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しおりを挟む少し待つが、反応がない。もう少し、手に力を入れて揺さぶってみる。それでもラシャドは目を覚まさなかった。それどころか、相変わらず安らかな寝息を立てている。大声を上げるのも気が引けた。しかしこのままでは困った。
少し顔を近づけて、ラシャドの耳もとで口を開く。そのとき急にラシャドの腕が伸びてきた。ルトの後頭部を力強く引き寄せられる。耳に寄せた口の位置をずらされて、性急に互いの唇を重ねられた。
「ふ…っ、ン……っ!」
深く、隙間なく、口内の奥まで。ラシャドの長い舌がねとりとルトの口腔に侵入する。驚きに、逃げた舌まで絡みとられた。厚い舌先で喉の奥をまさぐられる。ルトの味をたっぷり堪能し尽くして、最後に溜まった唾液をじゅるりと音を立てて吸われた。
「な――っ」
強い力から解放され、ルトは濡れた口元を擦る。真下から、ラシャドのいたずらっ子に似た視線がルトを覗いた。目と鼻の距離で、まっすぐな視線を受けて、頬が上気するのを感じる。もしかしたら首元まで真っ赤に染まっているかもしれない。
「い、いつから起きて……っ」
「お前に起こされたときからだろ」
そのとおりなのだが聞きたいのはそこじゃない。ルトの動揺は、どこか面白そうに返された。ラシャドは寝そべっていた上半身を起こし軽く背伸びをする。
さっきまで眠っていたとは思えない俊敏さで身軽に立ち上がり、ルトの固まる頭に手のひらを置いた。
「何か、欲しいものはあるか」
「え?」
軽く頭を撫でられる。ラシャドの機嫌はすこぶるいいらしい。今なら、ルトの頼みを聞いてくれるかもしれない。戸惑いつつルトはゆっくり立ち上がり、見下ろしてくるラシャドを見上げた。
「エミルの……朱華殿に行きたい」
何とかそれだけを口にする。孕み腹の宮殿は山を開拓した広い場所に、並んで建てられているようで、朱華殿は二つ先の宮殿だ。顔を出すと言ってくれたパーシーたちは、まだ一度も紫苑殿に姿を見せていなかった。
しかしルトが言ったとたん、ラシャドの顔つきが険しくなった。
「駄目だ。お前は子を産むまで紫苑殿にいろ。この宮殿の敷地内なら、他の獣人は近寄ってこない。一歩でも敷地外に出れば、襲われても文句は言えねぇぞ」
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