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第一章 地上編
第十六話 竜との激闘
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レイフの家の前に着いた二人は、扉をノックする。すると、キャイが扉を開けた。
「二人ともおかえりなさい。何か成果はあったかい」
「ホースを全員分仲間にしたよ。一匹はダークホースっていう魔物だ」
「それはご主人様も喜ばれるだろう。早速ご主人様たちにも伝えにいきなさい。いつもの部屋にみんないるから」
二人はいつもの部屋へ行った。レイフたちが座って待っていた。
「おかえり。どうだい。ホースなりウルフなりテイムしたか?」
「はい。三匹はホースで、もう一匹はダークホースっていう奴です」
「ダークホースか。良く仲間に出来たな」
「大蛇の肉をあげたら仲間になってくれました」
「ちょっと乗り心地を確認したいから、裏庭でそいつらを召喚してくれないか」
「わかりました。先に裏庭に行って、ホースたちを呼び出しておきます」
ラルドは真っ先に裏庭へ向かった。裏庭に着いた後、ホース三匹とメジスを召喚した。
「お前たちにも手綱と鞍をつけないとな」
ラルドは普通のホース三匹に手綱と鞍をつける。つけ終わった頃、三人が裏庭へやってきた。
「あ、レイフ様。ご覧ください。今日こいつらを仲間にしてきました」
「よし、みんな、乗り心地をチェックするぞ」
レイフたちは普通のホースに乗り、裏庭をまわり始めた。一方ラルドは、メジスの背中に乗るのに苦労していた。
「おいラルド、もっと足を上げるんだ」
「も、もう限界だ。これ以上は上げられない」
ラルドがそう言うと、メジスは足を曲げ、姿勢を低くした。そのおかげでようやく乗馬することが出来た。エメも後ろから乗馬する。
「さあメジス、この裏庭をまわろう」
「ヴィヒーン!」
メジスはとてつもない速さで裏庭を旋回する。しっかり捕まっていないと、振り落とされてしまいそうな速さだ。風に押され、髪が後ろに流される。
「ちょ、速すぎるぞこいつ」
「メジス、もっとゆっくり走れないか。この速度じゃ僕たち乗ってられないよ」
その言葉を聞いたメジスは速度を落とす。普通のホースよりちょっとだけ速いくらいの速度になり、ラルドたちは快適に乗れるようになった。
「メジス、走りはもう十分だ。歩きを見たい」
メジスは速度を落とし、歩行に切り替える。巨体ゆえに、一歩一歩が普通のホースより長く、速い。先に裏庭をまわっていたレイフたちを、余裕で追い越していった。一周を終え、ラルドとエメはメジスから降りた。
「メジス、ありがとう。これから移動することがあれば呼ばせてもらうよ」
「ヴィヒーン!」
メジスは魔法陣の上に立ち、どこかへと帰っていった。遅れて、レイフたちがやってきた。レイフは開口一番メジスを褒め称えた。
「やあ、ダークホース、凄かったな。速いとは聞いてたが、まさかあそこまで速いとはな」
「僕たち、振り落とされちゃいそうになりましたよ」
「俺たちも乗り心地の確認は終わった。ホースはここに置いていっても大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です」
レイフたちはホースから降りると、柵にホースたちを繋げた。
「これで準備万端だな。あとは、決戦の日を待つのみだ。さあ、日も落ちてきたし、飯にしよう」
一行は食事の準備を始めた。
それからあっという間に月日は流れ、ついに竜と戦う日がやってきた。
「じゃあみんな、行こうか」
ホースに乗った一行は、ツカイ村へ向かっていった。ツカイ村方面出口の門番はレイフの顔パスで門を開けた。
ツカイ村に着いた一行。その元にルビーが走ってくる。
「おお、ラルド。帰ってきたか。何か嫌なことでもあったのか? 俺に出来ることがあるならするぞ」
「父さん、今日、あそこで竜と戦うんだ。だから、帰ってきたわけじゃない」
「なっ、竜だと! 勇者どもめ、サフィアだけじゃなくてラルドにまでそんなことをさせようと……」
「父さん、決めたのは僕だ。レイフ様たちじゃない」
