捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

戸惑い⑤

「皆さん、お口に合いましたか？」
「どれも素晴らしい料理でした。得にパイ料理には驚き美味しく頂きました」
アルフォンス皇子が料理に満足して笑みを見せていた。
「皇女様、お料理はいかがでしたか？」
「あ…どれも美味しく頂きました…」
「それは良かったです。」
笑顔を見せるアレックにソフィアは戸惑うばかりだった…
「騎士の彼は…」
「わたくしまでもお世話になり有り難う御座います…」
「はは、満足して頂いたようで良かった…今夜は楽しい晩餐だったよ」
「僕達の方こそ、突然お店に伺い屋敷へ招待していただいて有り難う御座いました」
「今夜はゆっくりと過ごしてくれ」
「有り難う御座います」
「私は先に失礼するよ」
アレックは先に席を立ち部屋を後にした。
ソフィアはホッと息を吐き食後の紅茶を飲んでいた。
（…旦那様が『時間を…』と話していたけれど今、旦那様と一緒にいるのはなんだか怖いわ…さっきのパイ料理で何か分かった顔をしていたような…）
「ソフィ－」
「え、何？アルお兄様…」
「メイドのナディアさん？かな、屋敷内を案内してくれるみたいなんだ入浴時間まで一緒に見て回らないか？」
「…屋敷内…うん、分かったわ」
屋敷の中を見て回る事になったソフィアは昔と変わらない部屋を見て回った。
「こちらのお部屋は図書室として本を纏めています」
（図書室？以前はなかったはず…それにこの部屋は空き部屋を私の仕事部屋にした部屋だった）
部屋の中には本棚が立ち並び沢山の本が並んでいた。
「凄い本の数だ…」
「店内をご存じだと思いますが、お店に並ぶ事が出来ない本はこちらに保管しております。月に数回、屋敷にあります本と店にあります本の入れかえもしております」
「…こちらで本を読んでも良いのですか？」
「はい、旦那様のお許しをいただいておりますので、ご自由にお読みになっても構いません」
ソフィア達三人は沢山ある本を見て回りソフィアはある本に目を向けた。
「あ！れん…」
パッと手を口に押さえ声に出しそうになり慌てた。
（私が読んでいた恋愛本があったわ…まだ続いていたの？でも、何処まで読んだのか…見てみないと…）
コンコン！
「失礼します。入浴のご準備が出来ました」
「有り難う…アルフォンス様、アルフレッド様入浴場にご案内いたします」
「ああ、有り難う…ソフィ－、僕達は先に入浴に行くけど…」
「私は、ここで本を読んでいるから…」
「ははは、ソフィ－の本の虫が始まったな」
アルフォンス皇子と護衛騎士のアルフレッドは、先に入浴へと向かい、本の部屋ではソフィア一人となった。
シーンと部屋の中は静かになり、カチャと静かに扉が開いたのも気づかないソフィアは本棚から動こうともしなかった。