婚約者の彼から彼女の替わりに嫁いでくれと言われた

クロユキ

文字の大きさ
上 下
84 / 174

モヤモヤとするのは…

しおりを挟む
フォスティヌを見送ったフランシスは馬車が見えなくなるまで見ていた。
「これで、ブラッド君が彼女を食事会の日に連れて来ましたら、わたくし達は婚約者としてお父様に認めて貰えるわ。愛しているわ!フラン」
「……」
玄関の外でフランシスにキスをするシャロンに屋敷のメイド達に使用人達は驚き二人の姿を見ていた。
「何をしている!仕事に戻れ!」
「は、はい」
メイドに使用人達はフランシスの父親から言われ慌てたように各自持ち場へと向かった。
フランシスの父親はフランシスとシャロンの前に来るとシャロンに声をかけた。
「……屋敷の者がいる前では止めてくれないか?まだ、君はフランシスの婚約者ではない」
「……」
フランシスの父親から注意されたシャロンは頭を下げ謝る姿を見せていた。
「失礼しました。お義父様、これから気をつけますわ。婚約破棄の書類が三日後と伺っていますので、手続きが終わりましたらわたくしの屋敷で婚約発表をいたします。フランシス様を通じましてお知らせいたします。父が待っていますのでわたくしは失礼いたします。」
「……」
父親はシャロンに何も言わず黙って聞いていた。
「フラン、三日後屋敷で待っているわ」
「……」
フランシスに軽く口付けをしたシャロンはメイドと一緒に屋敷へと帰って行った。
フランシスはシャロンが帰っても黙ったまま外をじっと見ていた
「はあ……」
父親がため息を吐くと母親が傍へと歩いて来た。
「……お父さん、彼女は……」
「…今、帰ったところだ…フランシスの婚約破棄が知れ渡るのも時間の問題だ…屋敷のメイドや使用人が知ってしまった…」
「…そんな……」
「遅かれ早かれ…書類の手続きを終わらせないと……」
両親が話している時、フランシスは一人のメイドに気付き走り出しメイドを引き止めていた。
「フォ…フォスティヌが持って来たクッキーは何処にあるんだ?」
「えっ!?ぼ、坊っちゃま?しょ…処分しましたが……」
「な!?処分だと?」
「…はい…坊っちゃまとお連れのお嬢様に確認をいたしまして生ゴミとして捨てましたが…」
「……っ」
フランシスはフォスティヌが持ってきたクッキーが捨てたと聞き肩を落とす姿を見たメイドが、何かを思い出してフランシスに話をした。
「……あの、お嬢様が持って来ました編み籠とクッキーが入っていました袋と紐は厨房にあると思いますが……」
「!!」
フランシスはメイドの話を聞き厨房へと向かった。
その頃、厨房では料理人とメイド達がフランシスとシャロンの話をしていた。
「しかし、酷いもんだな…まさか、坊っちゃんが嬢ちゃんを捨てるとは……」
「でも、連れていた女は美人だったな~っ、さすがフランシス坊っちゃま顔が良いと女も良いよな~」
「褒めてどうすんのよ!これだから男は美人に弱いんだから」
「さっきは驚いたわ。私達がいるのを知って坊っちゃまにキスするなんて…あ~ヤダヤダ!」
「……」
フランシスは、厨房の側に立ち止まり使用人達の話し声を黙って聞くと厨房の中へ入り皆驚いてフランシスを見ていた。
「……フォスティヌの編み籠はあるのか?」
「えっ!?お嬢様の……ああ!有ります、有ります」
メイドの一人が棚から編み籠を取り出しフランシスに渡していた。
「……あの…坊っちゃま、クッキーの方は……」
「…ああ、僕が捨てるように言ったから…籠は持って行くよ」
「……」
厨房を出たフランシスはフォスティヌが持って来た籠を持ち部屋へと入っていった。
テーブルの上に籠を置いたフランシスはソファーに座り編み籠をじっと眺めていた。
籠の中からクッキーが入っていた袋を手に取り甘い香りだけが残っていた。
「……ピンクが好きだな…」
ピンクの紐を籠から取り出したフランシスはクスッと笑みを見せていた。フランシスは久しぶりに見たフォスティヌを怒らせ泣きたいのを我慢する姿を初めて見たのだった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】愛することはないと告げられ、最悪の新婚生活が始まりました

紫崎 藍華
恋愛
結婚式で誓われた愛は嘘だった。 初夜を迎える前に夫は別の女性の事が好きだと打ち明けた。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました

As-me.com
恋愛
完結しました。  とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。  例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。  なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。  ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!  あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

婚約者を想うのをやめました

かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。 「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」 最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。 *書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです) hotランキング1位入りしました。ありがとうございます

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

処理中です...