婚約者の彼から彼女の替わりに嫁いでくれと言われた

クロユキ

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フォスティヌのお客様②

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フォスティヌの屋敷ではバタバタと忙しくする中、今夜、屋敷へ行くと言っていたブラッドは騎士服を脱ぎ出かける準備をしていた。
「さっきまで食堂にいた奴が、もう部屋に戻ってる」
着替えるブラッドに話しかけたのは同僚のショーンだった。
「先にすませたんだ」
「…出かけるのか?」
「ああ…」
「お前もやっと娼婦館に行く気になったか」
「行くわけないだろう!」
声を出してからかうショーンにブラッドはため息を吐いていた
「そう言えば、お前今日女の子達と一緒だったんだって?」
「…誰が言ったんだ?」
「ああ、レッド達だよ。お前を探していたら噴水広場のベンチに座る女の子と一緒だったと話していたぞ、誰だよ?その女の子…いつの間に任務中に見つけてくるんだ?」
「……彼女は学園の後輩だ…任務中に噴水広場を通った時ベンチに座っていたから声をかけただけだ…」
「……珍しいな…お前から女の子に話しかけるなんてさ…いつもは女が先にお前に話しかけてくるんだけど…」
「……」
ジロジロとブラッドの着替える所を見ていたショーンはいつも着る服を見て「女性に会いに行く服じゃないよな…」と声に出していた。
「もしかして、例の夫婦の所へ行くのか?」
「違う、彼女の屋敷へ行く」
「そうか、彼女の屋敷……はあ~?!かの…おま……」
「じゃあ、行って来る!少し遅くなるかもしれない」
「え、え?!遅くっ……おい、ブラッド!」
ショーンの呼び止める声を無視してブラッドは部屋を出て騎士寮の外へと出た。
「さて…彼女の屋敷まで少し距離があるな…歩いて行くわけにはいかないし…俺の屋敷で馬車を借りるか…」
ブラッドの屋敷は城の近くに建ち、父親は屋敷から城へ通い息子のブラッドは寮に住んでいた。
「…あまり、屋敷へは行きたくないが……」
ブラッドは屋敷へ着くとベルを鳴らし屋敷内から執事が扉を開け目の前に立つブラッドに驚いていた。
「ブラッド様!?」
「急に来て悪いが、馬車を借りたいんだ。今すぐ出せる馬車はあるのか?」
「え、馬車で御座いますか?はい、準備を致しますので旦那様とお会いになりますか?」
「いや、今日はやめておく……」
「わかりました。しばらくお待ちください」
「ああ…」
「ブラッド!?」
「!」
屋敷のないを歩いていたブラッドの父親が執事と話しているブラッドに気付き声をかけた。
「珍しいな、お前が屋敷へ帰ってくるとは、食事はすませたのか?」
「食堂ですませた…」
「そうか、城内ではお前と会う事が少ない為、話をすることもできない…せっかく帰って来たのだ。時間があるなら食事部屋で話さないか?お前に話したい事がある」
「……はぁ…求婚の話だろう?」
ブラッドはため息を吐き父親に声をかけた。
「!ああっ、よくわかったな」
「屋敷へ帰れば結婚を勧めれば、親父が何が言いたいのか分かる…」
「私も何度も言いたくはないが、お前ももうすぐ二十歳になる毎日のようにお前との縁談話が来ているんだ。令嬢達と会うだけでも良いだろう?とくに、コンベルト伯爵家のシャルロット令嬢はものしずかな性格だと聞く、お前に毎日のように手紙を出している…一度会って見てはどうだ?」
父親はブラッドに会うだけでもと話をしていた。
「俺は、誰とも会うつもりはない、縁談の話も断る」
「はぁ…どうしてお前は女性に興味がないんだ?…まさか、男が……」
「それは無い!」
「……こほん、そ、そうか…それを聞いて安心した……それなら」
「気になる女性はいる……」
「えっ!?」
ブラッドは父親に話をした。
「ブラッド様、馬車の用意が出来ました」
「ありがとう」
「馬車?……何処へ行くんだ?」
「気になる女性の屋敷へ行く所です。馬車は借りて行く」
「……」
ブラッドは父親に馬車を借りてフォスティヌの屋敷へ向かって行った。
「……誰だ?……その、気になる女性は……」





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