婚約者の彼から彼女の替わりに嫁いでくれと言われた

クロユキ

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庭園へ③

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ブラッドと合流したフォスティヌとセレーヌは三人で庭園を歩いていた。
「あ!見てフォスティヌさん、この木の枝を見て」
「枝をですか?」
フォスティヌは自分よりも大きな木を見上げ何本もある枝を見て首を傾げた。
「……枝に何かあるのですか?」
「右の枝が他の枝より短いのが分かるかしら?」
「…はい…折れているんでしょうか?」
「ふふふ、この木は兄さんと木登りをして折れてしまった枝なの」
「え!?木登り?」
フォスティヌは思わずブラッドの方へと顔を向けた。
「セレーヌ、昔の話しはしなくていい…」
「あら、兄さんとわたくしの思い出話をフォスティヌさんに聞いてもらってもいいじゃない」
セレーヌは不敵な笑みをブラッドに見せていた。
「えっ、セレーヌさん木登りをしていたの!?」
「ええ、わたくしが幼い頃兄さんと一緒に遊んでいた時わたくしが木登りをして下りる事ができなくて、そんなわたくしを助けに兄さんも木に登ったのだけど、わたくしと兄さんの重みで枝が折れてしまって、二人とも地面に落ちて大泣きをしたのを覚えているわ……」
セレーヌは木の幹を触り折れた枝を懐かしそうに見上げていた。
「そ、それで…ケガの方は……」
「兄さんとわたくしはかすり傷ですんだみたいよ」
「そうですか…」
「…子供の頃の話だ…」
胸を撫で下ろすフォスティヌにブラッドとセレーヌは苦笑いを見せていた。
「たぶん、その頃から塗り薬を持ち歩いていたと思うわ」
「塗り薬?なんの話だ?」
「兄さんがフォスティヌさんに渡したんでしょう?」
ブラッドはフォスティヌの方を見て考え事をしていた。
「……君に何か渡したのか?」
「せ…ブラッドさんが学園にいました時、私がブラッドさんにぶつかった時に鼻が赤くなっているからと言って塗り薬を貰いました」
困った顔で笑顔を見せるフォスティヌにブラッドは呟いた。
「……抱きしめてもいいか?」
「え?」
「セレーヌ」
ブラッドはセレーヌに目で訴えていた。
『そろそろ、俺とフォスティヌ二人にして欲しいんだが』
『はぁ、仕方ないわね…貸しだからね!兄さん』
「わたくし、そろそろ戻らないと…フォスティヌさんまたお話ししましょう」
「え、あ…はい」
「じゃあね、兄さん。お邪魔虫は帰りますわ」
ポン!とブラッドの肩を叩いたセレーヌは、屋敷へ戻り庭園ではブラッドとフォスティヌ二人だけとなった。







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