「俺も加勢するぞ。竜に勝つにはそれしかない」
「いや、一人でやらせてほしい。そうじゃないと、竜をテイム出来ないんだ」
「テイム……? お前、ゴブリンで限界って言ってたじゃないか」
「なんでかわからないけれど、今はいっぱいテイム出来るんだ。きっと、この本のおかげだ」
「その本は、サフィアの書いた本だな。こんなもの、どこから掘り出してきたんだ」
「レイフ様からもらった」
「そうか……しかし、竜に勝てる見込みはあるのか」
「多分勝てる。僕一人で勝てば、晴れて竜は僕の仲間さ」
「不安でしょうがない。死にかけたら助けられるよう、俺たちも観させてもらうぞ」
一行の後を、ルビーはついてくる。イライラしているのか、足音が大きい。
数日前、大蛇を狩った場所にラルドたちはたどり着いた。竜はまだ来ていないようだ。
「待ち遠しいな。準備体操でもするか」
「僕はいいや。少し瞑想するよ」
「瞑想って、なんでするんだ」
「流れを感じ取れるようにだ」
「なんか良くわかんないけど、大事なんだな。でも俺は体操をするぜ」
そうして待っているうちに、大きな羽ばたく音が聞こえてきた。咆哮も聞こえる。
「この音……竜に違いない。ラルド、そろそろ立つんだ」
「わかってる。よっこいしょ」
ラルドが立ち上がった頃、竜はそこに降り立った。レイフに刺された目が復活している。
「一週間ぶりだな。ラルドよ」
ラルドは剣を引き抜く。仲間たちをいつでも呼び出せるように、左手に力を込めている。
「ごたくはいらない。さっさと始めよう」
「おお、そうか。その前に一つだけ訊かねばならぬことがある。お前はテイマーか?」
「そうだが、それがどうした」
「テイマーならば仲間の呼び出しはノーカウントだ。いくらでも呼び出すが良い。では、始めるぞ」
竜は口を開き火の玉を徐々に大きくしていく。炎のブレスを吐くつもりなのだろう。ラルドはフンスとメジスを召喚し、準備万端だ。
「フンスは、大群を呼んでくれ。メジスは、僕を乗せてくれ」
「おいラルド、俺は何をすれば良いんだ?」
「うーん、後で決めるから、待っててくれ。じゃあな」
「あ、おい! ちっ、調子乗りやがって……」
「メジス、あいつのブレスを阻止するんだ。口めがけて跳んでくれ」
「ヴィヒーン!」
メジスはとてつもない速度で竜に近づき、口元へジャンプする。ラルドは口の前にチャージされている火の玉を剣で破壊した。しかし、竜自体はビクリとも動かない。
「フハハハ! 地上から放とうとしてダメなら、空から放ってやる。この森が焦土になっちまうかもな!」
竜は空へ高く舞い上がり、またもブレスを溜め始める。ラルドはメジスから降り、風の呪文で飛び上がった。オークの大群も、肩車で連結して竜と同じ高さまで上がってきた。
「えい! その火の玉、かき消してやる」
「ほう、風の呪文か。やるではないか。だが、いつまでも浮くのは無理だろう。お前が疲れるまでの消耗戦よ」
ラルドは弱点の目を狙い、剣を振るう。オークも目を狙う。しかし、竜の動きは俊敏で、目を攻撃出来ない。竜は炎のブレスを諦め、肉弾戦をしかけてきた。
「まずはオークどもから殺してやろう。フン!」
竜は一回転し、尻尾でオークを倒そうとした。オークたちは柔軟に曲がり、その攻撃を避けた。
(くそ、近づくと目をやられちまうかもしれないのに、近づくしかないのか……)
竜はオークのそばへ移動し、一番上のオークを叩き落とそうとした。その一撃を、棍棒で受け止めた。しかし、棍棒は今にも折れてしまいそうな程の威力で、いつまで持つかわからない。
「ぐうぅ、もう観念しろ」
「こっちばかりで良いのか? 反対側にはラルドがいるぞ」
ラルドは後ろから少しずつ近づき、目を刺そうとしていた。それに気づいた竜は尻尾でラルドを叩き落とす。
「ぐわっ!」
「へへ、叩き落としてやったわ。これでお前たちに集中出来る」
「なに、また上がってくるさ。それまで耐えるだけだ」
「そんな棒で、いつまで持つかな。ウォォ!」
竜はさらに力を込める。棍棒はミシミシと音を立てて折れていく。ついには棍棒が折れてしまった。
「なっ、棍棒が……」
「ここまでだな。最後の一発、食らえ!」
