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しおりを挟むふたなりなどエミルしかいない。皇帝の手付きとなれば興味を示す獣人も増える。休む間もなく獣人を受け入れ続けるなんて、今のルトの状況にエミルが耐えられるはずがない。
「お許しを……エミルは、お見逃しを……、どうか。エミルは、他の、孕み腹は……お見逃しくださいませ」
微動もしなかった身体を、どうにか動かして懇願する。皇帝に縋りつくルトの目の先で、金色の双眸が細められた。
「決めよ。そなたが伽を務めるか、他の腹にさせるか」
「そんな」
そんなことを言われても、身体が受けつけないのはどうしようもない。もしかしたら、ルトが生にしがみつけば食べ物を受けつけるかもしれない。でもそんなの無理だ。
ルトはもう、死への誘惑を自覚してしまった。このままゆるやかに空に行きたい。誘われるまま、何ものにも縛られない自由な大空に、逝きたい。
なぜ放っておいてくれない。皇帝は孕み腹などどうでもいいはずなのに。むしろ夜毎悪夢を見せる人間を忌避する。大陸のすべてを支配する皇帝が、気に掛けるほど、ルトに価値などない。子を孕むだけの、蹂躙されるだけの存在だ。この命に未練はない。早く、この世から消えてなくなればいい。
両手を伸ばせば届きそうな場所まで来た。それなのに、なぜここにきて、皇帝が手放してくれない。
初めて、自分と血を分けたルイスにも触れられた。小さな鼓動を胸で受け止め、この腕で支えられた。心が安らぐぬくもりと、わずかな幸せの欠片を胸に抱いていけたなら、そこはきっとゆりかごのような幸福のありか。
死の足音が近づいたと知り、やっと安寧の場所を見つけた。それはルトにとって希望というものだ。死が希望とはおかしいとも思うが、ルトが穏やかに眠れる場所に違いない。
完全に死を手放せないルトに、皇帝は厳しい視線を緩めなかった。薄闇でも底光りする両目を吊り上げ、寝殿の奥を見る。寝台から遠い扉の前で控える従者へ、冷酷に命じた。死を望むルトに、仕置きを与えるかのように。
「グレンをここへ召せ」
ルトの呼吸が止まる。皇帝が命じた内容が信じられなかった。いま皇帝はグレンをここに、呼ぶといったか。皇帝に組み敷かれる寝床で、全裸のルトがいる閨に――いやだ。嫌。それだけは嫌。
宮殿でルトが何をしているか。当然グレンは知ってるだろう。けれど、グレンはルトを性欲のはけ口にしない。
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