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14、コンラート4世

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 僕はハインリヒ7世に頼まれて、彼の父フリードリヒ2世について調べ始めた。ニコラス先生に本を借りたのだが、分厚いラテン語の本を全部丁寧に読むことは今の僕にはできない。とりあえず重要なことが書いてありそうな年代と内容をノートに書き写した。

1194年 フリードリヒ2世生まれる。
1209年 アラゴンの王女コンスタンサと婚約する。
1211年 ハインリヒ7世生まれる。
1220年 エンツォ生まれる(庶子)
1225年 エルサレム王の娘イザベルと結婚する。
1228年 コンラート4世生まれる。
1232年 マンフレーディ生まれる(庶子)
1234年 ハインリヒ7世反乱を起こす。
1235年 イングランド王女イザベラと結婚する。
1237年 コンラート、ローマ王となる。
1242年 ハインリヒ7世亡くなる。
1249年 エンツォ、ボローニャ軍に捕らえられる。
1250年 フリードリヒ2世亡くなる。
1252年 コッラディーノ(コンラート4世の子)生まれる。
1254年 コンラート4世亡くなる(病死)。
1266年 マンフレーディ、戦死する。
1266年 コッラディーノ、シャルル・ダンジューと戦って捕らえられる。
1268年 コッラディーノ処刑される(斬首刑) 
1272年 エンツォ、ボローニャの牢獄で亡くなる。

 ある晩、僕の部屋にハインリヒ7世がやってきた。前のようにもう顔に仮面はつけてなくて、前より若くなっているように見えた。彼は修道士の服ではなく、僕たちが畑仕事をする時に使う茶色の作業着に似た服を着ていた。

「どうしてそんな恰好をしているの?」
「この前の反省から、王宮に忍び込むときは修道士姿は怪しまれるとわかった。庭師の方が目立たなくていい」

 ハインリヒ7世は机の上にある僕のノートをじっと見た。

「余が死んだ後、父上や弟たちがどうなったか、何かわかったか?」
「少しわかったけど、でも・・・」
「大体のことはわかっている。教皇との争いに敗れて、みんな死んでいる」
「そうだね・・・」

 僕はノートを見ながら説明した。特にコッラディーノのところで涙が出た。彼は僕と同じ14歳で捕らえられ、16歳で処刑されている。

「生きていた頃、余は敬虔なキリスト教徒で教皇が1番正しいと信じていた。だからこそ教皇に逆らっている父上を憎み反乱を起こした。でも本当は父上と教皇との争いに巻き込まれただけだった。余も、弟や甥まで、ほとんどその争いが原因で不幸な死に方をしている」
「最初にコンラート4世に会っておきたい。付き合ってくれるか?」

 僕は返事に困った。コンラート4世以外の彼の弟はみな庶子である。もし跡継ぎとなる彼がいなければ、反乱後のハインリヒ7世の待遇は違っていたかもしれない。僕も継母に子が生まれた後で父に捨てられている。不幸の原因になった異母弟になど会いたくない。でも、ハインリヒ7世は僕の気持ちを無視した。

「時間がない、早く作業着に着替えてくれ」




 目を開けると豪華な王宮の中庭にいた。噴水があり、美しい花が植えられている。庭師らしい人が作業をしながら話をしていた。

「聞いたか、コンラート様がまた病気で倒れたそうだ」
「大変ではないか。ハインリヒ様があのようなことになられたのだから、皇帝の跡継ぎはもうコンラート様しかいない」
「だが、あの方には生まれた時から不幸が付きまとっている。エルサレムの女王が母上でありながら、生まれた同じ日に母上は亡くなられた」
「そんなことまであったのか」
「皇帝と教皇の対立も激しくなっているようだ」
「まあ、そんな話は俺たち庭師には関係ない」

 僕たちの姿は彼らには見られていないようだ。僕たちは王宮に忍び込み、コンラートのいる部屋に入った。中には誰もいなくて、10歳くらいの少年がベッドで寝ていた。彼は少し起き上がり僕たちと目が合った。

「そこにいるのは誰?」
「すみません、私達はここに新しく雇われた庭師のハインリヒと見習いのフェリペです。慣れなくて王宮内で迷ってしまいました」
「ハインリヒ、兄さんと同じ名前だね。兄さんは反乱を起こして捕らえられ、代わりに僕が跡継ぎになった」
「父上は僕よりもエンツォ兄さんをかわいがっている。僕が生まれた日に母上は亡くなったから、僕はずっと父上に遠ざけられていた」
「・・・・・」
「もし今僕が病気で死んだら、ハインリヒ兄さんは厳しい罰を受けなくてすむのだろうか・・・」

 ハインリヒ7世はゆっくり少年に近付いた。

「私は庭師の格好をしていますが、本当は諸国を旅する詩人でもあります。風の音に人の言葉を感じ、遠く離れた人の心を感じ取って詩にするのです。あなたのお兄さんはあなたの死など望んではいません。ただ1人跡継ぎとなる資格があるあなたが強く生き、血をつないでいくことを望んでいるのです」
「本当ですか?」




 そして僕たちはまた元の部屋に戻ってきた。

「余はそなたの前で嘘をついた」






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