竜は思い切り拳を振り下ろした。そのとき、金属音がした。
「な、お前は……!」
「ふう、間一髪だったな」
エメが、剣で竜の拳を受け止めた。
「二人ともおかえりなさい。何か成果はあったかい」
「ホースを全員分仲間にしたよ。一匹はダークホースっていう魔物だ」
「それはご主人様も喜ばれるだろう。早速ご主人様たちにも伝えにいきなさい。いつもの部屋にみんないるから」
二人はいつもの部屋へ行った。レイフたちが座って待っていた。
「おかえり。どうだい。ホースなりウルフなりテイムしたか?」
「はい。三匹はホースで、もう一匹はダークホースっていう奴です」
「ダークホースか。良く仲間に出来たな」
「大蛇の肉をあげたら仲間になってくれました」
「ちょっと乗り心地を確認したいから、裏庭でそいつらを召喚してくれないか」
「わかりました。先に裏庭に行って、ホースたちを呼び出しておきます」
ラルドは真っ先に裏庭へ向かった。裏庭に着いた後、ホース三匹とメジスを召喚した。
「お前たちにも手綱と鞍をつけないとな」
ラルドは普通のホース三匹に手綱と鞍をつける。つけ終わった頃、三人が裏庭へやってきた。
「あ、レイフ様。ご覧ください。今日こいつらを仲間にしてきました」
「よし、みんな、乗り心地をチェックするぞ」
レイフたちは普通のホースに乗り、裏庭をまわり始めた。一方ラルドは、メジスの背中に乗るのに苦労していた。
「おいラルド、もっと足を上げるんだ」
「も、もう限界だ。これ以上は上げられない」
ラルドがそう言うと、メジスは足を曲げ、姿勢を低くした。そのおかげでようやく乗馬することが出来た。エメも後ろから乗馬する。
「さあメジス、この裏庭をまわろう」
「ヴィヒーン!」
メジスはとてつもない速さで裏庭を旋回する。しっかり捕まっていないと、振り落とされてしまいそうな速さだ。風に押され、髪が後ろに流される。
「ちょ、速すぎるぞこいつ」
「メジス、もっとゆっくり走れないか。この速度じゃ僕たち乗ってられないよ」
その言葉を聞いたメジスは速度を落とす。普通のホースよりちょっとだけ速いくらいの速度になり、ラルドたちは快適に乗れるようになった。
「メジス、走りはもう十分だ。歩きを見たい」
メジスは速度を落とし、歩行に切り替える。巨体ゆえに、一歩一歩が普通のホースより長く、速い。先に裏庭をまわっていたレイフたちを、余裕で追い越していった。一周を終え、ラルドとエメはメジスから降りた。
「メジス、ありがとう。これから移動することがあれば呼ばせてもらうよ」
「ヴィヒーン!」
メジスは魔法陣の上に立ち、どこかへと帰っていった。遅れて、レイフたちがやってきた。レイフは開口一番メジスを褒め称えた。
「やあ、ダークホース、凄かったな。速いとは聞いてたが、まさかあそこまで速いとはな」
「僕たち、振り落とされちゃいそうになりましたよ」
「俺たちも乗り心地の確認は終わった。ホースはここに置いていっても大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です」
レイフたちはホースから降りると、柵にホースたちを繋げた。
「これで準備万端だな。あとは、決戦の日を待つのみだ。さあ、日も落ちてきたし、飯にしよう」
一行は食事の準備を始めた。
それからあっという間に月日は流れ、ついに竜と戦う日がやってきた。
「じゃあみんな、行こうか」
ホースに乗った一行は、ツカイ村へ向かっていった。ツカイ村方面出口の門番はレイフの顔パスで門を開けた。
ツカイ村に着いた一行。その元にルビーが走ってくる。
「おお、ラルド。帰ってきたか。何か嫌なことでもあったのか? 俺に出来ることがあるならするぞ」
「父さん、今日、あそこで竜と戦うんだ。だから、帰ってきたわけじゃない」
「なっ、竜だと! 勇者どもめ、サフィアだけじゃなくてラルドにまでそんなことをさせようと……」
「父さん、決めたのは僕だ。レイフ様たちじゃない」
「俺も加勢するぞ。竜に勝つにはそれしかない」
「いや、一人でやらせてほしい。そうじゃないと、竜をテイム出来ないんだ」
「テイム……? お前、ゴブリンで限界って言ってたじゃないか」
