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第二章 空中編

第十八話 いざスカイ王国へ

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 翌朝、ラルドとエメは朝食を食べていた。

「今日からスカイに行くのよね。母として鼻が高いわ」
「母さん、スカイがどんな国なのか教えてくれない?」
「うーん、空に浮かんでることくらいしか知らないわね。でも、どうやって浮かせてるのかは知ってるわよ」
「どうやってるの?」
「なんでも、スカイの下にあるサウス王国の賢者たちが浮かせてるんだって。凄いわよねー」
「サウス王国……ジシャン様の故郷か」
「あら、まだイメージが固まっていない感じ? お日様がここよりも近くて、ぽかぽかしてそうよねー」
(母さん、能天気だな)

 朝食を食べ終えた二人は、食器をキッチンへ運んだ。その後、荷物を持って玄関まで歩く。

「じゃあ、母さん、いってきます」
「いってらっしゃい。気をつけてね」

 二人は外へ出て、ニキスの元へ行く。先に待機していたレイフたちが二人を見つける。

「おお、ラルド君、エメ君、来たか」
「おはようございます。ニキス、目は大丈夫か」
「うむ。まだちょっと痛いが、視界は戻ってきた」
「じゃあ、これは何本かわかるか?」

 ラルドはニキスに向かって、指を三本立てる。

「三本だな」
「とんでもない再生力だな。たった一日で回復するなんて」
「私たちの世界ではこれが普通だ。さあ、背中に乗りなさい。スカイまで連れていってあげよう」

 ニキスは身体を倒し、一行が背中に乗るのを待つ。一行は続々と背中に乗っていく。全員が乗る頃、ニキスは起き上がろうとした。

「さて、そろそろ起き上がって良いかな」
「うん、みんな乗ったよ。さあ、いざ、スカイへ!」
「良いかけ声だ。それでは、向かおう」

 ニキスは翼を動かし、空へ上がった。スカイのある方向に向き、前に飛んでいく。風が気持ち良い。

「ニキス、スカイに着くまでにどのくらいかかるんだ」
「まあ、そう慌てるな。急いで飛んでしまうと、お前たちを振り落としちゃうかもしれないからのんびり行こう」
「それじゃあ、スカイについて何か知ってることがあったら教えてくれないか」
「……知ると後悔することになるぞ」
「え?」
「まあ、後悔しない範囲で教えてやろう。まず、スカイは地上の人間たちによって浮かべられてる王国だ。住んでる者は人間や翼を持つ生物が多い。それ以外のことは……現地に行けばなんとなくはわかるだろう」
「なんで隠すんだよ。全部明かしてくれたって良いじゃないか」
「そもそも、私はスカイに行くのは避けたいのだ。勝負に負けてしまったから仕方なく行くが、あんなところに長居はするもんじゃない」
「そんなに嫌な場所なのか?」
「ああ。嫌な場所だ。ちなみに一つだけ言っておこう。くれぐれも自分たちが地上の人間であることを明かしてはいけないぞ」
「ラルド君、ニキス君の言う通りだ。俺たちがいるから速攻でバレてしまうかもしれないが、地上人であることは口に出してはいけない」
「は、はい(レイフ様まで……一体、なんなんだろう)」
「さあ、そろそろ着くぞ。出来るだけ目立たないところに着地する」

 ニキスは目立たないであろう端の方に着地した。一行はニキスの背中から降りた。全員降りたのを確認すると、ニキスはとあることを始めた。

「さて、私も仮の姿を取ろうかな」
「仮の姿?」
「私はこの国に詳しい。お前たちに道案内してやろうと思ってな」

 ニキスは変身し、竜の翼をはやした人間のような姿になった。

「さて、レイフとやら、まずはどこへ行くつもりだ?」
「王に会って、サフィアの情報を持ってないか教えてほしいな」
「早速王に謁見するのか。気が早いな」
「他の奴に話しかけたって無駄だろうしな」
「ほう、良くここを知っているな。でも、王は余計無駄だと思うぞ」
「王まであんななのか?」
(なんの話をしてるんだろう)

