婚約者の彼から彼女の替わりに嫁いでくれと言われた

クロユキ

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行きたい場所へ

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フォスティヌが屋敷から出てきたのを馬車の所で待っていたメイドのソニアは目が腫れているのに気がついた。
「お嬢様?」
「帰るわよソニア、馬車を出して…」
「え?は、はい…」
馬車に乗ったフォスティヌは、玄関外にいるフランシスそして隣にはシャロンがいる姿を見て、フォスティヌはフランシスの屋敷を離れ自分の屋敷へと向かった。
馬車の中に入ってからのフォスティヌは何も話さず馬車で走る外を眺めていた。
メイドのソニアは、フォスティヌの目が泣いたあとのように見えフランシスと何かあったのだろうか?と気になっていた。
「……ソニア…」
「はい」
「私ね、兄様から結婚できないって…言われたの……」
「え?」
「兄様の部屋には、綺麗な女の人がいてその人と結婚するって兄様から言われたの…」
「ええ?」
「でも、その女の人は他に男の人と結婚を言われているんだって」
「え?は?」
「それで、私にその男の人と結婚してくれって兄様から言われたの……」
「え?え、は?…はあああ??」
「…私、兄様の婚約者でもないから…修道院に行こうかな……」
「はあ?ええ~~っ!?い、いけません!修道院だなんて……」
「私から兄様を取ったら何もないんだもの…私…兄様から…捨てられちゃったから……うっ、ううっ……」
「お…お嬢様…」
メイドのソニアはポロポロと涙を流すフォスティヌの手を握りしめ「お嬢様が行きたい場所はありますか?」とフォスティヌに声をかけた。
「……い、行きたい…場所?」
「お屋敷には後から帰りましょう、今からお嬢様の行きたい場所へ向かいましょう」
笑顔を見せるメイドのソニアにフォスティヌは頷き行きたい場所へと馬車を走らせた。
「いらっしゃい、いらっしゃい!」
「焼き上がったパンはいかがですか~!」
「美味しい焼き鳥だよ!」
フォスティヌはメイドのソニアと一緒に隣町に来ていた。
「お嬢様…ここは……」
「…うん、兄様と初めてデートした場所……」
「!?」
少し腫れた瞼で街中を見るフォスティヌは笑顔が見えていた。
「今日は女の子だけで楽しもう!」
「お嬢様…」
「ソニアと一緒に出店を見てまわりたかったの…」
「お嬢様…」
「行くわよ!」
「は、はい!」
フォスティヌはメイドのソニアの手を取り一緒に出店を見てまわっていた。
歩き疲れたフォスティヌとメイドのソニアは噴水広場のベンチに座っていた。
「このベンチに座って、もしかしたら兄様が戻ってくるかなと思って待っていたの…兄様は来なかったけどね」
「……お嬢様…」
フォスティヌは、あの日と変わらない風景とベンチに座る親子連れに恋人達の姿を見て隣にはメイドのソニアが座っていた。
 「……お嬢様、お腹が空きませんか?何か買って来ます」
「ん……ホットドッグが食べたい…」
「ホットドッグですか?分かりました。すぐ戻りますので…」
「うん…」
メイドのソニアはホットドッグを買いに出店に向かった。
一人残ったフォスティヌはフランシスの事を思い出さないようにしていたが…自分がいる目の前で、二人がキスをするのを見てフランシスのキスは全部この女の人からだったんだ…と、思うと悔しくて涙がまた溢れていた。
「……また…一人なのか?」
「え?」
フォスティヌは、目の前に聞き覚えのある声に顔を上げると騎士服を着たブラッドが目の前に立っていた。



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