婚約者の彼から彼女の替わりに嫁いでくれと言われた

クロユキ

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突然の婚約破棄②

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涙を我慢しているフォスティヌを見てフランシスは一瞬グラッと心が動いた。
「フラン……」
「!」
ハッとシャロンの声で我に返ったフランシスは、真っ青な顔で不安な表情を見せているシャロンの手を握りしめ笑顔を見せていた。
「……大丈夫だよ…フォスティヌは優しい子だから、僕達の事を分かってくれるよ……」
「……フラン…わたくし……」
寄り添い見つめ合うフランシスとシャロンを見ていたフォスティヌは膝に置いていた手をぎゅっと握りしめていた。
「……私は…兄様の……」
声にならないフォスティヌの姿を見てフランシスは打ち明けた。
「……彼女の名前は、シャロン・ルーベンス伯爵令嬢で僕と同期なんだ……」
「……兄様と同期……?」
「そして、僕とシャロンは……関係を持った恋人なんだ…」
「え……」
フォスティヌはフランシスとシャロンを見てクスッと笑った。
「兄様が冗談を言うなんて思わなかった…ふふふ」
「フォスティヌ?…冗談ではないんだ本当に僕達は……」
「だって、伯爵と子爵は身分が違うんでしょう?お付き合いをするのは大変だって聞いた事があるの」
「……」
「……」
フランシスは何も言えず爵位を言われたシャロンはフランシスと一緒になる事をあきらめかけていた。
「あ!私、兄様に食べて貰いたくてクッキーを焼いたの!形は酷いけど…美味しくできたのよ!初めてクッキーを焼いて兄様が美味しいと言ってくれたのが嬉しくて……」
「……フォ…」
ガサガサと隣に置いていた編み籠からクッキーの袋を取り出しピンクのリボンをほどき袋いっぱいに入っているクッキーを見せていた。
「……」
シャロンは純粋にフランシスを想うフォスティヌを見て静かに立ち上がった。
「シャロン?」
「……お父様の言う通り…彼の元へ行くわ……」
「な!?」
勢いよく立ち上がったフランシスはシャロンを抱きしめフォスティヌは「え?」と声に出しフランシスに驚いていた。
「フラン、放して…あなたの婚約者が見ているわ……」
「婚約者は君だよシャロン…」
「フラン……」
「……兄…様…?」
抱きしめるフランシスとシャロンは笑顔を向け口付けをした。
「愛しているよ…シャロン…」
「ええ…わたくしもよ、フラン……」
バシッ!
「きゃっ!?」
「な!?」
バラバラと粉々になったクッキーが、フランシスとシャロンの体にあたり、涙目で睨むように見るフォスティヌにフランシスは胸が刺さる痛みを感じフォスティヌは二人の前から消えて行った。
「……フォスティヌ…」
二人の足元にはばらまかれたクッキーの残骸が床に落ちていた。




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