婚約者の彼から彼女の替わりに嫁いでくれと言われた

クロユキ

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フランシスとの再会

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「人が多いからはぐれないように」
「はい…」
フォスティヌはブラッドの隣に並び行き交う人々に戸惑っていた
「…建物が綺麗ですね…すぐお店だと分かります…」
「貴族が多い場所でもあるが他の国から来た商人も出店を出している」
「え?他の国からでも来ているのですか?」
「ああ、各国を渡り歩き商売をしている商人がいるんだ。ここで手続きを終え数週間滞在してまた別の国へ行くんだ」
「へぇ…だから、見た事もない品物があるんですね」
賑わう街中はどこも同じだとフォスティヌは思い、ブラッドと一緒に歩く街中は隣街で一緒に歩いた日を思い出す。
「でも、何故城内で兄様と会うのですか?」
「フランシスが俺を捜していた場所でもあるが、俺が城内でと言ってしまったのもある…」
「兄様が先輩を捜して?」
「……」
ブラッドは、フランシスがシャロンと一緒になるため自分を捜していたとフォスティヌには言えなかった。

ブラッドとフォスティヌがフランシスとの待ち合い場所に向かっている頃、先にフランシスは公園のベンチに座っていた。
まだ、明るいため周りは親子連れが多く、恋人達は数名ほどだった。
「……」
フランシスは久しぶりに騎士学校へ行ったが稽古中は注意を受ける事が多く、思うように稽古が出来なかった。
「……書類にもサインをして明日にはシャロンが喜ぶ姿が見えるのに……」
婚約破棄の書類を目の前にして、サインを書く事ができずにいた
「……やっと書類にサインをして…騎士学校に遅刻して叱りを受けるなんて笑ってしまう…」
賑わう親子の姿を見て気が抜けたように座っていたフランシスの傍にエリアが声をかけていた。
「フランシスさん?どうしたのですか?早い時間に来ているなんて…」
「……君か…」
下を向くフランシスにエリアは隣に座りフランシスの顔を心配そうに見ていた。
「…そんな顔をしなくても大丈夫だから…ちょっと騎士学校で稽古の注意を受けただけだから…」
「でも…」
フランシスの膝の上に手を置くエリアに笑みを見せていた。
「…心配してくれているの?…ありがとう…」
「……今日は…してくれないのですか?…」
エリアは目を逸らし恥ずかしそうにフランシスに聞いていた。
「…今から、同期とここで会う約束をしているんだ…話が終わった時にここに来て…」
「はい…わかりました」
隣に座っていたエリアは立ちフランシスの傍をはなれ、少しはなれたベンチに座り、後ろからフランシスの後ろ姿をじっと見ていた。
フランシスとの待ち合い場所に来たブラッドとフォスティヌは、はなれていても分かるフランシスの姿にフォスティヌは、歩く足を止めてしまった。
「……大丈夫か?……無理に今日会わなくてもいいが…」
「……シャロンさんと婚約をしたら…もう兄様とはお話しができないような気がして…」
「そうだな……会う事はできる…だが、俺が二人にするかどうかはわからないが…」
「え」
フォスティヌは隣に立つブラッドを見上げていた。
「…もう君は、俺の婚約者になっているんだ…元婚約者に会わせてやれるかどうかは今は何も言えない…本当の所フランシスとは会って欲しくないのが俺の本音だ…」
「……」
フォスティヌは頬を染めブラッドを見上げていた顔を下に向けていた。
「……どうして今日は兄様に会わせてくれたのですか?」
「君がフランシスに何も話していないと聞いて…よけいな事かもしれないが……」
「……いえ、ありがとうございます…では、行って来ます」
「…俺は近くにいる…」
「はい…」
フォスティヌはブラッドからはなれ、ベンチに座るフランシスの元へ歩いて行った。







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