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婚約者

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フォスティヌが十五歳になったある晴れた日だった。
その日は学校も休みでフォスティヌはまだベッドの中だった。
コンコンコン!
「お嬢様、お嬢様!お目覚めですか!?」
メイドのソニアが慌てたようにフォスティヌの部屋をノックしていた。
「…う~~ん…何?…今日…学校はお休みだから…」
モゾモゾと起きる気配がないフォスティヌにメイドのソニアが部屋に入り、声を上げていた。
「お嬢様!起きてください!フランシス様が来られています!」
パチッ!と目が覚めたフォスティヌは勢いよくベッドの上から起き上がった。
「ええ~っ!?兄様が来ているの?」
「はい!フランシス様のご両親もご一緒です!!」
「えっ!?えっ?どうしておじ様達も一緒なの?」
フォスティヌは、肩まである薄茶色の寝癖の髪の毛を手で触るとメイドのソニアに何故フランシスの両親が来ているのか聞いていた。
「詳しい事は分かりませんが、旦那様もお嬢様の身仕度が出来ましたら客室へ来るようにと言われていました」
「た、大変!ソニア早く!」
「はい」
メイドのソニアに身仕度を頼んだフォスティヌは、フランシスが屋敷に来ているだけでも嬉しく笑顔が止まらなかった。
「お嬢様、嬉しそうです」
「えっ!ふふっ、久しぶりに兄様とおじ様達が屋敷へ来てくれたんだもの…最近は、兄様も忙しそうで中々会えなかったの」
高学年になったフランシスは、学園でフォスティヌと会う機会が減り、忙しいフランシスの邪魔をしてはダメだとフォスティヌは学園で会うのを我慢していた。
「フランシス様のお年は何歳になるのですか?」
「私が今十五歳だから兄様は十八歳かしら」
身仕度を終えたフォスティヌは、パタパタと廊下を走り客室の近くまでたどり着くとその後ろから慌てたように後を追うメイドのソニアが声をかけていた。
「お、お嬢様お待ちください」
「もうっ、遅いわよソニア。置いて行くわよ」
「あ、歩いてください」
「わかっているわ」
客室の扉の前に着いたフォスティヌはドキドキと心臓が煩く深呼吸をしていた。
(どうしてこんなにドキドキするのか分からないけど、久しぶりに兄様に会えるんだわ)
コンコン!
「フォスティヌです」
「入りなさい」
「はい」
客室の中へ入ったフォスティヌは、ソファーに座る両親と向かい側に座るフランシスの両親そしてフランシスがソファーに一人座っていた。
(…み、みんなの視線が…)
「こ、こんにちは…おじ様、おば様…」
「ああ、こんにちは。大きくなったな」
「さぁ、さぁ、フランシスの隣に座って!」
「は、はい…」
挨拶を終えたフォスティヌは緊張した体でフランシスの隣へ座った。
「久しぶりだね、フォスティヌ」
「ええ…兄様…」
いつもと変わらない笑顔を見せるフランシスにフォスティヌは頬を染めていた。
「まだ、フランシスの事を『兄様』と呼んでいるのかい?」
「えっ、はい…初めてお会いした頃からずっと『兄様』と呼んでいたので…」
「では、今日から『兄』と呼ぶのを止めないとな」
「えっ?それは…」
フランシスの父親から『兄様』と呼ぶのは止めるようにと言われたフォスティヌは何故?と目を見開いて周りを見ていた。
「フォスティヌ、今日からお前はフランシス君の婚約者になったんだよ」
「……ぇ?」
フランシスと婚約者になった事を父親から言われたフォスティヌは、放心状態のようになり両家達の会話が何を話しているのか聞き取れずにいた。
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