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戸惑い④
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食卓で出された料理は、十六年前ソフィアがアレックの元へ嫁ぎ初めてアレックに実家の家庭料理を食べて貰いたくて作ったパイの料理だった。
「アレック兄さんの奥さんが好きだった料理ですか?」
「君達に食べて欲しいと思って…妻が残したレシピのノートを見て料理人達に作って貰ったんだ…」
(レシピのノート…まだ、厨房に残っていたの?料理長が私の料理を残したいからと頼まれてノートに書いたのを覚えている…でもあれ以来、パイの料理は作る事はなかった…旦那様から料理は作っては駄目だと言われたから…)
「……」
サクッとパイの音が聞こえアルフォンス皇子がパイ料理を食べて笑みを見せていた。
「美味しいです!中は…肉に野菜が混ざってワイン?でしょうか…こんな料理があるとは知りませんでした」
「…妻が一度だけ作ってくれた料理なんです」
「奥さん料理も作るんですね…」
「はい…今は妻が残した料理のレシピでたまにですが作って貰っています」
話し終えたアレックはチラッと皇女ソフィアに目を向けた。
パイ料理には手をつけず、じっと見ている姿が胸に刺さるような痛みを感じていた。
「……」
(もし、彼女がソフィアなら何故この料理を出したんだと思うかもしれない…私は彼女に酷い事を言ってパイの料理を作る事を禁じ彼女から料理を奪ってしまった…彼女が、妻が作ったパイ料理は美味しかったのに私は、エミリーがパイ料理が嫌いだと聞き妻がまたエミリーを叱るかもしれないと思い庇うように言った…
私がエミリーを甘やかしていたのは知っていた…)
サクッとパイを切る音がして今まで黙っていたソフィアが、パイ料理を食べる姿を見てホッと息を吐いた。
「…皇女様、お味の方は…」
「美味しいです…ただ…」
「え?」
「いえ、なんでもありません…」
「なんでも話してください、料理の事で気になります事があれば料理人も助かると思います…」
ソフィアは迷いながらアレックに話をした。
「…ワインが合わないような気がして…」
「ワインですか?」
「はい…美味しいのですが…ワインがきつすぎているような気がして…」
(ワインを変えたのかしら…私が使っていたワインは料理用の軽めの味だったはず…今日のパイ料理はワインの味が強いような…)
「有り難う御座います。料理人に伝えておきます」
「あ、でも…私が子供ですからそんな味がしたのでは……」
笑顔を見せるアレックを見たソフィアはビクッと体が固まった。
(…まさか、ワインはわざと…!?)
「僕はワインの味が強いとは思わなかったよ?ソフィ-は食べ物に煩いから、ソフィ-、どうしたんだい?手が止まっているよ」
「え!?あ…うん…」
(気のせいよ…私の考えすぎだわ)
久しぶりの賑わう食卓にアレックは気分が良かった。
「アレック兄さんの奥さんが好きだった料理ですか?」
「君達に食べて欲しいと思って…妻が残したレシピのノートを見て料理人達に作って貰ったんだ…」
(レシピのノート…まだ、厨房に残っていたの?料理長が私の料理を残したいからと頼まれてノートに書いたのを覚えている…でもあれ以来、パイの料理は作る事はなかった…旦那様から料理は作っては駄目だと言われたから…)
「……」
サクッとパイの音が聞こえアルフォンス皇子がパイ料理を食べて笑みを見せていた。
「美味しいです!中は…肉に野菜が混ざってワイン?でしょうか…こんな料理があるとは知りませんでした」
「…妻が一度だけ作ってくれた料理なんです」
「奥さん料理も作るんですね…」
「はい…今は妻が残した料理のレシピでたまにですが作って貰っています」
話し終えたアレックはチラッと皇女ソフィアに目を向けた。
パイ料理には手をつけず、じっと見ている姿が胸に刺さるような痛みを感じていた。
「……」
(もし、彼女がソフィアなら何故この料理を出したんだと思うかもしれない…私は彼女に酷い事を言ってパイの料理を作る事を禁じ彼女から料理を奪ってしまった…彼女が、妻が作ったパイ料理は美味しかったのに私は、エミリーがパイ料理が嫌いだと聞き妻がまたエミリーを叱るかもしれないと思い庇うように言った…
私がエミリーを甘やかしていたのは知っていた…)
サクッとパイを切る音がして今まで黙っていたソフィアが、パイ料理を食べる姿を見てホッと息を吐いた。
「…皇女様、お味の方は…」
「美味しいです…ただ…」
「え?」
「いえ、なんでもありません…」
「なんでも話してください、料理の事で気になります事があれば料理人も助かると思います…」
ソフィアは迷いながらアレックに話をした。
「…ワインが合わないような気がして…」
「ワインですか?」
「はい…美味しいのですが…ワインがきつすぎているような気がして…」
(ワインを変えたのかしら…私が使っていたワインは料理用の軽めの味だったはず…今日のパイ料理はワインの味が強いような…)
「有り難う御座います。料理人に伝えておきます」
「あ、でも…私が子供ですからそんな味がしたのでは……」
笑顔を見せるアレックを見たソフィアはビクッと体が固まった。
(…まさか、ワインはわざと…!?)
「僕はワインの味が強いとは思わなかったよ?ソフィ-は食べ物に煩いから、ソフィ-、どうしたんだい?手が止まっているよ」
「え!?あ…うん…」
(気のせいよ…私の考えすぎだわ)
久しぶりの賑わう食卓にアレックは気分が良かった。
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