46 / 73
第十一章
第四十五話 弱点
しおりを挟む
日が傾き、全体にオレンジ色が塗られたような草原を歩くキンテイ。その後ろを三人が追っている。
「ん? 君たち、俺についてくるのかい? 悪いけど家は貧乏だから来ても何も無いからね。」
「キンテイさんの家はどこにあるんですか?」
「カシの国にある。まあ、オークだから当然っちゃ当然だがな。」
「話を聞かせてくれるだけでいいです。きっと、何かの役に立ちますから。」
「うーん、君たちはまだ俺を疑ってる感じかな? まぁ、俺の本性なんざ酷いもんだし……疑われてもしょうがないか。」
「本性?」
キンテイはあまり話したくなさそうな顔をしたが、ケンギたちの目を見て話し始めた。
「俺はな、昔、魔物を助けてやったときがあったんだが、その魔物が人を襲ったときがあったんだ。それ以来のけものにされてる。食事は毎回闇由来の魔物肉とそこら辺の雑草。こんな生き様なのに旅人にもさせてもらえない。」
「……キンテイさんはそんなに辛い生き方をされていたのですね。」
しばらく沈黙が続く。これ以上は話したくないというキンテイの気持ちが、三人にも強く影響を与えていた。
しばらく歩き太陽がすっかり沈んでしまった頃、漸くキンテイの家にたどり着いた。
「ごめんね、ちょっと遠回りになっちゃったけど、大丈夫だった?」
「はい、大丈夫でした。」
「それじゃあ、色々と話そうか……。」
キンテイの家に上がったケンギたちは、早速話し合いを始めた。まずはヒイデが尋ねる。
「単刀直入に聞きます。キンテイさんはもし今よりも素晴らしい生活が与えられるなら、それを提供してるのが魔物でも受け取りますか?」
キンテイは貯めた雨水を飲みながら答える。
「……しちゃうかもしれないな。こんな生活から脱却できるのなら、魔物でもなんにでもなってやる。」
「それじゃあ、俺たちの知ってるキンテイは、恐らくあなたの未来の姿です。」
キンテイは顔をしかめる。
「……未来の俺は一体どうなっているんだ?」
「未来のあなたは、たくさんの人に迷惑をかける恐ろしい魔物になっています。」
それを聞いたキンテイの目に涙が浮かぶ。
「……本当なんだな? それ。」
「はい、本当です。そのために、キンテイさんの弱点を聞かせていただきたいです。私たちの時代に戻ったら、必ず止めます!」
涙を流すキンテイは、少し考えた後に弱点を暴露した。
「……金目のものと美味い飯には目がないな。魔物になってもそれだけは変わらないだろう。」
キンテイがそう言うと、ケンギたちの体が輝き始めた。
「こ、これは一体……?」
「多分時間切れだ。キンテイさん! 必ず未来のあなたを倒します!」
「あぁ。頼んだぞ。」
三人が完全に光に包まれると、そこには何も無くなっていた。
「ん? 君たち、俺についてくるのかい? 悪いけど家は貧乏だから来ても何も無いからね。」
「キンテイさんの家はどこにあるんですか?」
「カシの国にある。まあ、オークだから当然っちゃ当然だがな。」
「話を聞かせてくれるだけでいいです。きっと、何かの役に立ちますから。」
「うーん、君たちはまだ俺を疑ってる感じかな? まぁ、俺の本性なんざ酷いもんだし……疑われてもしょうがないか。」
「本性?」
キンテイはあまり話したくなさそうな顔をしたが、ケンギたちの目を見て話し始めた。
「俺はな、昔、魔物を助けてやったときがあったんだが、その魔物が人を襲ったときがあったんだ。それ以来のけものにされてる。食事は毎回闇由来の魔物肉とそこら辺の雑草。こんな生き様なのに旅人にもさせてもらえない。」
「……キンテイさんはそんなに辛い生き方をされていたのですね。」
しばらく沈黙が続く。これ以上は話したくないというキンテイの気持ちが、三人にも強く影響を与えていた。
しばらく歩き太陽がすっかり沈んでしまった頃、漸くキンテイの家にたどり着いた。
「ごめんね、ちょっと遠回りになっちゃったけど、大丈夫だった?」
「はい、大丈夫でした。」
「それじゃあ、色々と話そうか……。」
キンテイの家に上がったケンギたちは、早速話し合いを始めた。まずはヒイデが尋ねる。
「単刀直入に聞きます。キンテイさんはもし今よりも素晴らしい生活が与えられるなら、それを提供してるのが魔物でも受け取りますか?」
キンテイは貯めた雨水を飲みながら答える。
「……しちゃうかもしれないな。こんな生活から脱却できるのなら、魔物でもなんにでもなってやる。」
「それじゃあ、俺たちの知ってるキンテイは、恐らくあなたの未来の姿です。」
キンテイは顔をしかめる。
「……未来の俺は一体どうなっているんだ?」
「未来のあなたは、たくさんの人に迷惑をかける恐ろしい魔物になっています。」
それを聞いたキンテイの目に涙が浮かぶ。
「……本当なんだな? それ。」
「はい、本当です。そのために、キンテイさんの弱点を聞かせていただきたいです。私たちの時代に戻ったら、必ず止めます!」
涙を流すキンテイは、少し考えた後に弱点を暴露した。
「……金目のものと美味い飯には目がないな。魔物になってもそれだけは変わらないだろう。」
キンテイがそう言うと、ケンギたちの体が輝き始めた。
「こ、これは一体……?」
「多分時間切れだ。キンテイさん! 必ず未来のあなたを倒します!」
「あぁ。頼んだぞ。」
三人が完全に光に包まれると、そこには何も無くなっていた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、pixivにも投稿中。
※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。
※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる