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それぞれの朝②

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「今日も一段と御美しいですわジャンヌ様」
「うふふ、大袈裟ね。有り難う」
二人の女性の話し声で、ゴソッとベッドの上で動き出した身体の大きな男が頭をガシガシと触り、上半身裸でベッドの上でぼんやりとしているカイザック王子が母親のジャンヌ妃の身仕度を見ていた。
「……母上」
「あら、もう目覚めたのカイ、ぐっすりと眠っていたものだから起こさなかったわ」
クスッと笑うジャンヌ妃にカイザック王子は部屋の窓を見て朝日が部屋の中を照し、もうすぐ朝食の時間になる頃だと分かった。
カイザック王子はベッドの端に身体を向け屈むように座り、ジャンヌ妃がメイドの一人にカイザック王子の身仕度を言い渡していた。
メイドは用意していた服を持ちベッドの上にまだ座っているカイザック王子の側へ寄り声を掛けていた。
「御早う御座いますカイ様、お着替えをお持ち致しました……」
「ああっ、有り難う」
真っ赤な顔でカイザック王子の側へ来た若いメイドは、着替えを任されたメイドでカイザック王子がジャンヌ妃の部屋で寝泊まりの時は、カイザック王子の世話を任されていた。
メイドはベッドの上で座るカイザック王子の側へ寄り座ったままでの着替えの手伝いとなる、身長が高いカイザック王子ではメイドが身仕度が出来ない為座りながらの着替えになる。
上半身裸で鍛え上げた身体付き王子達の中で一番良い身体をしている。
若いメイドは頬を赤く染めながらも白いシャツに腕を通し前開きを留める作業もメイドが行い、カイザック王子は黙ってメイドの身仕度を任せるだけで着替えの時はカイザック王子は大人しいようだ。
「終わりましたカイ様」
「ああっ、いつも有り難う」
「いえ……」
軽装に身仕度を終え若いメイドは洗い物の衣類を持ち部屋を後にした。
「ふふ、可愛いわね顔を真っ赤にしてカイの着替えを手伝う姿は何度見ても良いわね、あの子と付き合う気は無いかしら?」
ジャンヌ妃はわざとのように若いメイドを勧めていた。
「母上俺の気持ちを知ってわざと言っているのか?」
「さぁ、どうかしら、カイ朝の挨拶は?」
はあ……とため息を吐いたカイザック王子はジャンヌ妃の側へ寄り頬に朝の挨拶を交わしていた。
「朝食の時は大人しくして欲しいが……母上」
「それは王様次第かしら」
「……ウィルの部屋に行ってくる」
「もうすぐ朝食の時間よ」
「……先に兄達に挨拶をして朝食の後ウィルの部屋に行く」
「それが良いわ、ウフフまた後でね、カイ」
「……」
カイザック王子はジャンヌ妃の部屋を出るとボソッと廊下で呟いた。
「一夫多妻も大変だな……」
一言呟いたカイザック王子は兄達の部屋へと向かった。

その頃メイドのマリアとレオン騎士は一緒に王子達の部屋へ続く廊下を歩いていた。
「……先にウィル様の部屋へ向かえば良かったかしら……」
突然メイドのマリアがジル王子の部屋では無くウィル王子の部屋へ向かう事を気になり出していた。
「何か気になる事でもあるのですか?」
「……ウィル様の仕度の事で説明はしましたが、他の事が気になると教えた事を忘れる癖があるようで」
「それは……心配ですね……」
「それにコリンがこのまま自分の持ち場へ戻ってくれたら良いのですが……」
「コリンさんもメイド長からの指示でマリアさんが来るまでと言われていますから気にする事は無いと思います」
「そう願いたいですわ~」
メイドのマリアとレオン騎士が会話をしている中前を歩く騎士二人の話し声が聞こえていた。
「今日、シェル様はウィル王子の護衛決めと言っていたなエリック」
「はい、そのように伺いました」
メイドのマリア達の前を歩いている騎士二人はシェル王子の護衛騎士でディオン騎士とシモン騎士との護衛交替の為シェル王子の部屋へ向かっていた。
「シェル様も仕事熱心なのは良いが、御自分の将来の事を考えて貰いたいものだ、御令嬢方との会話の場を作り良い方を見付けて貰いたいものだがシェル様は興味が無いと言われどれ程私が落ち込んだ事か……シェル様も何をお考えなのか」
「……」
エリック騎士はシェル王子が令嬢方に興味が無いのは、ウィル王子の事で頭がいっぱいだと言える訳がなく、ロベール騎士の小言をひたすら聞いていた。
ロベール騎士の声が大きいため話しの内容まで聞こえたメイドのマリアとレオン騎士は、この騎士はシェル王子に早く良い女性を見付ける事を願っているようだと聞き、レオン騎士はメイドのマリアに声を掛けていた。
「マリアさん、私達の前に歩いています騎士はシェル団長の護衛の騎士ですか?」
「多分そうだと思いますわ、シェル様は余り御自分の騎士をお連れする事は在りませんので、噂では「影の騎士」と言われていると聞いた事があります…私もシェル様の騎士の方を見ましたのは初めてですわ~」
「影の騎士ですか……私も初めて聞きました」
シェル王子の部屋に近付くと二人の騎士がシェル王子の部屋の前で護衛をしていた。
「あっ、御早うっす!ロベールさんエリックさん交替っすか」
「御早う御座いますロベールさんにエリックお疲れ様です」
「御早う御座います……」
「ああっ、御早うディオンにシモン何も変わりは無かったか?」
「はい、何も無かったっす平和っすよ」
シェル王子の護衛騎士が四人集まる姿は普通の護衛騎士達とは比べものに成らないほど存在感が凄く感じた。
レオン騎士はシェル王子の部屋の前にいる騎士四人に威圧感を感じ歩く足を止めてしまった。
「レオン様?」
「え、あ……あの騎士達の側に行かなくては成らないと思うと足が動かなくなって……はは、騎士としてまだまだですね」
「……そうですの?」
メイドのマリアはレオン騎士の側で動かず、そしてシェル王子の護衛騎士が会話をするのが聞こえていた
「シェル様はまだ御部屋の中にいるのか?」
「はい、先ほどウィル王子の護衛騎士が来ていたようです」
「ウィル王子の護衛騎士が?何か用事があったのか?」
「さぁ、知らないっすけど」
「……はあ…ウィル王子の騎士は要らないのでは無いのか?これ以上ウィル王子の事で時間を潰されては困る」
「それもそうっすね、でも専属護衛に成りたい騎士は結構いるっすよ」
「そう言う騎士は楽して金を貰う騎士が多いだろう、今のウィル王子の護衛騎士もどうだか……巡回に回された騎士も何をしたのか、ウィル王子はシェル様の足を引っ張る存在にしかない」
「……ロベールさんそれ以上話さない方がいいと思います、ウィル王子はシェル様の重要な御方になる方です」
今まで会話に加わる事が無かったエリック騎士が、ロベール騎士に阻止を出し遠回りにウィル王子の存在感を話した。
「エリックそれはどう言う事だ?」
「そう言う事です」
「は?」
ロベール騎士はエリック騎士が言った意味が分からずディオン騎士もシモン騎士もお互い首を傾げるだけだった。
「失礼します、シェル団長の部屋の前を退いてくれますか?」
「「「「!?」」」」
シェル王子の護衛騎士に声を掛けていたのは、今まで会話を聞いていたレオン騎士が四人の騎士の前に立っていた。













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