兄たちが弟を可愛がりすぎです

ジル王子とメイドのマリア②

「貴女達早く来なさい」
「そうよ遅れたら先輩である私達が言われるのだから」
「は、はいすみません……」
「……あの…仕事道具を少し持って貰えないでしょうか？私達二人では……」
「何、貴女先輩の私達に指図するつもり？」
「い、いえ……」
「私達も貴女達と同じように掃除道具を持たされた事もあるのよ掃除道具は後輩になる貴女達が持っようになっているの分かった！？」
「「はい、分かりました……」」
ふふっとメイドの先輩である二人はお互い顔を見て声に出さないような笑みを見せていた。
この四人のメイド達もメイド長が自分の周りにいたメイドに声を掛け慌てて集めたメイド達に過ぎなかった。
「ねぇ、ねぇ、ジル様本当にお人柄が変わったのかしら？何人かのメイド達が言っていたけど」
「どうかしら直接お会いした事が無いし私はジル王子には興味無いわどちらかと言うとシェル様のメイド付きに成りたいわ」
「ええ～っ、そんな事言って後でジル様が良かった何て言わないでよ」
「ふふっ、そうねまず本人に会って決めるわ」
「ねえ、私達がジル様のメイド付きに成ったらどうする？」
「そうね、ジル様がどうしても私達にって言われたら考えても良いわ」
メイド二人がジル王子の話しで騒ぎその後ろを少し離れたメイド二人が掃除道具を持ち廊下を歩いていた。
「大丈夫？もう少し持ってあげるけど……」
「えっ、うん有り難う大丈夫よ…あっ、私の名前オレリア貴女は？」
「私は、カロル宜しくね」
「うん」
ニコッと微笑む新人だと思われる彼女達はお互いの掃除道具を交換でお互い助け合いジル王子の部屋へと向かっていた。
その頃、ジル王子の部屋へ呼ばれていたメイドのマリアはジル王子に紅茶を注いでいた。
（テーブルの側に紅茶の入ったポットにカップが目についた為ジル様に入れる事になったけど……）
ジル王子が一度椅子に腰をおろしたマリアに紅茶を頼みジル王子の紅茶を入れる事になった。
「ジル様どうぞお口に合いますか分かりませんが……」
「有り難う、椅子に腰掛けた後にまた立たせてしまい悪かった」
「いえ……」
メイドのマリアはジル王子の紅茶を飲む姿をじっと眺めていた。
（……いつも遠くでウィル様の御部屋を外から見ている姿を何度も見掛けた事はあった…もっと早くウィル様が生きています時に優しいお声を御掛けになってくれたら……ウィル様も御母上様にジル様の御話しが出来たのに……）
メイドのマリアは今は居ないウィル王子の事を思い出し膝に置いている手をギュッと握り締めていた。
「……君の事はマリアとそのまま呼んで良いかな？」
ハッ！とジル王子の声に戻されメイドのマリアは顔をジル王子に向け問いかけに答えていた。
「はい、ジル様にお任せ致します」
「そうか、ではマリアと呼ばせてもらおう」
「はい、ジル様」
「ところで、早速聞きたいのだが……」
「はい……」
メイドのマリアはジル王子が聞きたいのはウィル王子（春人）の事だと言われなくても分かってはいたが、改めて会話を始めるとメイドのマリアには珍しく緊張とドキドキと胸の鼓動が煩くまた膝の上に置いた手に力が入っていた。
「ウィルはいつも何を食べて居るんだ？」
「えっ？」
「あ、いや、昨日庭園で母が用意をした昼食を頂いた時肉料理を出したのだが、満面の笑顔で食べる姿を見て私があげた肉料理を全部食べたからな……」
「えっ？ジル様の肉料理をウィル様が食したのですか！？」
メイドのマリアは目を大きく見開き驚いていた。
（知りませんでしたわジル様とウィル様はもうそのような仲に成って居ましたのね……庭園では確かニック様も行かれましたとか…この事はニック様はご存知でしょうか？……それにこの事はシェル様に御話しはしない事にしませんと、後が面倒くさく…）
コホン！とメイドのマリアは心の声に咳をして、「ん？大丈夫か？」とジル王子が心配をしていた。
「何でも在りませんわジル様、ウィル様の御食事を御話し致しますわ」
四人のメイド達がジル王子の部屋にたどり着くまでそんなに時間は掛からなかった。