ていたユエラの口に運んでくれる。
ぱかっと口を開けてかぶりつくと、じんわりと甘くておいしい味がした。
新しいおいしいだ。
あまりのおいしさにユエラが足をばたつかせて喜べば、ウィーはまた次の丸いものに小さな槍を突き立てた。
ぱかっと口を開けて、またおいしいにかぶりつく。
これも全部ユエラのもの。
今度はすぐになくならないよう、ゆっくりもぐもぐして味わう。
ウィーもアーも、ユエラをとても優しい目で見つめている。
ユエラは、この瞬間が大好きだった。
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