兄たちが弟を可愛がりすぎです

上司が居ない寂しさの余り…

アーサー騎士がウィル王子の部屋を出て、今夜からウィル王子の護衛をする事に成った見習い騎士のジョン騎士とダリル騎士は廊下で別れたアーサー騎士の後ろ姿を見えなくなるまで二人とも見ていた。
「……」
「……」
珍しく二人とも黙ったままアーサー騎士が通った廊下を見て二人とも声を出していた。
「……アーちゃん見えなく成ったな……」
「ああっ、行ってしまったな……」
し～ん、としてさっきまでアーサー騎士とふざけていた二人が急に大人しく成っていた。
「アーちゃん…また来るかな……俺達の様子見に来るかな…」
「来るんじゃないかな…俺達って騒がしいからさ、心配に成って顔見せるかもね…」
「……」
「……」
ジョン騎士とダリル騎士はお互いの配置に着き少し話しをした後黙って立ち仕事をしていた。
ガチャ！っと扉が開き騎士二人はビクッと体が跳ね中からメイドのマリアが食事が終わった食器をワゴンの上に置きガラガラと押して騎士二人に挨拶を交わしていた。
「お疲れ様です、今夜の護衛宜しく御願いします。」
「あ…はい」
「分かりました…」
「……」
マリアはジョン騎士とダリル騎士を暫く見た後ガラガラ…とワゴンを引きウィル王子の部屋を後にした。
「……なぁ、俺達の顔に何か付いてんのかな？メイドが暫く俺達の顔を見てたけど……」
「パンくずが顔に付いてるかも……」
「アハハ、そうかも……」
ジョン騎士とダリル騎士はいつものふざけた調子が出ず仕事をしていた。
「……なぁ、アーちゃんが居ないと詰まんないな……」
「そうだな…アーちゃん戻って来ないかな……」
ぼ～っ、と二人ともしていた時だったコッコッ…と足音が聞こえジョン騎士とダリル騎士は足音のする方へ同時に顔を向けた。
「「アーちゃん！？」」
「えっ？」
「「！！？」」
ジョン騎士とダリル騎士はお互い身体が固まり血の気が引きアーサー騎士と思い声を掛けたのがシェル騎士団長だった。
「「シ…シェル騎士団長！」」
バッ！っと二人とも慌ててシェル団長に向けて頭を下げ真っ青な顔に成っていた。
「……お疲れ様です御二人とも…今夜があなた方御二人が護衛をする事に成ったのですね」
「はい、申し遅れました……見習い騎士のジョン・ヒルトンと申します」
「同じく見習い騎士のダリル・ニーズと申します」
二人は頭を下げ気まずい感じでシェル団長の様子を見ていた。
まさかシェル団長が側に来ているとは思わずアーサー騎士だとばかり思って居たため思わずいつもの呼び名で言ってしまった二人……。
「……ところで御二人に御聞きしたいのですが、先ほど私を誰かと間違えたようですが…「アーちゃん」さんとは誰の事でしょうか？」
ドキーッ！っと二人は心臓バクバクさせ変な見えない汗が出てくる感じがして、二人は身体が固まり何も言えずにいた。
上司であるアーサー騎士に自分達と同等に接していた為「見習い騎士団の上司です」とは言えずにいた。
「……すみません指名をしていませんでしたねジョン騎士お応えしても良いですか？」
「えっ！……あ…はい、その……「アーちゃん」と言いましたのはわたくし達の同僚の名前で御座います……」
ジョン騎士は上司の名前を出すわけにはいかず思わず同僚と言ってしまい、それを隣で聞いていたダリル騎士は驚いた顔をしていたがジョン騎士が言った事になんとなく分かった気がしていた。
「騎士仲間の名前ですか……どうして騎士の名前を出したのですか？ダリル騎士」
「えっ！？」
まさか自分に話して来るとは思わずダリル騎士は（何を言えば良いんだ？アーちゃんは俺達と一緒…アーちゃんは俺達と一緒…）
ダリル騎士は心の中でまるで呪文を唱えるように考えていた。
「あ……あの、わたくし達と「アーちゃん」と言います騎士はいつもわたくし達の側におりましたので…今回の護衛は二人までと言われておりました……その騎士の御話しをしていました所シェル騎士団長とわたくし達騎士仲間を間違い、声を出してしまったのです……」
ダリル騎士は（もしかして俺って話しを作る天才かも）と自分で褒めていた。
「……そうですか、ですが今は護衛の仕事をしているのです。私語は控えてください、分かりましたか？ジョン騎士、ダリル騎士」
「「はっ！以後気を付けますシェル騎士団長」」
ビシッ、と敬礼をした二人の心の中はアーサー騎士に詫びていた
（（ごめんアーちゃん、上司とは思って居ない今の俺達を許して））
騎士二人はシェル団長の問いかけに応える事が出来た事に胸を撫で下ろしていた。