婚約者の彼から彼女の替わりに嫁いでくれと言われた

クロユキ

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フランシスの嘘②

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フォスティヌは、フランシスからプレゼントしてくれたブローチを渡しフランシスは震えた手でブローチを受け取った。
「…どうして…これは、僕がフォスティヌにプレゼントして…」
「…兄様もシャロンさんにプレゼントしたでしょう?」
「え…」
「おば様、兄様から貰っていないって言っていたから…」
「っ……」
「……」
(……本当は、おば様には聞いていないけど…あの手提げ袋はシャロンさんへのプレゼントだったんだ…私と別れて慌てて走って行った兄様を見て早くシャロンさんの所へ行きたかったんだ…)
「……私、馬鹿みたい…兄様と婚約して喜んで…私が学園を卒業したら一緒にいるんだって…色々考えて…でも、昨日兄様とシャロンさんを見て、それが叶わなくなってしまった…」
フォスティヌは泣きながら笑い、フランシスを信じて疑う事を考えてもいなかった自分に笑っていた。
「っ……フォスティヌ、待ってくれ!僕が悪かったフォスティヌに沢山嘘を言ってしまって君を傷つけてしまった…昨日、婚約破棄を伝えて、一人になって冷静になって考えて、後悔したんだ…シャロンが早く婚約破棄をして欲しいと言ってくるから、僕の屋敷にまで来たんだ…それで…僕はフォスティヌに話があると呼び出したんだ…僕にはまだフォスティヌが傍にいてくれないと…」
フォスティヌはフランシスの話を聞き、驚いていた。
「……何を言っているの?兄様…私達別れたんだよ、婚約解消のサインもしたんだよ…何を言って…」
「婚約解消はしてしまったけど…二人で会う事はできる…シャロンにわからないように会えば……」
フランシスはフォスティヌの手を掴み放そうとはしなかった。
「……最低だよ…兄様…こんなの私が知っている兄様じゃないよ」
グイッと掴んでいたフォスティヌの手を引っ張り、フォスティヌはフランシスの胸の中で抱きしめられた。
「っ!?あ、兄様、放して…」
「ああ…フォスティヌの匂いだ…昨日、君のクッキーを食べる事が出来なかった…メイドが捨ててしまったんだ…」
「!」
昨日フランシスとシャロンに投げたクッキーの話をしていた。
「でも、君が持って来た編み籠とクッキーが入っていた袋にピンク色の紐は僕が持っているんだ」
「……」
「ピンクの紐を見て、フォスティヌはピンク色が好きだった事を思い出したんだ…このブローチを手に取った君の顔はいまでも覚えているよ…」
「……ぅ…どうして…そんな話を……」
「……婚約破棄をしてからぽっかりと穴が空いた感じがして…」
フランシスはフォスティヌの頭にキスをして抱きしめていたフォスティヌの体を放し、涙を流すフォスティヌの顔を両手で支え指先で涙を拭っていた。
「僕が悪かった…フォスティヌと一緒にいると安心するんだ…」
「……私は…兄様に会えない……」
「な!?どうして…シャロンの事なら大丈夫だよ…わからないように会えば……」
「…シャロンさんを私と同じみたいに傷つけるの?」
「!ち、違うんだフォスティヌ…僕は」
「俺の婚約者を放してくれないか?」
「!?」
フランシスとフォスティヌが座るベンチの傍にはブラッドが険しい顔で立っていた。





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