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第八章
第三十三話 宣戦布告
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スイテイを倒したケンギたちは、倒した証である装飾品を持って大酒場に向かっていた。ネツからラーベへ通ずる道辺りで、三人は話し合っていた。
「ヒイデ、あの技は一体なんだったんだ? 自らを燃やして出す技なんて聞いたことがない。」
火の技と呪文のことをそこそこ知っているケンギでさえ知らなかった。
「……秘密だ。あれはカテイ様が俺にだけ授けてくれた最終奥義。簡単に人には教えられない。」
「ねぇ、私からも聞きたいことがあるんだけど、良いかな?」
「あの技のことは教えないぞ。聞くなら他のことにしてくれな。」
「なんだかカテイはスイテイに脅されてたって、言ってたわよね? それって一体なんなの?」
「なんなのって言われても、そのままの意味だ。カテイ様程の賢い方が、なんの対策も無しに雷雲に行くはずがない。きっと、普段から上から目線だったスイテイに何かされてたんだよ。」
「……カテイって、本当はどういう奴なんだ? 俺の知ってるカテイは残虐で悪魔みたいな奴だが、お前の知ってるカテイは冷静で穏やかな奴。一体どっちが本物のカテイなんだ?」
「どっちが正解かはわからないが、少なくともお前たちの見てきたカテイ様は恐らく普通じゃない。……もうすぐ大酒場に着くぞ。もう暗い話はやめにしよう。」
「すまない、変な話題ふっちゃって。」
三人は大酒場に入ると、スイテイを倒した証である装飾品を見せびらかそうとするが、何故か人がほとんどいなかった。
「うーん、この人数じゃ掲げても盛り上がらないよな。」
「せっかく魔物だった汚名が返上できると思ったんだがなー……。」
「一体何があったのかしら? とりあえず証はトールさんの部屋へ持っていきましょ。」
三人はトールの部屋へ向かった。
トールの部屋の前に着くと、ケンギは早速扉をノックした。
「トールさん? いますかー?」
何度かそう呼びかけるも、返事が来ない。そこでケンギは別の人にトールの居場所を尋ねることにした。真っ先に思いついたのはリーゼだった。
「リーゼさんにトールさんのいるところを聞いてくる。きっと、あの人なら知ってるはずだからな。」
リーゼの部屋に行きトールの居場所を尋ねると、予想通りトールの居場所を知っていた。
「トール様なら、今は【ソキ】の国に向かっています。どうやら、【キンテイ】という魔物が宣戦布告をしてきたようなので。」
「キンテイ……また魔王四天王か。そいつはいつ頃に戦いを始めるんですか?」
「恐らく明日でしょう。多分明け方に貴方たちも呼ばれることになりますよ。」
ヒイデが鼻で笑う。
「フン、キンテイなんて、火で燃やして終わりだ。大した敵じゃない。」
「でも、キンテイはどうやら妖精の森の中で戦うつもりのようで、下手に火の技呪文を使えません。その上、体が硬すぎて物理攻撃も意味をなさないのです。」
「関係ないんじゃないか? どっち道キンテイを倒さなきゃソキは終わりだぞ。」
ヒイデは森の価値を知らないようだ。
「ヒイデ様、あの森が出来るのに一体どれだけの時間がかかっているのかわかっていますか? 簡単に燃やせるほど安い森じゃないのです。」
「どうしても火はダメだってことだな。俺の出る幕はないから、パスさせてもらう。」
「魔物であったことの汚名返上をするのでは無かったのですか?」
「……これ。スイテイのつけてた冠。」
「まあ、なんとも悪いタイミングで持ってきてしまいましたね。」
「まったくだ。表に飾っちゃうと、誰が倒したのかわからなくなっちまう。」
「私が広めておきます。スイテイを倒したのはヒイデ様であると。」
「よろしく。じゃあ俺、帰るから。また今度な。」
そう言うとヒイデはリーゼの部屋を後にした。
「俺たちも明日に備えて帰ったほうが良いですかね?」
ケンギがそう問いかけると、リーゼはうなずいた。
「明日の朝はとても早いです。急いで帰るのが良いでしょう。」
「じゃあリーゼさん。ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
「また会いましょう、ケンギ様、ロウコ様。」
「レフト様、カテイに続きスイテイまでやられてしまいました。」
「……実に不愉快だ。キンテイならやってくれると信じているが、後はお前とあいつしかいないんだよな、四天王。」
「レフト様、ご安心を。この【モクテイ】、必ずあのガキたちを倒します。」
