上 下
264 / 484

王様と妃達⑧

しおりを挟む
エリーゼ妃のただならぬ声が聞こえ、慌てて部屋の中に入ったエリーゼ付きの護衛騎士二人は、何故王様とメイドの一人が床に座り、エリーゼ妃から説教を受けて居るのか分からず近くにいる王様の近衛騎士に経緯を尋ねていた。
「……一体何が合ったのですか?」
「……王様の悪い癖が出たのだ、わたくしとエリーゼ様が席を外している時に一人だけ起きていたメイドに口付けをされていたのだ!」
「なっ!?」
「はあ?!」
騎士二人は思わず声を出し慌てて手を口に当てた。
「その場面を運悪くエリーゼ様に見られこの状態だ……」
「馬鹿……ゴホン、すみません…王様は何をお考えなんだ?エリーゼ様の御部屋でそれもエリーゼ様のメイド付きと……」
「全くだ、せっかくエリーゼ様が王様に心を御許しして居ました時に…何て事を……この事は王妃様ジャンヌ様のお耳に入るのは時間の問題です。」
「……」
この事は近衛騎士皆にも伝えなくてはいけないのかと近衛騎士の一人は肩を落としそして息子であるジル王子にも伝えるのかと思うと見たくもない表情のジル王子の顔を思い出していた。
「メイドの貴女に尋ねるけど、わたくしのメイド付きに希望しましたのは王様に近付く為ですの?それともいずれ王様がわたくしの部屋に来られました事を狙い一年もの間わたくしの元へ来られない王様が今夜のように突然の訪問でわたくしでは無く王様が貴女の元へ来るように色仕掛けでもしたのかしら?」
「ち、違いますエリーゼ様わたくしは王様に色仕掛け等致しておりません、わたくしは王様に近付く為にエリーゼ様のメイドに成ったのではありませんエリーゼ様をお慕いメイド付きを希望致しました。決してエリーゼ様を裏切る事等……」
「では王様から何故逃げようとはしなかったのですか?幾らでも拒めたはずでは?わたくしの元へ駆け寄る事も出来たでしょう…そこに眠っていますメイド達を起こす事も出来たのでは?」
「……それは…」
「エリーゼ彼女は悪くは無い……私がした事なのだ…」
「あら、王様お優しいのですね、口付けをしましてわたくしのメイドに惚れましたのかしら?」
「いや……その……」
「庭園の褒美として口付けをしたと言っておりましたがその理由をお聞かせ下さい王様、何故褒美で口付けなのですか?」
「……」
王様は身体が熱くなり顔から汗が流れ落ち今まで見たことも無いエリーゼ妃の怒りが身体に伝わり、口付けの場面を見られただけでこんなに怒るとは思わず、一年もの間部屋に通わない事でエリーゼ妃のパンドラの箱を開けてしまったのだと王様は今頃悔やみ後悔していた。
「答えられないのですか?王様」
「……始めは口付けをするつもりではなかったのだ、彼女を見ているとロラ嬢を思い出しつい彼女に口付けを……」
「……つ!?」
メイドは王様の思いがけない言葉で声を失いその場で泣き崩れてしまった。
メイドの泣き声で今まで眠っていたメイド達が起き出しキョロキョロと周りを見渡していた。
「な、何?何があったの?」
「えっ?何であの子王様と一緒に床に座り泣いているの?」
「……エ…エリーゼ様のお顔が……」
「私達が眠っている間何があったの?」
近衛騎士と護衛騎士二人は王様が側室のロラ嬢を思い出しメイドに口付けをしたと聞き王様に呆れ顔を見せ泣いているメイドが気の毒に思え王様は口に出してはいけない事を口に出していた。
「……」
エリーゼ妃は正座のまま泣き崩れるメイドと下を向き申し訳無いと言った表情を見せていた王様を見て眠りから目が覚めたメイド達に声を掛けていた。
「誰かこの子を椅子に座らせて飲み物を渡してあげて、それと器に水を入れて持って来てくれる?」
「「「「は、はい」」」」
メイド達は王様の隣で座り泣き崩れるメイドを支え自分達が座っていた長椅子に座らせて飲み物を渡していた。
一人のメイドは顔を洗うくらいの容器に水を入れテーブルの上に置いた。
王様は時々顔を上げエリーゼ妃の様子を伺っていた。
「……エリーゼ……私はいつまでここに座って居れば良いのだ?そろそろ足が痺れて……」
「もう少しの辛抱ですわ王様、わたくしに御話しをして下さいました褒美を差し上げますわ」
「褒美?」
エリーゼ妃はメイドが用意をした器を取り出し王様の前に立ち王様の頭の上から水が入った器をひっくり返し器の水が王様の頭に
「ザバ~~ッ!」と頭から水を被った王様はずぶ濡れになった。
「ぶふっぷ…うわ~っぷ……!?」
「「「「きやーっ!?」」」」
「うあっ!?」
「ええーっ!?」
「ええっ!?」
色んな叫び声が聞こえ王様は、正座をしたまま頭から足先までずぶ濡れになりエリーゼ妃は王様のずぶ濡れた姿を見て「フフフフ」と笑い、王様は放心状態のまま身体が固まり何が起こったのか分からず、水で視界が分からない時に顔を上げ不敵な笑みで笑うエリーゼ妃が妃達の中で一番恐い女性だと思い知らされた。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【第1部完結】悪役令息ですが、家族のため精一杯生きているので邪魔しないでください~僕の執事は僕にだけイケすぎたオジイです~

