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二日目リノ、妻役
9、緊急事態
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「どうかな? 奥まで入ったけれど、痛くはない?」
「ん……っ、いたくは、ない……けど」
さらにたくさんの時間をかけて、彼はリノの中に小指を根元まで入れることに成功した。
媚薬の効果もある潤滑油と一緒に挿入されてきたはずなのに、リノの体は快感を拾うことができない。
ただただ異物感があるだけだ。
「そう……でも、気持ちよくもないみたいだね。これは、緊急事態、というやつかな……?」
「……ぅん、そう……かも」
枕元をちらりと見た彼に、リノはゆっくりと頷いて同意した。
これは、間違いなく緊急事態だ。
このままでは、リノも彼も三日目に続く居残り補習になってしまう。
リノとしては、彼との補習授業は喜んで受けたいくらい好ましいものであるけれど、それもすべては成功している前提での話だ。
このままでは、リノが妻の役のまま、いつ成功できるかもわからない不毛な居残り補習を続けることになりかねない。
そうなれば、彼と気持ちのいい補習どころか、さらなる苦痛を重ねるだけの時間になる可能性がかなり高い。
だが、うまく性行為まで行けないときのために、生徒たちを助ける緊急事態用の魔法具があることを、ふたりは最初の部屋で説明されている。
ふたりの視線の先にあるのは、洗浄用の魔法具が入った箱だが、この魔法具にはもうひとつ別の機能がついているのだ。
これを使うときは、ふたりがふたりとも、これが緊急事態であると認めたときであること、それから使ったあとは魔力の消耗が激しくなるので、むやみやたらに使わないこと、とも言われているのだが、ふたりはきちんとこれが緊急事態だと認識している。
そう認識しているのなら、そのための道具であるあれを使うことをためらう理由がない。
「あれを使うけど、いい?」
「……うん。このままだと失敗するだろうから。お願いします」
「大丈夫だよ。きっと、すぐにできるようになる。一度、指を抜くよ。色々と準備をしなくちゃいけないからね」
「ン……っっ」
リノの中から指を抜いてもらっただけで、強ばっていた体が弛緩するのがわかった。
きっと、リノの体はものすごく緊張していたのだ。
逆を言えば、中にいた彼の指は、かなりきつく強く締め付けられていたことだろう。
「……ごめん、なさい。はいら、なくて」
「そんなこと、気にしないでいいんだよ。きっと、本番でもこういうことは起きるはずだからね。むしろ、初めてでうまくできないときに何をしたらいいか、いまのうちにしっかり経験しておけるなんて少し得した気分だよ。だってその分、他のみんなよりも上手にできるようになれるってことだからね。君も一緒に勉強して、上手にできるようになろう?」
リノがベッドの上で無力感に苛まれている間にも、彼はてきぱきと準備を進めていく。
潤滑油の瓶に、洗浄用の魔法具を逆さまにして挿入し、ぐるぐるとかき混ぜはじめた。
「うーん、こんなものかな……? さあ、君もかき混ぜて」
「僕は何回くらい、混ぜたらいいの?」
彼の手元を見ていたけれど、十回目以上になったところから数え切れなくなってしまった。
同じ数だけかき混ぜようと思っていたのに、これではどうしていいかわからない。
「たくさん気持ちよくなりたいなら、たくさんかき混ぜるといいよ。ぼくの魔力はたっぷり入れてあるからね」
「……痛くないのがいいな」
「俺の魔力と君の魔力がしっかり混ざれば、痛みなんて感じなくなるよ」
「……わかったよ。しっかり混ぜるね」
潤滑油の瓶と洗浄用の魔法具を受け取ったリノは、彼に勧められるまま、たくさんたくさんかき混ぜた。
ピンク色の潤滑油が、華やかなバラ色になるほどたっぷりと。
「ん……っ、いたくは、ない……けど」
さらにたくさんの時間をかけて、彼はリノの中に小指を根元まで入れることに成功した。
媚薬の効果もある潤滑油と一緒に挿入されてきたはずなのに、リノの体は快感を拾うことができない。
ただただ異物感があるだけだ。
「そう……でも、気持ちよくもないみたいだね。これは、緊急事態、というやつかな……?」
「……ぅん、そう……かも」
枕元をちらりと見た彼に、リノはゆっくりと頷いて同意した。
これは、間違いなく緊急事態だ。
このままでは、リノも彼も三日目に続く居残り補習になってしまう。
リノとしては、彼との補習授業は喜んで受けたいくらい好ましいものであるけれど、それもすべては成功している前提での話だ。
このままでは、リノが妻の役のまま、いつ成功できるかもわからない不毛な居残り補習を続けることになりかねない。
そうなれば、彼と気持ちのいい補習どころか、さらなる苦痛を重ねるだけの時間になる可能性がかなり高い。
だが、うまく性行為まで行けないときのために、生徒たちを助ける緊急事態用の魔法具があることを、ふたりは最初の部屋で説明されている。
ふたりの視線の先にあるのは、洗浄用の魔法具が入った箱だが、この魔法具にはもうひとつ別の機能がついているのだ。
これを使うときは、ふたりがふたりとも、これが緊急事態であると認めたときであること、それから使ったあとは魔力の消耗が激しくなるので、むやみやたらに使わないこと、とも言われているのだが、ふたりはきちんとこれが緊急事態だと認識している。
そう認識しているのなら、そのための道具であるあれを使うことをためらう理由がない。
「あれを使うけど、いい?」
「……うん。このままだと失敗するだろうから。お願いします」
「大丈夫だよ。きっと、すぐにできるようになる。一度、指を抜くよ。色々と準備をしなくちゃいけないからね」
「ン……っっ」
リノの中から指を抜いてもらっただけで、強ばっていた体が弛緩するのがわかった。
きっと、リノの体はものすごく緊張していたのだ。
逆を言えば、中にいた彼の指は、かなりきつく強く締め付けられていたことだろう。
「……ごめん、なさい。はいら、なくて」
「そんなこと、気にしないでいいんだよ。きっと、本番でもこういうことは起きるはずだからね。むしろ、初めてでうまくできないときに何をしたらいいか、いまのうちにしっかり経験しておけるなんて少し得した気分だよ。だってその分、他のみんなよりも上手にできるようになれるってことだからね。君も一緒に勉強して、上手にできるようになろう?」
リノがベッドの上で無力感に苛まれている間にも、彼はてきぱきと準備を進めていく。
潤滑油の瓶に、洗浄用の魔法具を逆さまにして挿入し、ぐるぐるとかき混ぜはじめた。
「うーん、こんなものかな……? さあ、君もかき混ぜて」
「僕は何回くらい、混ぜたらいいの?」
彼の手元を見ていたけれど、十回目以上になったところから数え切れなくなってしまった。
同じ数だけかき混ぜようと思っていたのに、これではどうしていいかわからない。
「たくさん気持ちよくなりたいなら、たくさんかき混ぜるといいよ。ぼくの魔力はたっぷり入れてあるからね」
「……痛くないのがいいな」
「俺の魔力と君の魔力がしっかり混ざれば、痛みなんて感じなくなるよ」
「……わかったよ。しっかり混ぜるね」
潤滑油の瓶と洗浄用の魔法具を受け取ったリノは、彼に勧められるまま、たくさんたくさんかき混ぜた。
ピンク色の潤滑油が、華やかなバラ色になるほどたっぷりと。
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