 ラルドは話についていけていない。

「王には会ったことはないのか。ま、百聞は一見にしかずって言うし、一回会わせるのもありか。じゃあ、ついてきてくれ」

 一行はニキスの後を追う。人の量が多い場所に近づくにつれ段々と音が大きくなる。あと数歩というところで、ラルドはレイフに呼び止められた。

「ラルド君、一度エメ君を隠したまえ」
「え、どうしてですか」
「テイマーは地上人だって疑われやすいんだ。魔物なんか引き連れてたら、それがバレてしまう。だから、一旦エメ君には抜けてもらわなくちゃいけない」
「でも、そうだったらここに姉さんはいないってことに……」
「それは捜してみなきゃわからない。とりあえず今はテイマーであることは隠した方が良いだろう」
「エメ、それで良いか?」
「やむを得ないな。さっさと家に帰らせてくれ」
「お前、喜んでないか……?」
「い、いや全然。あー! 旅が出来ないなんて寂しいなー!」
「……また呼ぶから、それまでゆっくり休んでろ」

 ラルドはエメを魔法陣で自宅へ帰した。

「さて、ゴブリンも帰ったことだし、いよいよ城へ向かうぞ。そこの門を通れば、王国に入れる」

 一行は門の前に立った。しかし、門番がどこにもいない。

「ニキス、この門、変じゃないか? 門番がいないじゃないか」
「どうせ誰も来ないって高をくくってるんだ。ほら、鍵もかかってない」

 ニキスが扉の片側を押すと、あっさりと門は開いた。

「こんなあっさり入れちゃって……何かされないかな」
「地上人であることを黙ってれば大丈夫だ」

ラルドたちが話していると、一人の女性が寄ってきた。

「まあ、コクリュウさん。後ろの人たちは地上人?」
「いいや、私のツレはみんなここの人間だ」
「うーん、でも、後ろの三人って、魔王討伐隊の人たちに凄く似てるような」
「気のせいだ」
「うーん、そう言われてみればそうかも。悪かったわね、疑っちゃって」

 女性はどこかへ去っていった。

「これじゃいずれはバレちゃうわね。呪文で一時的に見た目を変えましょうか」

 レイフとウォリア、ジシャンは呪文で見た目を変えた。全員翼をはやした姿になった。

「ラルド君も、はい」

 ラルドは花で作った冠を被せられた。

「ジシャン様、これはなんですか?」
「スカイの人たちが良くつけてる冠よ。それを被ってたら、まずは疑われないはずだわ」
「あの、さっきから地上人がどうのって言ってますけど、バレたらどうなるんですか?」
「ああいう風になるわよ」

 ラルドはジシャンが指差す方を見る。そこには、カタラたちの姿があった。

「カタラ! もうワイバーンを「待ちなさい」

 カタラたちに近づこうとしたラルドをジシャンは掴んだ。

「ジシャン様、なんですか」
「黙って見ていなさい」

 いつになく冷たい口調でジシャンはラルドを止めた。カタラたちはあっという間に兵士たちに囲まれる。

「お前たち、地上人だな!」
「それがどうしたって言うんだよ。俺たち用事があるんだ。どけ」
「かかれー! 地上人をこっから落とすぞー!」
「なに! ワイバーン、一旦乗せてくれ!」

 カタラたちは槍で刺される直前にワイバーンに乗り、空へ逃げた。しかし、翼をはやした者たちがカタラたちに襲いかかる。

「俺たちが何をしたって言うんだよ!」
「地上人であることそのものが罪だ。早くここから出ていけ」
「カタラ、対策を練ってからまた来ましょ。今は命が危ないわ」
「……仕方ない。そうするか。あばよ! クズ野郎ども!」

 カタラたちは急いで地上へ逃げていった。

「そんな……地上にいるってだけであんなに差別されるなんて……テイマー差別がかわいく見えてきそうだ。ジシャン様、なんでここの人たちはあんなに地上人を嫌うのですか」
「わからないわ。でも、私たちが魔王討伐記念のときにここへ来たときも似たようなことをされたわ」
「王に会ったら、僕が聞いてみます」
「ラルド君、そんなことを聞いたら地上人だってバレちゃうからやめた方が良い」
「レイフ様は気にならないんですか?」
「気になるが、命まではかけられないからな。ラルド君が死んだら俺たちも困るから、今回は諦めてくれ」
「……はい」
「話は済んだか? さっさと城へ向かうぞ」

 一行はニキスに連れられ城へ歩き始めた。
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