「なんでかわからないけれど、今はいっぱいテイム出来るんだ。きっと、この本のおかげだ」
「その本は、サフィアの書いた本だな。こんなもの、どこから掘り出してきたんだ」
「レイフ様からもらった」
「そうか……しかし、竜に勝てる見込みはあるのか」
「多分勝てる。僕一人で勝てば、晴れて竜は僕の仲間さ」
「不安でしょうがない。死にかけたら助けられるよう、俺たちも観させてもらうぞ」
一行の後を、ルビーはついてくる。イライラしているのか、足音が大きい。
数日前、大蛇を狩った場所にラルドたちはたどり着いた。竜はまだ来ていないようだ。
「待ち遠しいな。準備体操でもするか」
「僕はいいや。少し瞑想するよ」
「瞑想って、なんでするんだ」
「流れを感じ取れるようにだ」
「なんか良くわかんないけど、大事なんだな。でも俺は体操をするぜ」
そうして待っているうちに、大きな羽ばたく音が聞こえてきた。咆哮も聞こえる。
「この音……竜に違いない。ラルド、そろそろ立つんだ」
「わかってる。よっこいしょ」
ラルドが立ち上がった頃、竜はそこに降り立った。レイフに刺された目が復活している。
「一週間ぶりだな。ラルドよ」
ラルドは剣を引き抜く。仲間たちをいつでも呼び出せるように、左手に力を込めている。
「ごたくはいらない。さっさと始めよう」
「おお、そうか。その前に一つだけ訊かねばならぬことがある。お前はテイマーか?」
「そうだが、それがどうした」
「テイマーならば仲間の呼び出しはノーカウントだ。いくらでも呼び出すが良い。では、始めるぞ」
竜は口を開き火の玉を徐々に大きくしていく。炎のブレスを吐くつもりなのだろう。ラルドはフンスとメジスを召喚し、準備万端だ。
「フンスは、大群を呼んでくれ。メジスは、僕を乗せてくれ」
「おいラルド、俺は何をすれば良いんだ?」
「うーん、後で決めるから、待っててくれ。じゃあな」
「あ、おい! ちっ、調子乗りやがって……」
「メジス、あいつのブレスを阻止するんだ。口めがけて跳んでくれ」
「ヴィヒーン!」
メジスはとてつもない速度で竜に近づき、口元へジャンプする。ラルドは口の前にチャージされている火の玉を剣で破壊した。しかし、竜自体はビクリとも動かない。
「フハハハ! 地上から放とうとしてダメなら、空から放ってやる。この森が焦土になっちまうかもな!」
竜は空へ高く舞い上がり、またもブレスを溜め始める。ラルドはメジスから降り、風の呪文で飛び上がった。オークの大群も、肩車で連結して竜と同じ高さまで上がってきた。
「えい! その火の玉、かき消してやる」
「ほう、風の呪文か。やるではないか。だが、いつまでも浮くのは無理だろう。お前が疲れるまでの消耗戦よ」
ラルドは弱点の目を狙い、剣を振るう。オークも目を狙う。しかし、竜の動きは俊敏で、目を攻撃出来ない。竜は炎のブレスを諦め、肉弾戦をしかけてきた。
「まずはオークどもから殺してやろう。フン!」
竜は一回転し、尻尾でオークを倒そうとした。オークたちは柔軟に曲がり、その攻撃を避けた。
(くそ、近づくと目をやられちまうかもしれないのに、近づくしかないのか……)
竜はオークのそばへ移動し、一番上のオークを叩き落とそうとした。その一撃を、棍棒で受け止めた。しかし、棍棒は今にも折れてしまいそうな程の威力で、いつまで持つかわからない。
「ぐうぅ、もう観念しろ」
「こっちばかりで良いのか? 反対側にはラルドがいるぞ」
ラルドは後ろから少しずつ近づき、目を刺そうとしていた。それに気づいた竜は尻尾でラルドを叩き落とす。
「ぐわっ!」
「へへ、叩き落としてやったわ。これでお前たちに集中出来る」
「なに、また上がってくるさ。それまで耐えるだけだ」
「そんな棒で、いつまで持つかな。ウォォ!」
竜はさらに力を込める。棍棒はミシミシと音を立てて折れていく。ついには棍棒が折れてしまった。
「なっ、棍棒が……」
「ここまでだな。最後の一発、食らえ!」
竜は思い切り拳を振り下ろした。そのとき、金属音がした。
「な、お前は……!」
「ふう、間一髪だったな」
エメが、剣で竜の拳を受け止めた。
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