「はぁ~あ。ヒイデも殺し損ねたし、これから直々にここに来る奴も増えちまうんだろうなぁ……。今日はもう寝る。まったく、不愉快でしょうがない……。」
「ヒイデ、あの技は一体なんだったんだ? 自らを燃やして出す技なんて聞いたことがない。」
火の技と呪文のことをそこそこ知っているケンギでさえ知らなかった。
「……秘密だ。あれはカテイ様が俺にだけ授けてくれた最終奥義。簡単に人には教えられない。」
「ねぇ、私からも聞きたいことがあるんだけど、良いかな?」
「あの技のことは教えないぞ。聞くなら他のことにしてくれな。」
「なんだかカテイはスイテイに脅されてたって、言ってたわよね? それって一体なんなの?」
「なんなのって言われても、そのままの意味だ。カテイ様程の賢い方が、なんの対策も無しに雷雲に行くはずがない。きっと、普段から上から目線だったスイテイに何かされてたんだよ。」
「……カテイって、本当はどういう奴なんだ? 俺の知ってるカテイは残虐で悪魔みたいな奴だが、お前の知ってるカテイは冷静で穏やかな奴。一体どっちが本物のカテイなんだ?」
「どっちが正解かはわからないが、少なくともお前たちの見てきたカテイ様は恐らく普通じゃない。……もうすぐ大酒場に着くぞ。もう暗い話はやめにしよう。」
「すまない、変な話題ふっちゃって。」
三人は大酒場に入ると、スイテイを倒した証である装飾品を見せびらかそうとするが、何故か人がほとんどいなかった。
「うーん、この人数じゃ掲げても盛り上がらないよな。」
「せっかく魔物だった汚名が返上できると思ったんだがなー……。」
「一体何があったのかしら? とりあえず証はトールさんの部屋へ持っていきましょ。」
三人はトールの部屋へ向かった。
トールの部屋の前に着くと、ケンギは早速扉をノックした。
「トールさん? いますかー?」
何度かそう呼びかけるも、返事が来ない。そこでケンギは別の人にトールの居場所を尋ねることにした。真っ先に思いついたのはリーゼだった。
「リーゼさんにトールさんのいるところを聞いてくる。きっと、あの人なら知ってるはずだからな。」
リーゼの部屋に行きトールの居場所を尋ねると、予想通りトールの居場所を知っていた。
「トール様なら、今は【ソキ】の国に向かっています。どうやら、【キンテイ】という魔物が宣戦布告をしてきたようなので。」
「キンテイ……また魔王四天王か。そいつはいつ頃に戦いを始めるんですか?」
「恐らく明日でしょう。多分明け方に貴方たちも呼ばれることになりますよ。」
ヒイデが鼻で笑う。
「フン、キンテイなんて、火で燃やして終わりだ。大した敵じゃない。」
「でも、キンテイはどうやら妖精の森の中で戦うつもりのようで、下手に火の技呪文を使えません。その上、体が硬すぎて物理攻撃も意味をなさないのです。」
「関係ないんじゃないか? どっち道キンテイを倒さなきゃソキは終わりだぞ。」
ヒイデは森の価値を知らないようだ。
「ヒイデ様、あの森が出来るのに一体どれだけの時間がかかっているのかわかっていますか? 簡単に燃やせるほど安い森じゃないのです。」
「どうしても火はダメだってことだな。俺の出る幕はないから、パスさせてもらう。」
「魔物であったことの汚名返上をするのでは無かったのですか?」
「……これ。スイテイのつけてた冠。」
「まあ、なんとも悪いタイミングで持ってきてしまいましたね。」
「まったくだ。表に飾っちゃうと、誰が倒したのかわからなくなっちまう。」
「私が広めておきます。スイテイを倒したのはヒイデ様であると。」
「よろしく。じゃあ俺、帰るから。また今度な。」
そう言うとヒイデはリーゼの部屋を後にした。
「俺たちも明日に備えて帰ったほうが良いですかね?」
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「明日の朝はとても早いです。急いで帰るのが良いでしょう。」
「じゃあリーゼさん。ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
「また会いましょう、ケンギ様、ロウコ様。」
「レフト様、カテイに続きスイテイまでやられてしまいました。」
「……実に不愉快だ。キンテイならやってくれると信じているが、後はお前とあいつしかいないんだよな、四天王。」
「レフト様、ご安心を。この【モクテイ】、必ずあのガキたちを倒します。」
「はぁ~あ。ヒイデも殺し損ねたし、これから直々にここに来る奴も増えちまうんだろうなぁ……。今日はもう寝る。まったく、不愉快でしょうがない……。」
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