捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

クロユキ

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戸惑い⑦

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「だ…ア、アレック様?何をしているのですか?」
「…君が気がすむまで殴っても構わない…パルリス家の全財産を君に渡してもいい…城に幽閉されても構わない…俺は…償いきれないほど君を苦しめてきた…」
「……」
床に頭を擦り付けて何度も謝罪を声に出すアレックをソフィアは見下ろして見ていた。
「……何度も貴方から謝ってもソフィア・ルモアは帰って来ません…」
「!!」
アレックは床に着けていた頭を上げ涙を流す皇女ソフィアを見上げた。
「ソ…」
「ソフィア・ルモアが生きている時に言って欲しかった…」
ソフィアは隠す事は出来ないと思い、アレックに今までのソフィア・ルモアがどんな思いで一年間一緒にいたのか…夫だったアレックに話をした。
「…私は、ソフィア・ルモアの生まれ変わりで皇女ソフィアとして生を受けました…自ら命を経ったのに皇女として生まれたのです…」
「……」
「生まれた時からソフィアの記憶は残ったままでした…旦那様が城へ陛下に呼ばれて会った時は驚きました…私は第二の人生と思い貴方とエミリーから離れたかった」
「…っ…」
「でも、皮肉にもソフィアとして生きて来た記憶が強く、走馬灯のように何度も貴方とエミリーの過ごした日々を思い出して私を苦しめたわ…」
「……すまない…すまない…ソフィア…」
「…名前も呼んでくれなかった…死ぬ間際に名前を呼んでくれるなんて…私は旦那様にとってどんな存在でしたか?」
「あ…」
アレックは当時ソフィアを仕事のパートナーと見て妻として見ていなかった。
「…分かっていました旦那様が私の事をどう思っていたのか…それでも私は旦那様を待ちました…」
まだ床に臥せる姿を見せるアレックを見てソフィアは窓へと歩き暗くなった外を眺めていた。
「……エミリーに婚約者がいると聞きましたが本当ですか?」
「…君のご両親から聞いたんだ…」
「両親から…お父様とお母様は?今も元気ですか?!」
ソフィアは両親の安否が気になりアレックに顔を向けた。
「……五年前に君の父上は亡くなり、母上も去年亡くなった…」
「え ……亡く…え…」
ガクッと力が抜けたソフィアは床に膝を着き真っ青な顔になっていた。
アレックは床に膝を着き震えるソフィアの側に来て体を支えた。
「…お父様…お母様…う…ううっ…」
「…ソフィア…」
アレックは、姿も声も何もかも変わってしまった妻だったソフィアを抱き締め、今の自分は側にいて宥める事しかできなかった。







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