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しおりを挟む捕らえた孕み腹がどんな拷問を受けたかは知らない。が、この数日で、体内の粘膜という粘膜を傷つけられただろう。後宮に返されるときは、傷痕を跡形もなく治療されるから、見た目の変化はないが。
それでも目の前の少年は、見えない傷を察し、負の空気をどうにかしたいという様子を見せた。
これまで、何度も孕み腹を管理してきたグレンだが、他人に心を砕く人間など見たことがなかった。実際、後宮ではそんな人間はいなかった。
ツエルディング後宮に運ばれた孕み腹はいつも、同じ空気をまとう。生気のかけらもない、淀んだ目の、死人も同然の陰気さを。
正直なところグレンは驚いた。乳兄弟として育った皇帝の影響で、人間は協調性がない無能な生き物だと思いこんでいたから。獣人の子を孕むだけの、使い捨ての駒だと。
考えこむグレンの視線を受けて、少年がちらと顔を上げた。紫水の瞳がグレンの様子を探ってくる。どこかでこの瞳を見た気もするが、思い出す前に少年が続けた。
「この空き缶、もらっていいですか」
「欲しいなら持っていけ。それが何かに使えるとも思えんがな。ただのゴミだ」
グレンからすれば少年が大事そうに抱える空き缶は、破棄するだけの不要なものだ。しかし少年はグレンの言葉に安心したと息を吐いた。気が緩んだのか、硬い表情がほんの少し柔らかくなる。
「いいえ、十分使えます。あなたにはただのゴミでも、俺にはこれが必要だから、これはもうゴミじゃないです。これ、俺がもらいますね」
ありがとうございます、そう告げて、力の抜けた少年は一礼して去っていった。見るからに怯えていたくせに一丁前なことを言う。なかなかどうして。吹けば飛びそうなほどか弱い見た目で、気の強い。
何度目かわからない驚きだった。走り去る少年の後姿が見えなくなるまで、グレンはその場にいつくした。
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