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第六章
第二十四話 勇気
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ケンギとヒイデの戦いは、引き分けという形で決着がついた。
「ケンギ殿、ロウコ殿、今日は誠にありがとうございました。」
「いいえ、あと少しで倒せるところだったのに逃してしまいました。俺は何もできていません。」
「私も今回は見るばっかりで、手を動かせていなかったです。ごめんなさい。」
「まあまあ、二人とも、顔を上げなさい。とにかく誰がいつ頃くるかまではわかったから、それだけで十分じゃよ。あとは、わしとナガツでやる。」
「親父、金ランクの旅人でも苦戦した魔物だぞ? 次来たら俺らで勝てるかどうか……。」
「旅人を志望するなら、そのくらいやれねばな。」
「ナガツさん、旅人になりたいんですか?」
「なりたいけど、親父が『今はまだそのときではない』ってしつこくて。でも、あのヒイデとかいう奴を倒せば旅人として認めてくれるんだな?」
「そうじゃな……時々帰ってくるなら認めよう。だが、うちはお前しか子供がいないから、できればここに居座って欲しい。」
「親父、伝統がどうとか血筋がどうとかいつも気にするよな。もうそんなに堅苦しいのはやめないか?」
「……ダメじゃ。この伝統は必ず受け継いでいかねばならぬのじゃ。もし定期的に帰れないなら、ヒイデを倒しても旅人として認めぬ。」
「そ、そんなぁ~。でも、そもそも倒せるかもわからないのにそんな話をしてる場合じゃなかった。必ずヒイデを倒せるように修行してこなくちゃ!」
そう言うとナガツは家から駆け出した。
「では、二人とも協力ありがとうございました。表に馬車が待機してるから、それを使って帰りなさい。」
「「お邪魔しましたー。」」
馬車に乗り込んだケンギとロウコは、反省会を始めた。
「まさか、カテイの部下があんなに強かったなんて。下手したらカテイよりも強かった。」
「ケンギ君、私、全く役に立たなかった。ごめんね。」
「いいよ、別に。それよりも、ヒイデが後をつけてきてないか心配だ。ちょっとでも気を抜いたら、殺されてしまうかもしれない……。」
「大丈夫よきっと。あの魔物はカテイをリスペクトしてたみたいだから、いくら卑怯でも一線は越えないはずよ。」
「大丈夫だと良いけど……。」
「怯えるなんてケンギ君らしくないわよ。いつも勇敢に敵に立ち向かっているじゃない。」
「……そうだ。俺は勇気があるから強いんだ。ありがとう、ロウコ。そのことを忘れかけてたよ。」
「おにぎりの借り、返したわよ。」
その後、二人は無事にラーベへ帰ることができた。
「レフト様、ヒイデが何もせずに帰ってきました。どうします? 処しますか?」
「ごめんなさい。俺の頭に変な言葉が響いて、それで……。」
「まあ、出禁くらいでいいんじゃないかな?一ヶ月くらい。」
「承知しました。さ、早く出ていきなさい。」
「あの! ケンギたちは俺一人で殺してもいいですか?」
「もういいよやらなくて。どっかその辺で寝てて。」
「……はい、すみませんでした。」
「ケンギ殿、ロウコ殿、今日は誠にありがとうございました。」
「いいえ、あと少しで倒せるところだったのに逃してしまいました。俺は何もできていません。」
「私も今回は見るばっかりで、手を動かせていなかったです。ごめんなさい。」
「まあまあ、二人とも、顔を上げなさい。とにかく誰がいつ頃くるかまではわかったから、それだけで十分じゃよ。あとは、わしとナガツでやる。」
「親父、金ランクの旅人でも苦戦した魔物だぞ? 次来たら俺らで勝てるかどうか……。」
「旅人を志望するなら、そのくらいやれねばな。」
「ナガツさん、旅人になりたいんですか?」
「なりたいけど、親父が『今はまだそのときではない』ってしつこくて。でも、あのヒイデとかいう奴を倒せば旅人として認めてくれるんだな?」
「そうじゃな……時々帰ってくるなら認めよう。だが、うちはお前しか子供がいないから、できればここに居座って欲しい。」
「親父、伝統がどうとか血筋がどうとかいつも気にするよな。もうそんなに堅苦しいのはやめないか?」
「……ダメじゃ。この伝統は必ず受け継いでいかねばならぬのじゃ。もし定期的に帰れないなら、ヒイデを倒しても旅人として認めぬ。」
「そ、そんなぁ~。でも、そもそも倒せるかもわからないのにそんな話をしてる場合じゃなかった。必ずヒイデを倒せるように修行してこなくちゃ!」
そう言うとナガツは家から駆け出した。
「では、二人とも協力ありがとうございました。表に馬車が待機してるから、それを使って帰りなさい。」
「「お邪魔しましたー。」」
馬車に乗り込んだケンギとロウコは、反省会を始めた。
「まさか、カテイの部下があんなに強かったなんて。下手したらカテイよりも強かった。」
「ケンギ君、私、全く役に立たなかった。ごめんね。」
「いいよ、別に。それよりも、ヒイデが後をつけてきてないか心配だ。ちょっとでも気を抜いたら、殺されてしまうかもしれない……。」
「大丈夫よきっと。あの魔物はカテイをリスペクトしてたみたいだから、いくら卑怯でも一線は越えないはずよ。」
「大丈夫だと良いけど……。」
「怯えるなんてケンギ君らしくないわよ。いつも勇敢に敵に立ち向かっているじゃない。」
「……そうだ。俺は勇気があるから強いんだ。ありがとう、ロウコ。そのことを忘れかけてたよ。」
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「承知しました。さ、早く出ていきなさい。」
「あの! ケンギたちは俺一人で殺してもいいですか?」
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「……はい、すみませんでした。」
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