ちくわぱん
BL
【11/28第1部完結・12/8幕間完結】(第2部開始は年明け後の予定です)ハルトライアは前世を思い出した。自分が物語の当て馬兼悪役で、王子と婚約するがのちに魔王になって結局王子と物語の主役に殺される未来を。死にたくないから婚約を回避しようと王子から逃げようとするが、なぜか好かれてしまう。とにかく悪役にならぬように魔法も武術も頑張って、自分のそばにいてくれる執事とメイドを守るんだ!と奮闘する日々。そんな毎日の中、困難は色々振ってくる。やはり当て馬として死ぬしかないのかと苦しみながらも少しずつ味方を増やし成長していくハルトライア。そして執事のカシルもまた、ハルトライアを守ろうと陰ながら行動する。そんな二人の努力と愛の記録。両片思い。じれじれ展開ですが、ハピエン。

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子 ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ そんな主人公が、BLゲームの世界で モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを 楽しみにしていた。 だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない…… そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし BL要素は、軽めです。

兄たちが弟を可愛がりすぎです~番外編春人が夢で見た二十年後の王子と護衛騎士~

クロユキ
BL
ベルスタ王国第五王子ウィル・テラ・セルディ・ベルスタ二十年前に亡くなるが、異世界から坂田春人高校二年がウィル王子の身体の中に入りそのままベルスタ王国の王子として生活をする事になる。城内では兄王子に護衛騎士など毎日春人に付きまとう日々…そして今のベルスタ王国の王が代わり、春人ことウィル王子が王様になったお話。 春人の夢の中での話で、ウィル王が兄王子達に護衛騎士に相変わらず振り回されます。 現在更新中の兄弟とはまた別の話になりますが、番外編だけでも読めるお話しになると思います

自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?

トール
BL
一般家庭に生まれ、ごく普通の人生を歩んで16年。凡庸な容姿に特出した才もない平凡な少年ディークは、その容姿に負けない平凡な毎日を送っている。と思っていたのに、周りから見れば全然平凡じゃなかった!? 実はこの世界の創造主(神王)を母に持ち、騎士団の師団長(鬼神)を父に持つ尊い血筋!? 両親の素性を知らされていない世間知らずな少年が巻き起こすドタバタBLコメディー。 ※「異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ」の主人公の息子の話になります。 こちらを読んでいなくても楽しめるように作っておりますが、親の話に興味がある方はぜひズボラライフも読んでいただければ、より楽しめる作品です。

俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。 しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。 それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。 だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。 流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…? エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか? そして、キースの本当の気持ちは? 分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです! ※R指定は保険です。

異世界転生して病んじゃったコの話

るて
BL
突然ですが、僕、異世界転生しちゃったみたいです。 これからどうしよう… あれ、僕嫌われてる…? あ、れ…? もう、わかんないや。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 異世界転生して、病んじゃったコの話 嫌われ→総愛され 性癖バンバン入れるので、ごちゃごちゃするかも…

やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた
BL
異世界転生したからハーレムだ!と、思ったら男のハーレムが出来上がるBLです。主人公総受ですがエロなしのギャグ寄りです。 短編用に登場人物紹介を追加します。 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ あらすじ 前世を思い出した第5王子のイルレイン(通称イル)はある日、謎の呪いで倒れてしまう。 20歳までに死ぬと言われたイルは禁呪に手を出し、呪いを解く素材を集めるため、セイと名乗り冒険者になる。 そして気がつけば、最強の冒険者の一人になっていた。 普段は病弱ながらも執事(スライム)に甘やかされ、冒険者として仲間達に甘やかされ、たまに兄達にも甘やかされる。 そして思ったハーレムとは違うハーレムを作りつつも、最強冒険者なのにいつも抱っこされてしまうイルは、自分の呪いを解くことが出来るのか?? ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ お相手は人外(人型スライム)、冒険者(鍛冶屋)、錬金術師、兄王子達など。なにより皆、過保護です。 前半はギャグ多め、後半は恋愛思考が始まりラストはシリアスになります。 文章能力が低いので読みにくかったらすみません。 ※一瞬でもhotランキング10位まで行けたのは皆様のおかげでございます。お気に入り1000嬉しいです。ありがとうございました! 本編は完結しましたが、暫く不定期ですがオマケを更新します!

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

処理中です...