159 / 190
月明かりの夜④
しおりを挟む
『妻のソフィアと別れるには俺達の間に子を授かる事だ』
アレックはエミリーに話した事を思い出した…夫婦として会話がなかったがソフィアには感謝はあった。別れる事は考えてはいなかったが、エミリーの側にいると声に出してしまっていた。
「……」
「……」
ソフィアは窓をじっと見たまま何も話さず、アレックはエミリーとの会話を聞かれていたとは知らず何も言えずにいた。
ソフィアは、十六年前の事だから昔の事を言われたらアレックも戸惑うのは分かっている…自分が生きていたら離婚をした時、今までの事を夫だったアレックに話せていたかもしれない 、エミリーにも話せていたかもしれない…でも、それは生きていた頃の話で…死んで生まれ変わって当時夫だったアレックと再会して昔の事を言われても戸惑うのは分かってはいた…
「…ごめんなさい…」
「え…」
「昔の話をされたら旦那様が戸惑うのは分かっているのに…」
「…君が謝る事はない…俺が君にしてきた事なんだ…今でも君を苦しめていると分かった時胸が押し潰されそうだった…」
アレックは離れていたソフィアの隣に立ち、身分や姿が替わってしまった元妻の手を掴み指の甲にキスをした。
「ええっ!?」
ソフィアの驚いた顔と真っ赤になる姿を見てアレックは笑みを見せていた。
(貴族の男性は皆手にキスをするのが習慣なの?)
「…眠たくはないのか?」
「私は一度目が覚めると眠れないんです…だから、学園に行く事ができないの…」
「学園!?…じゃあ、今は…」
「家庭教師に勉強を習っています」
「……君は勉強をしなくても…家庭教師が君から習っているような気がするが…」
「ふふっ、たまに私が先生に違う答えを直す事もありますけど…」
ソフィアの笑みを見てアレックは一緒に仕事をしていた日々を思い出していた。
「俺は君と一緒に仕事をしてどれだけ助かった事か…君がいなくなって思い知ったんだ…君に頼りすぎていた事も…」
「…私は、旦那様と一緒に仕事ができた事が嬉しかったんです…会話が無くても私を頼ってくれるのが嬉しかった…」
「……ソフィア…」
ソフィアはアレックから名前を言われ驚いた顔で見上げていた。
「…私の事はいつもの『君』で呼んで貰えないですか?」
「…これから、そういうわけにはいかないだろう…」
「それもそうですが…」
「……君の名前を呼ばないと俺の側から離れてしまいそうで…」
「え?」
「…まだ、大丈夫か?」
「あ…はい…」
「君に見せたい物があるんだ…それを見たら君は嫌な事を思い出すかもしれないが…」
「沢山思い出していますから、何を見ても大丈夫です」
「……わかった…俺と一緒に来てくれ」
アレックはソフィアの手を繋いだままそのまま奥の廊下へと歩いて行った。
アレックはエミリーに話した事を思い出した…夫婦として会話がなかったがソフィアには感謝はあった。別れる事は考えてはいなかったが、エミリーの側にいると声に出してしまっていた。
「……」
「……」
ソフィアは窓をじっと見たまま何も話さず、アレックはエミリーとの会話を聞かれていたとは知らず何も言えずにいた。
ソフィアは、十六年前の事だから昔の事を言われたらアレックも戸惑うのは分かっている…自分が生きていたら離婚をした時、今までの事を夫だったアレックに話せていたかもしれない 、エミリーにも話せていたかもしれない…でも、それは生きていた頃の話で…死んで生まれ変わって当時夫だったアレックと再会して昔の事を言われても戸惑うのは分かってはいた…
「…ごめんなさい…」
「え…」
「昔の話をされたら旦那様が戸惑うのは分かっているのに…」
「…君が謝る事はない…俺が君にしてきた事なんだ…今でも君を苦しめていると分かった時胸が押し潰されそうだった…」
アレックは離れていたソフィアの隣に立ち、身分や姿が替わってしまった元妻の手を掴み指の甲にキスをした。
「ええっ!?」
ソフィアの驚いた顔と真っ赤になる姿を見てアレックは笑みを見せていた。
(貴族の男性は皆手にキスをするのが習慣なの?)
「…眠たくはないのか?」
「私は一度目が覚めると眠れないんです…だから、学園に行く事ができないの…」
「学園!?…じゃあ、今は…」
「家庭教師に勉強を習っています」
「……君は勉強をしなくても…家庭教師が君から習っているような気がするが…」
「ふふっ、たまに私が先生に違う答えを直す事もありますけど…」
ソフィアの笑みを見てアレックは一緒に仕事をしていた日々を思い出していた。
「俺は君と一緒に仕事をしてどれだけ助かった事か…君がいなくなって思い知ったんだ…君に頼りすぎていた事も…」
「…私は、旦那様と一緒に仕事ができた事が嬉しかったんです…会話が無くても私を頼ってくれるのが嬉しかった…」
「……ソフィア…」
ソフィアはアレックから名前を言われ驚いた顔で見上げていた。
「…私の事はいつもの『君』で呼んで貰えないですか?」
「…これから、そういうわけにはいかないだろう…」
「それもそうですが…」
「……君の名前を呼ばないと俺の側から離れてしまいそうで…」
「え?」
「…まだ、大丈夫か?」
「あ…はい…」
「君に見せたい物があるんだ…それを見たら君は嫌な事を思い出すかもしれないが…」
「沢山思い出していますから、何を見ても大丈夫です」
「……わかった…俺と一緒に来てくれ」
アレックはソフィアの手を繋いだままそのまま奥の廊下へと歩いて行った。
2,303
お気に入りに追加
7,938
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。
ゼラニウムの花束をあなたに
ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました

【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。
MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。
記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。
旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。
屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。
旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。
記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ?
それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…?
小説家になろう様に掲載済みです。

【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています
高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。
そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。
最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。
何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。
優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる